紅葉の痣 14
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ん? なんだか外が騒がしいな。 看護師がバタバタと足音を立てて・・・・ なんだろう??
依頼人が休んでいる病室の外で、結構派手な音がした。 そっとドアを開けて見てみると・・・・・
壁、天井と飛び移りながら、看護師数人の捕縛の手を掻い潜っている小さな犬が一匹。
くす! でもあの犬、凄いな。 一般病棟だから医療班の忍びじゃなく、看護師も一般人だけど。
あの身のこなしは訓練された・・・・ 額当て?? あ・・・・れ?? という事は忍犬か?!
なるほど、相手が忍犬じゃ、どう頑張っても一般人の看護師では捕まえられないよな、ははは!
なんて感心していたら、その忍犬が扉の前に降り立った。 ・・・・・・もしかして、俺に用か??
やば、すぐに迎えてあげなくちゃ!! 普通に入院してる患者さんと看護師さんに迷惑が・・・・・
「御免、拙者はパックンと申す。 こちらにいると受付所で聞いてまいった。」
「やっぱり! ・・・・・どうもお騒がせしました、この病室に呼んだ忍犬です!」
「お主が、海野イルカだな? ・・・・“待たせたのぉ” ほれ、これが・・・・・」
「・・・・あの、とにかく中へ。 さ、どうぞ?」
待たせたのぉ、って。 なにそれ! 今のは・・・・・・ 三代目が火影笠をくいっと上げる仕草?!
何この忍犬!! 三代目の真似っこしたのか?! か・・・・・可愛いっ!! 可愛すぎだろっ!!
ちょびっとたれ気味の目も、おでこのシワも、どことなく三代目に似てるっ!! うっひゃぁ〜〜〜!
ちいちゃい所も似てるぞっ!! 三代目も何気に、着物をズルズルと引きずるぐらいちいちゃい。
「こ、こら若造っ! 放さぬかっ! 拙者は仕事中じゃっ!!」
「はっ!! す・・・・すみません、つい・・・・・。」
「コホンッ!! では改めて。 お主に渡せと頼まれた封印の巻物じゃ。」
「?! ・・・・・という事はこの中に?!」
まさかっ!! 依頼人に、もうすぐ娘さんを連れ戻してくれますよと、確かにそう言ったけど!!
封印の巻物は一時的に異空間にモノをしまっておける巻物だ。 生き物でもなんでも入れておける。
忍犬が、俺指定で封印の巻物を渡せと言われているのなら。 考えられるのは一つしかない。
この巻物の中に入っているのは、暗部の二人が助け出してくれた依頼人の娘。 間に合ったんだ!
忍犬さん・・・・ あ、パックンさん・・・・・でしたっけ?? では早速開けてみますね。
え? 薬で眠らされているみたいだから、医療忍者を呼んだ方がいい?? あ、そうなんですか。
医療忍者をすぐに呼びます、どうもありがとうございました。 ・・・・あの、ひとつ質問いいですか?
「さっきのあれ、三代目の物真似ですよね??」
「それも任務じゃ。 そうして渡せと頼まれた。」
「・・・・・・・・・任務。」
「任務は完了。 拙者はこれにて、御免っ!!」
「あ、はい! お疲れ様でしたっ!!」
・・・・・・・・・ぶっ!! あははは! そうなんだ?! 任務だったんだ、あはははは!!
どんな顔して言ったのかな、あの二人。 面で隠している顔を、思わず想像して笑ってしまった。
凄い忍び達なのに。 ただ働きさせられても文句も言わず、こんなに三代目を慕ってるなんて。
三代目と三代目の直属の部隊の人達の強い絆は・・・・・・ 血の繋がった本物の親子以上だな。
親孝行、恩返し、そう言ってたもんな。 三代目は俺だけじゃなく、どの忍びにも過保護なのかも。
依頼人といい、三代目といい。 人の子の親は本人が思う以上に過保護なモノなんだな、ふふふ!
依頼人も言ってたっけ。 心配性だ、って後で笑い話になるぐらいが・・・・ 丁度いいのかもな。
「よし、医療班スタンバイ、OK! では封印の巻物の封を解除します!」
「あの・・・・ そ・・・・・ そんな中に・・・・・ 娘が・・・・?? 本当に?!」
「はい、これは異空間と繋がってる巻物です。 いいですか、見てて下さい? ・・・・封印、解っ!!」
「?! あ・・・・・ あぁ・・・・・ ぁぁぁああっっつっぁぁああっ!!!」
「・・・・・さあ、ウチの医療忍者に任せて下さい。 すぐに目を覚ますはずです。」
「はい、はいっ!! ぅぅう・・・・・」
しばらくして目覚めた娘さんは、自分の身にいったい何が起こったのか覚えていなかったんだ。
学び舎の帰り道、鎮痛剤にも使われる野草を見つけて、摘んでいるところで記憶が途切れていた。
野草を失くしちゃったみたい、ごめんねお父さん。 ・・・・彼女の開口一番の言葉はこうだった。
今日は父親の誕生日。 最近よく、膝が痛いと言っている父親に、鎮痛薬を調合するつもりだったとか。
依頼人はその言葉を聞いたとたんに、娘を抱きしめた。 これ以上のプレゼントはない、と言って。
依頼人が言葉につまりながらも、今日何があったのかを一から説明している。 ふふ、想像できるな。
父親思いの優しい彼女なら。 失くした野草はまだここにあるのね? やった! って喜ぶよ、きっと。
ふと気配を感じて窓の外を覗くと、今回の立役者、暗部の二人が窓の外枠の両側に張り付いている。
暗部だから姿を見せたくないんだろうな。 お二人が、しー っと指を立てる仕草をしたので頷いた。
本当は依頼人に紹介したいけど・・・・ 依頼料をすごく気にしてたし。 姿を見せない方がいいかも。
空気を入れ換えるふりをしつつ窓から顔を出し、お帰りなさい、お疲れ様でした、と小声でささやく。
本当なら何日もかかったはずなのに、たった半日。 全部がこう上手くいくなんて、皆無に等しい。
一つでも後手に回ってたら、完全に手遅れだった。 依頼人に代わって、心からお礼を言いますよ。
本当に。 ありがとうございました・・・・ 三代目、ありが・・・・・・ ぅ、やばっ! 涙が・・・・・。
慌てて涙を拭いたけど、きっと見られたな。 うひー 恥ずかしいぞ、俺!! ・・・・・??
くすっ! 窓の外側から、アワアワとした気がながれてくる。 ちっとも暗部らしくないですよ、それ。
そりゃ吃驚するだろう、中忍が突然泣いたら。 くすくす! でも気配漏らしすぎですよ、お二人さん!
はぁ。 なんか。 桁違いの忍びだと分かっているのに・・・・・ 親しみを持っちゃうのはなぜ??
やっぱりアレかなぁ。 三代目の為にひと肌脱いだり、物真似で場を和ませてくれたりするからかな。
暗部なんて、ただでさえ近寄りがたいのに・・・・ その長達はあんなに優しくて気取らなくて・・・・
まさに俺の理想。 絵に描いたような忍びの見本。 ・・・・お友達になってくれないかなぁ・・・・
なんて。 今、そうとう厚かましい事考えてるぞ、俺。 というか。 ご馳走するぐらいはいいよな?
そうだよ、今回は本人達も言ってたけど、完全な無料奉仕。 火影様を思っての私的行動だもんな。
・・・・・・よーし、腕によりをかけて夕飯作っちゃうぞ?! 三代目と一緒にお二人もご招待しよう!!