紅葉の痣 13   @AB CDE FGH IJK MNO PQ




ねえねえ、パックン! 三代目のモノマネしながら“待たせたのぉ”って言ってあげて?
ぶっ! あははは、ごめん、ごめん! なんか、イルカちゃんが喜んでる姿を想像したら楽しくて。
もう! ほんのジョークじゃないか。 そんなに怒ると、おでこにまた新しいシワが出来るよ?
・・・・・・封印っ!!  はいこれ、娘さん入りの封印の巻物。 海野イルカ中忍だよ? 宜しく!

口寄せ獣のもつ、異空間移動適応動能力は凄い。 異空間移動中も細胞がバラバラにならない。
まあ、だからこその口寄せ獣なんだけど。 異空間移動して行けば、木の葉の里まであっという間。
またもイルカちゃんは感激しまくりだよ。 “え、さっき式が届いたところなのに?!”ってね!

カカシ先輩、口寄せ獣はボク達よりうんと長生きですよね? パックンは何歳ぐらいなんでしょうか。
ボク思いましたよ、お年寄りが頑固で怒りっぽくなるのは、人間も口寄せ獣も同じなんだな、って。
あ。 もしかしたらビタミン不足かも。 ビタミンが不足するとキレやすくなる、って言うし!





白黒はっきりつけたがるのは人の習性。 でも忍びは違う、白色や黒色よりも灰色が多い。
毒を持って毒を制す、は特に暗部のブレない軸だけど、強硬手段に出るより効果的な方法がある。
ボク達暗部は灰色だからね、裏取引だよ。 弱みを握っても忘れますよ、と持ちかけるんだ。

こんな腹黒大名の一人、ハッキリ言って今すぐ殺せるよ? でもしないのは、手が汚れるから。
自国にとって必要ない人物だと思ったら、自国の隠れの里が始末する。 手を汚すのはそこの忍び。
それに。 ここ、水の国のお抱えの隠れ里は、血霧の里とも呼ばれている霧隠れの里だよ?

力で制するのが大好きな忍びの里。 そんな喧嘩っ早い里に、みすみす与えるわけにはいかない。
何を、って。 “自国の大名が木の葉に殺された”と、火の国に攻め入る為の大義名分、口実をね。
今回の事は全部なかった事にして忘れましょう。 それがお互いの為ですよ、と話をつけるんだ。

ふふふ、実に簡単な事だよ。 最上の大殿様にとって、おいしい情報を提示すればいいだけ。
くだらない自己保身、家督争いの為だけに、火の国の民を拉致させた奴だよ? そんな事、百も承知。
そんな奴の為になるような事をするのか! って思うだろうね。 ・・・・ボク達暗部は超灰色だもん。

心配しなくてもこんな奴、ろくな死に方しないよ。 必要のある殺しは徹底的にやる。 けれど・・・・
ボク達木の葉の暗部は必要じゃない殺しは一切しない。 まあ、仕事は前者が圧倒的に多いけどね?



最後の仕上げは言うまでもなく確実に。 気のふれた側近を、最上の大殿の目前に無言で差し出した。
昔の姫殺しも、醜い家督争いの末の企みも全部、こいつが吐いたよ? と言わんばかりに。
孫娘に仕立てるつもりの娘は奪われ、医療忍者も殺されたか・・・・・ って、顔に書いてあるね。
一部を除いて全部が正解。 水雲の里の医療忍者は今頃、もう水の国を出たと思うよ?

「イーコト教えてあげるネ、大殿様。 人工培養した紅葉型の痣つきの皮膚はそのままだーヨ。」
「あの水雲の里の医療忍者にね、ウチの国から拉致った娘の細胞組織を分離させたんですよ。」
「・・・・・・・・・??」

「そうすれば命は助けてやる、って言ったら。 きっちり良い仕事をしましたよ、彼女。」
「あの人口皮膚を使って好きなだけ“孫娘”を作りなヨ。 ・・・ただし。 火の国の民は使うな。」
「・・・・・・・わ、分かった。」

あ、そうそう。 ここに来る前に、ボク達の分身を二〜三体走らせて噂をばら撒いて来たから。
あの娘は偽物らしいぞ? 本家の跡継ぎを一度に亡くし、傷心している大殿に付け込んだようだ。
もしそうなら、最上本家の証でもある紅葉の痣が体にあるという噂も、本当かどうか怪しいもだ。
・・・・・とまあ、こんな様な事を城下町で話して歩いたんだ。 国中に広まるのは明日ぐらいかな?

「一応お尋ねしますが。 証拠もなしに大殿の孫を騙るは大罪、当然、処刑の対象ですよね?」
「家臣の一人がサ、その偽孫を使って最上家の乗っ取りを企てたら。 やっぱり死罪だよネ?」
「ああ、その通りだな。   ・・・・・・・これ以降、最上本家に干渉は無用ぞ。」
「「お互い様。」」

大殿。 余計なお世話かもしれませんが。 その気のふれた男、始末するなら早い方がいいですよ?
分家の奴らが押し寄せて来るはずですから。 ・・・・・本家の証である紅葉型の痣を見せろ、とね。
すぐに自国の霧の忍びを呼んではどうです? 拉致も人工皮膚移植も彼らに一任すれば喜びますよ。
・・・・・・・・その昔、姫とその恋人を殺めた時の様に。 上手く始末してくれますよ、きっと。

「「本日この時より、木の葉と最上本家の接触は皆無とする。」」
「・・・・・・・心得た。 ではご忠告通り、早速霧を呼ぶとしよう。」

ボク達が無理やり情報を引き出したから、使い物にならなくなった家臣。 その使い道は一つ。
全ての罪をかぶってあの世に逝ってもらう事だけだ。 霧の忍びがお家乗っ取りを暴き始末した。
そう公表するだろうね。 ・・・・殺戮が大好きな血霧の里、この男の肉の欠片も残さないと思うよ?