紅葉の痣 12   @AB CDE FGH IJL MNO PQ




オレ達は城に潜り、大殿の側近っぽいヤツを捕まえて、このドロドロとした最上家の秘密を知った。
全くくだらないよネ。 本家も分家もどっちもおバカ、民は後回しで自分達が最優先、だもん。
こんなのがゴロゴロいる水の国、自国の隠れ里が “血霧の里” と呼ばれてても恥だと思わないんだヨ。
まさにあの里にして、この国の大名あり、だヨ。 ・・・・・ま、要人全員がそうとは言えないケド!





オレ達のお目当ての娘は、城の離れの一角にいるらしい。 明日にでも紅葉型の痣を移植する予定で。
大殿の痣の部分の皮膚細胞を培養して、あの子の細胞と混ぜ合わせて。 紅葉型にするんだってサ。
だから先に医療忍者が潜ってたのネ? 最上本家の血筋にのみ現れるという痣を人工的に作る為に。

身体的遺伝情報を移植すれば、移植された者はその情報を受け継ぐ。 遺伝子情報を中継するんだヨ。
最上本家の血筋でもある大殿の細胞から培養した人工細胞は、痣の遺伝情報を失わないまま。
情報を埋め込まれている体が出来上がるワケだ。 あの娘が子を孕んだらその情報も受け継がれる。

早い話があの子は情報の土台、子はその土台から情報を引き出して産まれてくる。 遺伝性だから。
本家血筋の遺伝子情報は彼女の体から次の世代に引き継がれて行く、最上本家はコレで安泰。
・・・・・とまあ、こんな胸クソ悪い計画が水面下で画策されてたんだヨ。 ヤダネー?

チョット頭の中を掻き混ぜ過ぎたみたい、内情を吐かせてた男の気がふれちゃったヨ・・・・
ま、いっか! 偽物を見つけてきた家臣に仕立てて、後で偽物孫娘と死罪ってコトにしちゃえば!
拉致された娘の居場所は分かったし、見逃す約束をした医療忍者も、そこいるんだから。

心潜術を使える忍びや潜入員なら、上手く聞き出せたかもしれないケド。 所詮、オレ達は暗殺部隊。
手っ取り早く情報を知る方法といえば、無理やりしかないもんネー? もうこの男は用ナシだヨ。





大殿の細胞から遺伝子情報を取り出して、人工的に痣のある皮膚を作っていた水雲の里の医療忍者。
よほど研究熱心なのか、オレ達が部屋に入ってきたコトすら気づかない。 ・・・・隙だらけだーネ?

いつもなら任務遂行の妨げになるヤツは斬り捨てる。 迅速かつ確実に、が暗部のモットーだから。
でも約束したしネ、あの下忍と。 それに水雲の里の連中は今回、火の国の民を誰一人殺してない。
・・・・・・隙だらけだけど落ち着いてるし・・・・ 年はあの下忍より上かも。 お姉さん、かな?

あ、やっと気づいた。 遅いよ、もう! アンタ、他里の忍びならもうとっくに殺られてたヨ?
彼女はオレ達を見て、自里への依頼、拉致も皮膚移植も最上本家の企みも全部バレた、と悟った。

「へー これが培養した人口皮膚?? 今、あの子の細胞と混ぜて・・・・・ 馴染ませてんの?」
「?! 暗部?! ・・・・・木の葉から・・・・ 暗部が・・・・・」
「うわー 紅葉型の痣がハッキリと浮き出てますね・・・・・ 凄いなあ・・・・」
「・・・・・・まさかもう知られたなんて・・・・・・ くっ!」

「里は任務依頼を請け負っただけ、同じ忍びなら分かっていただけますよね? ・・・・どうか私を。」
「そりゃ当然でショ、仕事なんだし・・・・ イヤ、そうじゃなくてサ・・・・・・」
「私の首だけでは、木の葉の怒りを鎮める事はできませんか?! 移植は中止にしますから!」
「違うって! ボク達はそこで気を失ってる子を連れて帰りたいだけだから!」
「どうか水雲の里へは・・・・・・・ え??」

・・・・・・アー あのネ・・・・ だいぶ誤解してるみたいだケド。 報復じゃないから。
もうアンタの命は取引き済み。 こう髪の毛が丸まってて栗色で・・・・ 長の所に案内してくれた下忍と。
目の形なんか、アンタにそっくり。 肉親かな? 弟さん?? オレ達に取引きを申し出たんだーヨ。
“もう一つ情報を渡すから、城にいる医療忍者は助けてやってくれ”ってサ。 だから殺さない。

「・・・・・・。 それは・・・・ ええ、私の弟です・・・・・。」
「なかなか見どころあるネ? 長の伝令に使われてるみたいだし。」
「ボク達に臆さず・・・・ 立派に交渉を持ちかけましたよ?」
「あの子は少々・・・・ 怖いモノ知らずな所がありますから・・・・」

クスクス! でも人の本質を見る目を持ってるヨ。 オレ達なら交渉に応じてくれると信じてた。
・・・・・・ここだけの話だけどサ。 オレ達は今回、無料奉仕なの。 てか、自主行動なのヨ。
ほんの恩返しのつもりなの。 だからその人に協力してあげたいなー なんて思ってるワケ。
なるべく血を流したくない、綺麗に華麗に任務を遂行した、ってトコロを見せたいのヨ、分かる?

「見たところあなたは、上忍クラスの医療忍者。 一人でも抜け出せますよね?」
「はい。 こんな城を抜け出すのに、お二人の手は煩わせません。」
「フフフ! だよネ? ・・・オレ達が後ろを向いてる間にいなくなってくれる?」
「心得ました。  ・・・・・・・私の首を繋げて下さって・・・・・ 感謝します。」

「お礼はサ、里に帰ってアンタの弟さんに言いなヨ。」
「火の国の民を一人も殺さなかった実行部隊にもね?」
「・・・・・・・・・はいっ!」


約束の一つは果たしたヨ。 さーて、あとはこの子を送るだけ・・・・・・・・ 口寄せの術っ!
パックン、今この子を封印するから、封印の巻物をダッシュで届けて? 里の任務受付所に。
そこに海野イルカっていう中忍がいるはずだから。 彼になるべく愛想よく渡してネ?

「カカシ先輩、一足先に送り届けるのは名案ですが・・・・・ なんで忍犬??」
「ンー いや、ホラ。 なんとなく三代目に似てるでショ、パックンって。」
「そういえば。 程よくしわくちゃな所も、たれ目も・・・・ 似てますね。」
「でショ? イルカちゃん、喜ぶんじゃないかなー なんて!」

「わ、小さいパパだw とかですか?」
「ミニパパ可愛いっ! とかネー!」
「「絶対喜ぶっ!! あはははは!!」」

「笑っとらんで、はよ封印せんか! (拙者は爺顔ではないっ! 血統書つきのパグ忍犬じゃっ!) 」