香りの塔 2   @BC DEF GHI JKL MNO PQR S




・・・・・・は?? 出張?! えっと・・・・・ 俺にはたくさん木の葉の忍びの常連さんがいて・・・・
出張手当をいくらはずむからと言われても・・・・・ 俺の居所は草津屋だけですし・・・・ あの・・・・
何と言っても、俺のマッサージをむちゃくちゃ楽しみにしてる、お偉いさんの黄金コンビがいるでしょう?!

え? 暗部の二人も就けるから?? や、ストップ。 それは勘弁して下さい、俺がヘロヘロになります。
だってその、香華の国・・・・ でしたっけ? そこでもずっと三人っきり、って事ですよね??
って事は、もちろん毎晩のように鬼濃いマッサージの希望がある訳で。 ・・・・雨射としては無理です、それ。
ご希望に添える様な仕事を出来るとは思えません。 終始搾りとられて終わり、ですよ。 ほんと。

「それでもお主、忍びか! 雨射の噂を聞き、是非にと草津屋に足を運んで下さったそうじゃぞ?」
「や、そう言われましても・・・・ 按摩師として出向くのなら、お二人はマズイかと・・・・・。」
「里の誇る暗部のトップツーを就けると申しておるのに、何が不満じゃ! 馬鹿もんっっ!」
「え? え?? いや、そういう意味ではなくて、そりゃ護衛としてはこれほど力強い・・・・・」

「イルカ、お主・・・ あんなにうっとおしいほど一途な男達を信用しとらんのか?」
「うっとおしいほど一途、ってトコには激しく同意しますが・・・ むかっ! だいたいなんですかっ!!」
「なんじゃ、急にっ! 逆切れかっ!」
「三代目がお二人の横暴を許すからですよ?! いくら直轄部隊の長といえど、俺の意思は?!」

そうだよっ! だいたい三代目が暗部を無茶苦茶甘やかしてるから、ああいう認識になっちゃうんだっ!
暗部の面々はそれはもう、血みどろでグチャグチャの任務が多いかもしれないけど。 あれはない!!
花街遊びも派手らしいという噂は、里の制服組なら皆知ってる。 あの、まさかのマッサージ認識!
マッサージ=ボディーマッサージ、気に入ったら本番もOK。 あり得ないけどホントにあった怖い話。




ちょっと休むといっても、下忍や中忍と違って上忍達のちょっとは、本当にちょっとだけなんだぞ?!
例えば、俺のマッサージを予定に入れて任務を遂行してたとしたら、予定日数より早めに終わらせる。
ちゃっちゃと任務を終わらせ、草津屋で少しばかり自分の時間を使う、それのどこがいけないんだ?!

唯でさえ過酷な任務、任務後なら少し休んで行ってもいいだろ?! そんなの暗黙の了解だよな?!
任務帰りにちょっと遠回りして寄ってくれてた上忍の皆さんの足が、パッタリと途絶えた。 なぜかって?
里の上忍には必ず記入してもらってと、二人が草津屋の旦那さんに渡した“マッサージ帳”のせい。
もちろん旦那さんには、あの二人が木の葉の暗殺戦術特殊部隊の司令塔だ、とは言ってないけどね?

“木の葉の上忍の方がいらしたら、これに記入するようにと・・・”とか言って、マッサージ帳を渡すだろ?
表紙に、思いっきり人相の悪いカカシと、オドロオドロしいお化け樹木の絵が描いてあるマッサージ帳。
そんなの、里の上忍が見たら誰だかすぐに分かるよ! カカシさんとテンゾウさんだ、って!

暗部の司令塔によもや“ちょっとだけサボリに寄りました”とか。 伝言を残す上忍がいる訳ないだろ?!
変化した他里の忍びに、二人が宿にいるとバレますよ? そう言ってみたら、対木の葉の忍び用だって。
さすがエリート隙がない。 里の忍びにだけ反応して、表紙に絵が浮かび上がるようになってるそうだ。

いや、実際にいるんだよね、木の葉の上忍に変化して指圧をうけにくる他里の忍びが。 肩書きのおかげで。
あちらは俺が唯の按摩師だと思ってるからね。 話せばすぐに木の葉の忍びじゃないと分かるんだ。
そういうのも、実は俺の情報源なんだよ。 里からの指示で、偽の情報を持って行ってもらったり、な。

間違ってても怪しまれない。 本物の木の葉の忍びが雨射を使って偽情報を流させた、って事になるから。
逆に、今度里の忍びが来たらこう言っておいてくれ・・・・ とか伝言を頼まれたら、それはあっちの偽情報。
情報収集の為に雨射が草津屋に潜ってる、っていうのに。 里の上忍の飛び入りは、すっかり無くなった。
上忍に変化してくる他里の忍びも。 だってそんなのに記入したら、後から偽物だとすぐにばれるもん。

「ほほほ。 あ奴らが珍しくおねだりするから何に使うのかと思おておったが・・・・」
「はぁ?! じゃあ、あのマッサージ帳は三代目が?! もう! どこまで暗部に甘いんですかっ!」
「仕方ないじゃろ! ワシの肩揉みは容認らしいぞ? あ奴ら、少しは妥協しとるとみえる、ほほほ!」
「そういう問題じゃありませんっ! 俺達正規の忍びと、あまりにも認識が違いすぎますっ!!」

「うむ・・・・・ まあ、二人じゃからの・・・・ ヘロヘロになる気持ちも分からんでもないが・・・・」
「そこ?! 二人だからとか、そういう問題でもないでしょう?!」
「やかましいわいっ! あんな最上の忍び二人に望まれたなら、少々ヘロヘロぐらい我慢せいっ!!」

「ぅ〜・・・・ う〜・・・・・ じっちゃんの・・・・ じっちゃんの馬鹿! ハゲッ!
「 ワシゃまだハゲとらんと言うておろうがっ!! 」
「「むむむむ・・・・・・・・」」




ふう、ふう、ふう・・・・・ ちょっと落ち着こう。 俺は、草津屋から連絡が入ったと火影室に呼ばれたんだ。
草津屋から連絡、それは俺が按摩師の雨射として潜入任務に就くという事。 ・・・・なぜか今回、出張で。
雨射のマッサージは完全予約制。 火の国の温泉街 草津屋の・・・・ 知る人ぞ知る看板の按摩師。

“木の葉の忍びをも唸らせる”だから、命を狙われる事はない。 むしろ利用しがいがあると思うだろう。
その肩書きのおかげで得してた。 雨射を当てつけに殺したら、不特定多数の里の忍びから狙われるだけ。
藪を下手につついて蛇に噛まれたくない、って事だよ。 まあ、そういう恩恵の根本は暗部のおかげ、かも。

・・・・・はぁ。 やっぱそうだよな。 木の葉の暗部が徹底的に行う報復の仕方は、大陸に轟いてる。
俺が今迄無事で来られたのも、“木の葉の忍びをも唸らせる”って肩書きがあったからこそ、だもんな。
・・・・・・今更、だよ。 俺も一旦腹括った癖に、往生際が悪い。 寝て覚めたら夢じゃなかったろ?

あれからあの二人も、休暇日になったら必ず草津屋に来るし・・・・・。 凄い人達なんだよ、本当に。
とても想像つかないほどの過酷な任務を・・・・・ サラッとこなしてるんだよな・・・・・  ・・・・・。
物事はなんでも良い方に考えよう、うん。 ヘロヘロにはなるけど痛くない様にしてくれるしな・・・・・。
俺は男だ、華奢な女と比べたら遥かに丈夫。 ちょっと可愛いレッサーパンダの本性を垣間見ただけ、だろ?