香りの塔 20   @AB CDE FGH IJK LMN OPQ R




帰路の途中、色々な事を二人に聞いた。 香りの塔は、香華の国に現存するたった一つの墓標だそうだ。
香華の国の死者は皆、同じ場所に土葬される。 そう、あの苗畑に、国中の死者が埋葬されてるんだ。
大陸最高級とされる香木の苗は、誰かが作ろうと思って研究したモノではなく、偶然の産物らしい。

「麗香様は・・・・ あの塔の部屋でお休みになるのが一番落ち着くと・・・・・・」
「ウン、自分は民の命の上に成り立ってる、って知ってるんだよ。」
「民の命に抱かれながら・・・・ という事だったんですね・・・・・」

「あそこまで塔が高い理由は・・・・ 香木を保管しておく為じゃなく・・・・・」
「そう。 民が国のどこに居ても、塔を見る事が出来る様に、なんだよ。」
「どんな時も。 見上げれば、いつもそこにある訳ですね・・・・・」

これは小国だから出来る事だ。 例えば、ウチの里がある火の国では、とてもじゃないけど出来ないよ。
だって大国での一日の死者の数は半端じゃない。 脈々とその血を受け継ぐ大名家も多数ある。
やたらめったら、身分がどうのというお方も多い。 そんな事しようものなら、色々問題が起きるよ。
まあ、それが嫌なら国を出るだろうし。 この国の民はそういうのも全部、納得の上で住んでるんだね。




あの国の香木の製法は、三人だけの秘密にしょう。 まあ当然ながら、火影様には報告するけどね。
確かに悪用される危険性のあるモノだよ。 本来なら、養分を奪われるモノから逆に吸い取るなんて。
あの苗の驚きの進化を研究したら、強力な何かを生みだせる。 なにしろ食物連鎖を逆転させたんだから。

でもそうしなかった。 故松葉様がさせなかったそうだ。 香木は、我が国の民の一部なのだからと。
誰かがあの製法を知って悪用したとする。 生きた人を使って世にも素晴らしい香木を作ったら?
その時点で、あの国の民は香木を作る為の贄となる。 うん、それは絶対あってはならない事だ。

もしあのまま大葉が国の中心となってしまったら、莫大な利益を得る為の研究に着手しただろうな。
そしてそんな研究が明るみに出れば、それこそ他里や他国が血眼になって手に入れようとする。
もう、そうなったら悲惨だ。 自国を守る忍びの里もない小国、あっという間に滅ぼされただろう・・・・・。

「はぁ〜 松葉様に一目だけでも、お会いしたかったなぁ・・・・・」
「・・・・・・・・残念ながら目は閉じてたケド。 優しそうなお顔だったヨ。」
「ええ、国主の伴侶とは思えないほど、気さくな方だったらしいですね。」
「うわー 考えると俺だけですよ、お会いしてないのっ!! くそぅ!」
「「くすくす!」」

今回の事で麗香様は、謀反人や罪人は塔での埋葬を除外する方針を固めたそうだ。 それはそうだろう。
短い長いに関わらず、一生懸命、命のある限り精一杯生きた民の為にも。 そうじゃなきゃおかしい。
どうやったって良い人間だけが集まる国、なんてのは存在しない。 だからこそ線引きが必要なんだと思う。
桃井さんじゃないけど。 雨射の護衛に二人が就いてくれたのは、民を守ろうとした松葉様のお導きかもね。








三代目に、俺がお土産に選んだ香木を手渡した。 二人が勝手に約束したそうだ、頭皮に優しい香りをと。
・・・・・思いっきりツッコミを入れたよ、当然。 頭皮に優しい香りってどんなだよ! って。
そんなもんある訳ないだろ? 香華の国の土産物屋で平然とそう聞いて回る二人に、俺が適当に選んだ。
なかなかどうしてご満悦らしく、砕いて小袋に入れるらしい。 じっちゃん、結構お洒落さんなんだな。

「なに。 美智子に送ってやろうと思うての。 お揃いの匂い袋にするのじゃ。 ほほほ!」
「・・・・・・・・・へー いい年こいてお揃い・・・・ ファンシーは三代目譲りですか。」
「なんじゃ?! なんでこんなに可愛くなくなったのじゃ、お主!!」

「またまた〜 三代目、それ海野中忍が選んだんですよ?」
「ネー? “俺が選びます、文句ありませんね?!” だもんネー?」
「「三代目に対する愛情はそりゃ複雑ですよ、手塩にかけて育ててもらったんですから。」」
「ほう。 そうかそうか、分かりにくい性格になってしもたのぉ、イルカや。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・巷では、かなり分かり易いと評判ですがね。」

「時に。 今回はボランティアも同然、なにか希望の品はあるか?」
「・・・・・あ!! そうだ! まだもらってないっっ!!」
「ウン!! 三代目っ! お願いっ!! 雨射に言って!!」
「「お目覚めのキッスvv」」

「・・・・・・・・・・・・・・・お黙りなさい、そこのお偉方。」
「イルカッ!! キッスぐらいしてやらんか、ケチケチするでないっ!!」
「「 そうだそうだ!! ケチーーーーーッ!! 」」
「へーへー 俺は木の葉一ドケチ中忍ですよー だ。」

・・・・・・・・・まだ言うか。 あんたら勝手に朝、して行っただろ?! あれでいいじゃないか、もう!!
いい年こいて愛人とお揃いとか言ってる火影にしてこの部下あり、だな。 どこまでもファンシーな奴らめ!
・・・・と言いたいところだけど。 休息日を返上してただ働きしてたのは俺が一番良く分かってる。

任務報酬がお目覚めのキッスとは・・・・・ あんたら、普段どんだけ過酷な状況下に置かれてるの??
そうでなきゃ、ここまで空想の世界にキラキラしないよな? はー やっぱり暗部って、可哀想・・・・・・。
仕方ない、そんな小さな喜びを奪ったら、もっと可哀想だよな・・・・・・ ふう。 俺ってほんとアホだ。
・・・・・・・・・ちゅ! チュ! はい、これでいいですか? こんなのが任務報酬だなんて・・・・・ がはっ!!

「「 ツンデロ、キタ〜〜〜〜vv 」」
「こりゃ、こりゃ。 そこまでにしておけ、窒息してしまうぞ?」
「「 ぎゃぁっ!! 海野中忍っっ!!  息をしてぇ〜〜〜〜!! 」」
「・・・・まあ、なにはともあれ。 上手くいっとる様で何よりじゃの。 ほほほほ!」

俺の死因はきっと、セックスか圧縮かのどっちかだな。 やっぱ、もっと鍛えよう・・・・・・ ははは・・・・










後日、草津屋の俺宛てに、香華の国の国主から一本の香木が届いた。 とても上質なモノだと分かる。
草津屋の旦那さん曰く“あの時使者団の中にいた、上品な男性を彷彿とさせる香りだよ”だそうだ。



はい、今回もまだ、やっぱり勘違いしたまま終了です! この三人はこのままでもいいかもしれないw(爆) 聖