香りの塔 6
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迅速かつ確実に。 面をとった上忍の姿ではあるけど、ボク達には暗部のモットーが染みついている。
海野中忍には悪いけど、ちんたら駆けるのは趣味じゃないんだよね。 表向きもしっかり雨射の護衛だし。
足手まといの松葉様ご一行が、もし一緒にいたとしても、封印の巻物に入って頂いて持ち運んでいただろう。
まあ、雨射に関してはそんな色気のない護衛の仕方はしないよ? 真心を込めて素手で持ち運びしちゃう!
「雨射、膝抱えて丸くなっててネ? ちゅv テンゾウ行くぞ、パスッ!」
「了解ですっ! ・・・・・っと! 雨射キャ〜ッチv ふふ! ちゅv」
「・・・・・・・・・・・。 ( 三代目、暗部は護衛の認識も、大きく間違っています。 ) 」
雨射こと海野中忍に丸くなってもらい、カカシ先輩とボクでキャッチボールならぬキャッチ雨射だ。
ただのキャッチ雨射じゃないよ? 愛がこもってるからね。 キスつきv キスは一回とは言われなかった。
一日一回一フィニッシュ、って言われただけだもん。 キスは何度してもOKって事でしょう? ふふふ!
さすが木の葉の中忍ですね! このスピードで下手に喋ったり身動きしたら、舌を噛むと知っている。
体育座りの様に丸まってくれた海野中忍をキャッチする度、小さなキスを何度もして楽しんだ。
カカシ先輩、こういう休息日もいいもんですね? 雨射も一生懸命丸まってて可愛いし! はい、パスッ!
「ン! 雨射キャッチv チュv 瞬身移動でパスしながら、向こうで先に待ってて驚かせようか?」
「いいですね、里の上忍のPRになりますよ、“いつの間に、さすがは木の葉の忍び!” みたいな!」
「・・・・・・・・。 ( これ護衛、って言わないよな? 護衛対象、ボール扱いだし。) 」
「「 迅速かつ確実に! これで木の葉隠れ贔屓になること間違いなしっ!」」
「・・・・・・・・。 ( いや、贔屓どころか引かれるから! 暗部って・・・・ )」
「ハーイ 到着っ!! 絶対、松葉様ご一行を追い抜いたヨ? フフフv」
「さあ、ボク達は涼しい顔して待っていましょう。 雨射、お疲れっ!」
「お、お疲れ様です・・・・ ありがとうございました・・・・・・。」
「「どう致しましてvv」」
「・・・・・・・・あの。 申し訳ありませんが言わせて頂きます。」
「「げっ!! わぁわぁわぁ! 聞こえませーんっ!! 」」
「護衛というのは守りながらお供する事です、決して荷物を配達する事では・・・・・」
「「 あ゛ーーー あ゛ーーーーー あ゛ーーーー 」」
キスも一日一回とかツレナイ事言うつもりでしょう? いや、三回ぐらいにしてくれるかもしれないけど!
ボクもカカシ先輩も聞こえないフリだ。 火影室ではしてやられたけど、もうその手は通用しないよ?
いくらツンデロが可愛い雨射の頼みでも、これは聞けない。 無言の抗議じゃなくて、大声で抗議だ。
まさか任務を盾に取るとは、さすがのボク達でも予想外。 けど、二度も同じ過ちは繰り返さないっ!
「正規の上忍は皆さんは、ちゃんと対象の歩調に合わせて護衛して・・・・」
「「 ばぁーーー ばぁーーーーー ばぁーーーー 」」
「・・・・・・。 一般人にこれやったら、細胞バラバラになりますよ?」
「「 びぃーーー びぃーーーーー びぃーーーー 」」
「・・・・・・・・・聞いちゃいない。 ・・・・・はぁ。 もういい、なんでも・・・・」
「「!! よしっ!! 妥協決定っ!! 」」
「・・・・・・・・。 ( 暗部の護衛任務は危険だと、三代目に進言しよう。 ) 」
確かに“もういい”と唇が動いた。 キスの回数制限はなし! 恋人として最低限の権利を確保したぞ!
やりましたね、カカシ先輩! しかし、妥協するのも早かったですねーv ツンデロにニヤニヤしちゃうv
取り合えず反抗してみました、な態度が可愛すぎっ! もう! すぐ妥協する癖にっ! この、このっ!
と言いつつ、早速キスをしてみる。 んちゅ――――っ! ほら、ね? ムームー言わないもんねーv
「・・・・・・・。 ( 暗部内でこういう洋風な挨拶って・・・・・ 流行ってんのか?? ) 」
ボク達が香華の国、国主 麗香様の居城がある城下町に入ると、ちょっとした騒ぎが起こっていた。
国主の伴侶 松葉様が行方不明だそうだ。 そりゃそうだよ、だって火の国の温泉旅館に行ってたんだから。
おまけに木の葉の里にも。 帰りが遅くなって当然だよ。 大人しく草津屋で待ってた方が早かったかもね。
封印の巻物に入れて運んであげたら、ボク達と同じに到着できたはずだから。 もう少し待ってあげてね?
「ふふ。 当のご本人は、こんな騒ぎになってるとは夢にも思わないでしょう。」
「国主の夫、なのにネ? この様子じゃ、民からも結構慕われてるんじゃない?」
「妻に内緒で癒しの時間を贈る人物です。 きっとそうなんでしょうね・・・・。」
麗香様に命じられているのだろう、城の兵がオロオロして聞き回っている。 松葉様は何処に、と。
松葉様の気持ちは分かるけど、ツメが甘いよね。 小さいとはいえ、一国の国主の伴侶が行方不明だよ?
これって、その国では重大な事件だ。 側近の誰かにだけは、話しておくべきだったよね。
・・・・・・・? そうだよ。 そんな人物なら、国主に対しての自分の影響力を分かっているはずだ。
「誰も知らない、なんて事。 あるんですかね、カカシ先輩。 国内ならいざ知らず・・・・」
「あんまり考えられない・・・・ カナ? ・・・ねぇ、海野中忍。 松葉様が草津屋を発ったのはいつ?」
「いえ、正確には草津屋じゃありません。 木の葉の里で護衛任務を頼んですぐに、ですよ。」
「「・・・・どういう事??」」
「草津屋に戻って来て旦那さんに伝言を頼んだのは、使者団の中の一人らしいです。」
「「・・・・松葉様ご本人は・・・・ 草津屋に戻ってこなかった??」」
「旦那さんの話から想定すると、そうなります。 木の葉に護衛任務を頼んですぐ、じゃないでしょうか。」
「「・・・・・・・・・・。」」
火の国の各所には列車という便利な乗り物がある。 あれを利用すれば、一般人でももう到着してるはず。
どういう事だ?! これじゃ松葉様は・・・・ 本当に行方不明なんじゃないかっ! カカシ先輩・・・・
三代目に知らせますか? それともこの国の国主、麗香様に? でも任務の守秘義務を破る事に・・・・
いや、どこかで道草食ってる可能性もまだある訳で・・・・・ まさか、亡命・・・・ とか??
考えられなくもない。 女帝の陰に隠れて目立たない夫、他国と同じように政略結婚で愛などない、とか。
それはあり得ないか・・・・ 結婚十周年のお祝いに、隠密で草津屋を訪ねて来たような微笑ましい人物だ。
そうだよ、そもそも亡命が目的なら、香華の国を出た時点で目的を達しているじゃないか。 だとしたら??