香りの塔 18   @AB CDE FGH IJK LMN OPR S




“同じように、このワタシの手で殺してやる!”そう叫ぶ心の声が聞こえてきそうな怒りを感じるヨ。
遺体の背中についた傷を凝視していた麗香様。 松葉様達を例外なく、香りの塔に埋葬すると言った。
どんな死に方をしたにせよ、この国の礎になるコトは変わらない、松葉達もそう望むだろう、ってネ。

麗香様、お忘れですか? 自ら手を汚さなくても、手を汚す事を生業とした者がおりますヨ、丁度。
我らは火影より、国主の力になるようにと言われてますから。 それが麗香様のご希望とあれば喜んで。
さすが一国の主と言おうか、桃井を即座に次の処頭に任命、その桃井の目前で、オレ達に粛清を依頼した。
桃井は松葉様達の遺体をみつけた功労者。 本来なら、もう休むようにと退室を命じてもいいのに。

『これから我が国は民の為にも忍びの里を抱えようと思う。 奥処の者は本来の役目を逸脱するな。
 木の葉の忍びの調べで、奥処全ての者が関与していたと聞く。 よって奥の者、全員を処分する。』

奥の者全て、塵も残さぬよう焼き払えと。 この国の者は皆いずれ香木となる、と言った同じ口でネ。
次の処頭にわざわざ聞かせたのは、大葉と同じ間違いを犯さぬよう、立場をハッキリとさせたんだヨ。
桃井に限ってはそれはないと思うケド。 飼い主を噛んだ犬は処分される、そんなのは当たり前だから。
誰が飼い主なのか、今一度言っておく必要があると思ったんだろうネ。 今回、初の例外を認めるらしい。

オレ達 二人は木の葉の暗殺部隊。 それを知っててそう言ったってコトは、全員の暗殺を意味してる。
“塵も残さぬように” だからネ。 謀反人は香りの塔に埋葬しない、という特例を作るつもりだろう。

三体の遺体を一緒に埋葬するようにと、新たな奥処の処頭としての初仕事を桃井に伝え、オレ達にも。
仕事が済んだら、香りの塔の最上階へ呼びにきてくれと。 香華の国の国主は、そう言って玉座を立った。
雨射のマッサージを受けながら、自分と肌を共にした者達の最期を子守唄として堪能するらしい。

「麗香様! 雨射の腕に惚れ込んで奥処に迎えるとか、ナシでお願いしますネ?」
「そんな事になったら、木の葉の忍びから総好かんを喰らいますよ?」
「案ずるな、火影殿からも注意されておる。 それに・・・ 松葉からの最期の贈り物だからの。」

「「・・・・・・・・・すみません、一応。 護衛として進言させて頂きました。」」
「これでワタシも切り替えが出来よう。 ・・・・・・・・ではな。 ・・・・木の葉の暗部、頼んだぞ?」
「「御意。」」

雨射のマッサージはホントに気持ちが良いんですヨ。 どうせあの後一睡もしてないんでしょう?
・・・・いつの間にか眠ってる。 そんなゴールドフィンガーの持ち主なんですヨ、草津屋の雨射は。
吐き出すコトの出来ない怒りと悲しみを。 少しでも海野中忍が癒してくれるとイイですネ、麗香様。

んじゃ、オレ達は任務を遂行して来るか。 二人だから時間がかかるだろう、と思ってるみたいだネ。
国主と桃井はオレ達のコトをただの暗部隊員だと思ってる。 ま、雨射の護衛だから、普通そう思うか。
でもオレ達、そこの長だから。 もっとタチ悪いのヨ。 半時間もあれば十分だよネ、テンゾウ?








どうなんだろうネ? 次々と意味もなく斬りかかってくるのは。 せめて隊をなしてからかかって来なヨ。
頭でっかちの武人はこれだから馬鹿。 相手の実力を感じ取れないようじゃ、戦場では最初に死ぬヨ?
モウ! 弱いモノ虐めしてるみたいでイヤなんだケド。 ・・・・と言いつつ、ガンガン忍術発動!

皆、武術に長けた者達だと聞いてたケド。 こんなモン? これじゃ、忍びの里が出来たらお払い箱だねぇ。
なんだ、心の底ではちゃんと分かってたんじゃない、自分達の身の程を。 今更後悔してももう遅いヨ?
・・・・・・・・・・ま、死んでからじゃ後悔は出来ない、ってか? ごめーんネ、言うだけ無駄だった!

だって、一日一回一フィニッシュとか規制されてたし! 後に何も残さないなら、いくら暴れてもOKでショ?
国主のお望みは、塵も残さずだから。 木の葉の忍びらしく火遁で締め括る。 文字通り丸焼きにした。
テンゾウが発動させた火遁に、オレの火遁をぶつける。 炎を炎で包み込み、瞬時に中身を気化させた。




「その額当ての印は・・・・・ お前達、木の葉の忍びか?!」
「ご名答。 国主 麗香様のご依頼により、奥処の粛清に来ました。 残すはあなただけです。」
「なっ!!! 馬鹿なっ!! くっ! ・・・・・・・・なんと言う事だ、麗香様は悲しみのあまり・・・・」
「あのネ。 子種候補だからといって、国を思い通りに動かせるだなんて思わない方がイイよ?」

・・・・ナルホド。 国主は夫の不在で御乱心、心を病んでしまった・・・・ みたいな事を言うつもりか。
ンー 確かに機転は利くようだケド、それにはチョット無理があるかな? 全部ご存じだから、国主は。
主と従者なんだヨ、そこを忘れちゃダメでショ。 アンタがここで生活できたのは一体誰のおかげ?
理解ある国主夫妻のおかげでショ? 国主夫妻を慕う民のおかげでショ? 奥処の伽役の意味分かってる?

男は竿を持ってるからネ、抱いた相手を征服したような気になるらしいケド。 とーんでもないヨ。
海野中忍なんて・・・・・ いくら抱いても全然思い通りにいかないもん。 すぐ憎まれ口叩くしサ。
ま、ソコが可愛いんだケドv 抱いただけでその相手を、ましてや国をだなんて、おバカもイイトコ!

「女を抱いたけで、アンタいつからそんなに偉くなったの? それに唯の女じゃない、この国の主だ。」
「全くです。 乗っかっただけなのに、その人を思い通りに操れるとでも? 思い上がりも甚だしい。」
「くっ! ・・・・・・・・私がいなければこの国の世継ぎができないぞ! それでもいいのかっ!!」

「・・・・・松葉様の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいヨ。 旧 処頭の大葉さん?」
「謀反人はこの国の土に還る権利はないそうです。 あなた達は墓標に入れません。」
「?! 旧・・・・・ だと?! 墓標・・・ それはどういう・・・・・ うわぁぁぁあっっ!!  っっ?!」

「すみません、どうしても背中から斬ってやりたかったんで。 ・・・・火遁、焔火の術っ!!」
「フフフ、分かるヨ。 テンゾウも麗香様の気を読んだネ?  ・・・・・火遁、焔火の術っ!!」
「「大焔火の術っっ!! 気化っ!!!」」

人間の体は73.5%が水なの、アンタ知ってた? 炎で包んだ炎の中心は、水分を蒸発させる高温になる。
麗香様、オレ達の仕事はこれにて完了です。 ご希望通り、誰一人逃すコトなく塵も残しませんでしたヨ。