紅葉の痣 8
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なるほどネ。 水雲の里が引き受けた依頼は二つあったのか。 顔が変わっても一緒でショ。
皮膚移植がどうとか言ってたけど、そんなの関係ない。 依頼人にとって娘はその子だけだヨ、違う?
ま、一応得た情報を式で飛ばしておくか。 イルカちゃん宛てで・・・・ いいよネ? 窓口だし。
我らが忍びの父、三代目火影を差し置いて。 密通してる気分になるんだケド。 気のせい??
三代目も“お主らに任せるぞ”って言ってたもん。 なんか緊張しちゃうネ、式飛ばすだけなのに。
・・・・・だよネー? パパの顔を立てるのがオレ達の仕事! 恩返しで親孝行! イイよネ?
拉致の依頼をしたのは水の国の大名 最上様、これから娘を救出に向かう・・・・ っと。
皮膚が移植されて顔を変えられてるかもしれない、なんて。 まだ憶測段階の情報は書かない。
ハッキリしたコトは潜ってる医療忍者から聞ける。 まだ手術に入ってないかもしれないし!
ヨーシ、拉致された娘を取り戻すとしますか。 速やかにかつ華麗に仕事を終わらせよう!
オレ達の迅速な対応は、イルカちゃんの心をグッと掴むはず。 パパに感謝しまくるだろうネ!
目指すは水の国の大名、最上様の居城。 火の国の山奥の村の、たった一人を必要とした大名家。
どうしてもその子でなくちゃダメだったのなら・・・・ 娘が死んでる確率はそうとう低いヨ。
水の国の大名がわざわざあの里に依頼をしたのは、その娘は生かしておきたかったから、だろうネ。
死体でもいいなら水雲の里の忍びに頼まずに、おひざ元、霧隠れの忍びを雇ってるはずだもん。
水雲の里は、霧や雲の過激なやり方に不満を覚えた忍びが、それぞれの里を抜けて起こした隠れ里。
霧と雲が協力して水雲の里を叩けば、ひとたまりもないケド、霧と雲が協力する? ナイ、ナイ。
お互いの里の忍びの弱点を知ってるから、あの里は黙認されてる。 絶妙なバランスでネ。
なんでも力任せに荒っぽく解決する自国の隠れ里より、水雲の里の方がいい、という大名も多いはず。
雲や霧が、あえて水雲の里を黙認しているのは、そういう大名達の働きかけがあるのかもしれないネ。
ま、火の国と木の葉にとっては可もなく不可もなく。 あってもなくても特に問題のない隠れ里。
・・・・まさか木の葉を動かしてあの里を潰させる為・・・・?? いや、変に勘ぐるのはよそう。
・・・・・だよネ? それだったらあの村ごと焼いて、水雲の里の仕業にみせかければ済むヨ。
アー ヤダヤダ! オレ達ってドロドロした裏の仕事ばかりしてるから、つい勘ぐっちゃうよネ?
もうクセみたいなもんだヨ、職業病。 ・・・・ほっとけない病のイルカちゃんの気が恋しいヨ。
「ええ、裏表のない、全部表の表情や視線。 ・・・・・三代目って見る目ありますねー。」
「一緒にいて腹の探り合いしなくて済む妾か・・・・。 老い先短いパパ冥利に尽きるネ。」
「ぐっすりと眠れるだろうな〜 ・・・・・」
「その前に楽しめるだろうな〜 ・・・・・」
「「あははは! 羨ましいぞ、ヒルゼンパパ!!」」
・・・・・ン? 鷹丸だ・・・・ ありゃりゃ、お前、どうしたの。 誰かの任務に同行中でショ?
最上様の城に移動中、なんと上空から鷹丸が。 鷹丸は、ウチの情報分析部 通信班所属の伝書鷹。
長期で単独任務に就く忍びに同行することが多い。 または・・・・・ 急な知らせかのどっちかだ。
これは・・・・・・ オレ達宛ての書簡?! 三代目じゃないよネ、三代目なら式を飛ばしてくる。
「・・・・任務受付所の海野より・・・・・ って。 イルカちゃんが?!」
「へ?? なんで?! さっき式飛ばしたトコだヨ?! いくらなんでも早すぎでショ。」
「鷹丸は早いですが。 ボク達が里を発った直後、ぐらいでないとここまでは・・・・」
「とにかく書簡を確認しよう、なんだろう、オレ達に急用って・・・・・」
・・・・・・任務は中止? イルカちゃんが鷹丸を飛ばして知らせてくれたおかげで、全部が繋がった。
このままでいる方が娘にとって幸せだからと。 依頼人の父親がそう希望したから任務は中止。
ケド、イルカちゃんはこう書いてる。 お二人の判断に委ねます、幸せかどうかは本人が決めるモノ。
コレは、水の国に潜っている木の葉の潜入員が、情報部に報告した近況情勢の中の一つだネ・・・・
水の国で、めでたい知らせが飛び交っている、長年行方不明だった最上家の孫が見つかったらしい。
母親は水の国の大名最上様の息女。 親の反対をおしきり駆け落ちしてそのまま行方知れずだった。
その駆け落ちした姫には、足の甲に紅葉型の痣があり、発見された孫の胸にも紅葉型の痣があった。
紅葉型の痣は最上本家の血筋の遺伝性の痣らしい。 だからその痣が何よりの証拠になるそうだ。
「・・・・痣が動かぬ証拠って。 あれですか、水雲の里の医療忍者に頼んだもう一つの依頼。」
「ダネ。 “皮膚を移植をしてくれ”は、紅葉型の痣がある皮膚を移植してくれ、だったワケだ。」
「なら。 依頼人の娘は・・・ 最上本家の孫娘でもなんでもないじゃありませんか。」
「ウン、パチもんだネ。 そう公表する為に作り上げられた、偽物の孫娘だヨ。」
情報部で近況報告ファイルを区分けしていたイノイチさんは、その最上家の孫娘の写真を見て驚いた。
その子はさっき、自分が雑草の中の記憶を覗いて見た娘と瓜二つ。 で、父親に確認を取ったところ。
間違いなく自分の娘だ、と依頼人が断定したそうだ。 胸に紅葉型の痣はあったのか、と尋ねると、
小さい頃に見たきりで形もあやふやだけど、確かに胸に赤い痣があったらしい。 ・・・・なるほどネ。
「贅沢させてやれない自分といるよりは、娘は幸せだ・・・・ と思ったんですね。」
「薬草学の学び舎に通ってたんだよネ? 大名家の孫娘なら有名な医療学校も夢じゃない、とかネ。」
「・・・・“娘が生きて幸せでいてくれるなら”か。」
「でも“幸せかどうかは本人が決めるモノ”だヨ。」
「・・・・・そうですね。 それに。 任務依頼内容は“雑草を調べてくれ”ですから。」
「雑草を調べるのが中止になったからといって。 オレ達には関係ないもんネー?」
「イルカちゃんはボク達の判断に委ねるそうですよ?」
「フフフ。 ・・・・・信じてるんだネ、親子の絆を。」
オレ達は偽物だと知ってるケド、鷹丸に書簡を届けさせた時点では、イルカちゃんは知らないはず。
父親の依頼人と同じく、水の国の大名、最上家の孫娘だと思ってる。 なのに、こう書いてきた。
その子は大名家で贅沢な暮らしをするより、裕福でなくても村で暮らすの選ぶ、そう信じてるのヨ。
ウン、イルカちゃんもそうだもんネ? パパに好きなだけおねだりできる立場なのにサ。
三代目の傍にいるだけでいい、一緒にご飯食べて、たまに旅行に行って。 それだけしか望まない。
・・・・・幸せかどうかは本人が決める、その通りだヨ。 ナニが幸せか、本人に確かめてみなくちゃ。 ネ?