紅葉の痣 16
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そもそもボク達は三代目に色事で隠し事はしない。 直属の部隊、暗部の部隊長と補佐だから。
九尾襲来から今日まで。 どんな些細な事でも、忍びの父である三代目に隠さず報告して来た。
どこどこの店のあの子は上手いとか。 口ばかりでド下手だったとか。 そんなどうでもいい話。
その道の師匠でもある三代目に下ネタをバンバン振っても、ほほほ、そうかの? と笑ってくれた。
でも正直・・・・・・ これは言っていいかどうか迷ってる。 惚れちゃった、なんて言おうものなら。
まるでボク達が・・・・ 三代目のコロリ急死を、今か今かと待ってるみたいじゃないか!!
そんな事は絶対にない。 できれば禁術でも使って、ずっと里の忍びの父で居てほしいぐらいだ。
保険を申し出てたとして、遺言状に書き加えてもらえても・・・・ ボク達だって明日をも知れぬ身。
はっきりとこの人が欲しいと思ったら、手に入れたいに決まってる。 心も体も混ざり合いたい。
なんて言えばいいのかな。 こんな時は・・・・ なんて言えばいいんでしょう、カカシ先輩っ!!
たかだか火影室への道のりが。 ここまで遠いものだと思った事なんて、今まで一度もない・・・・・
三代目。 バッチリいい仕事して来ました。 あとですね・・・・・ とても言いにくいんですが・・・・
? いや、そうじゃないです! 最上の大殿とはきっちりと話をつけました、霧にも口実を与えず。
今後も問題なく・・・・・ いえ、そういう仕事上の危惧ではなくてですね・・・・ う〜。
ボクもカカシ先輩も、肝心な言葉が出てこない。 海野イルカを手放す気はないか、という言葉が。
「三代目っ!! 今日の夕飯を作りますからっ! 三代目っ!!」
「なんじゃ、イルカ騒々しい。 ノックをして入ってこんか。」
「へへへ、ごめんなさい! あ、お二人も! 丁度良かった!!」
「「・・・・・?! (イルカちゃん?!) 」」
「今日、むちゃくちゃ豪華な食事を用意しますから!! 火影屋敷に行っていいですか?」
「ほう! それは何か? この任務のお礼、というヤツかの? ほほほ。」
「あと、カカシさんとテンゾウさんも!! お二人にもぜひ、食べてもらいたいです!!」
「そんなに嬉しそうに誘われると、嫌とは言えんの。 カカシ、テンゾウ?」
「「・・・・・ええ、もちろん、喜んでお伺いします。」」
ボク達が言葉に詰まっていると、なんとイルカちゃん本人が、突如として火影室に乱入。
依頼人親子を見送ってあげたんだろう。 三代目の家にご飯を作りに行くと言う。 手料理だ羨ましい。
そして更に思ってもみなかった事が。 頑張ったボク達も一緒に三代目んちにご招待、らしい。
お礼か。 ・・・・別にそんなの。 無料奉仕だけどでも。 ボク達の・・・・・ 私的行動なのに。
自分が力になってくれ、と言ったから。 ボク達が無理やり働かされたと思ったのかな・・・・・。
イルカちゃん、優しいもんね。 ボク達が喜んで行くと伝えたら、瞬く間に可愛い笑顔になった。
暗部は灰色一色。 そんな裏表のない気持ちを直にぶつけられたら、眩しくて仕方がないよ。
「イノイチさんがね? なんとあの雑草・・・ じゃなかった野草を水に浸してくれてたんですよ!」
「ほほほ! イノイチは草花が大好きじゃからのぉ。」
「そうしたら娘さんが喜んで。 後で三代目宛てに、鎮痛薬を送ってくれるらしいです!」
「そうかそうか、それは楽しみじゃて。 ・・・・はて? 鎮痛薬じゃと??」
「えっと・・・ ほら、この前腰が痛い、って言ってたじゃないですか! だから俺・・・・・・」
「ほほほ! さしずめ、依頼金額をこれ以上気にしない様に、交換条件を出したんじゃな?」
「・・・・はい、凄く気にされてて。 だったらウチの火影様の為に、お父さんと同じ薬を、って。」
「お主らしいのぉ。 ・・・・・・親子が生きて再会できて。 よかったの、イルカや?」
「・・・・三代目、俺・・・・・。 その・・・ ありがとうございました!!」
「ほほほ! なに、暗部の長にかかれば、ざっとこんなもんじゃ。 頼もしかろう?」
「・・・うんっ! ・・・・じゃなかった、はいっ!!」
「「・・・・・・・・・。」」
あの依頼人の親子は、やっぱり依頼料を気にしてたのか。 依頼は雑草を調べるだけ、当然だよね。
気を遣わせない様に提案してあげたんだ。 “父親の為に鎮痛薬を作る”さっきそう言ってたもんな。
“火影様も腰が痛いって言ってるんです、依頼料代わりに作ってもらえると助かります”とかね。
容易にあの後の会話を想像できるよ。 木の葉の忍びにそう言われてしまえば、もう・・・・・ ね?
“うんっ!”だって。 いつも私生活でパパと話す時は・・・・・ 当たり前だけど敬語じゃないんだね。
そうやって。 素のままの自分で接してもらってるだろう三代目が。 本気で羨ましいよ、ボク達。
イルカちゃんがボク達を見てほほ笑む。 何? どうしたの? そのほほ笑みの意味するところは?!
「パックンさんの物真似、最高でした! あの仕草がなんとも・・・ ふふふっ!」
「「ぁ・・・・・あれ・・・ね? (パックン、三代目のモノマネ本当にしたの?!)」」
「夕飯、腕によりをかけて作っちゃいますから! 出資は主に三代目のあぶく銭ですけど!!」
「こ、こほんっ! 余計な事は言わんでええ。 はよ、受付に戻らんか。」
「はいっ! じゃぁ! 今夜!!」
「「うん、今夜・・・・・。」」
「ほほほ、イルカの作る料理は美味いぞ? 小助の直伝じゃて。 楽しみにしとれ?」
「「・・・・・はい。 楽しみです。」」
結局。 イルカちゃんを手放す気はないか、と三代目に聞きそびれたまま、ボク達は火影室を後にした。
・・・・・・・カカシ先輩。 ・・・・今更でなんですけど。 面着けてて本当に良かったですよね。
今日の夕飯が待ち遠しくて、顔が自然とにやけるんですけど?! 勝手に口角が上がるんですけど?!
とりあえず、返答しだいで雰囲気が悪くなるかもしれないから。 質問はまた明日でいいですよね?