香りの塔 9
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あー 良かった。 海野中忍と部屋が別々にされちゃうのかと思ったよ。 しかしさすが国主だな。
ボク達が暗部だと知らされて驚くどころか、暗部なら何を聞いても見ても他言しないだろう、とはね。
あの香りの塔には特別な秘密が隠されてる、って事だな。 でも、香木の製法を調べに来た訳じゃない。
ボク達の任務は雨射の護衛、兼、香華の国の国主の力になる事、だから。 見ざる言わざる聞かざるだよ。
「テンゾウどう? 木の葉を出た後の松葉様の足取り掴めた??」
「それがサッパリです。 三つの内のどれがどれだか・・・・・ 特定不可ですね。」
「あの国は香木の香りで溢れてる。 頼りになる忍犬の鼻も、どれが松葉様の匂いなのか分かんないみたい。」
「ボクの木遁もそうですよ。 あらゆる木の匂いに反応しますが、ターゲットを絞り込めないんじゃ・・・・。」
ふぅ、お手上げだ。 でも一つだけハッキリ分かった事がある。 どう考えても戻りが遅過ぎるんだよ。
ターゲットは絞れないけど、香木の香りは特徴がある。 松葉様ご一行は、皆香木の香りを纏っている。
いうなれば香りつき使者団だね。 香華の国から木の葉の里まで辿ってみたけど、寄り道した形跡はない。
三つの匂いが、真っ直ぐ香華の国まで続いていたから。 ボク達が着く前に帰国しているはずなんだ。
「松葉様がどこにいるのかは分からないケド。 帰国途中で行方不明になったとは考えられないネ。」
「香り集団から一つだけ別行動したのは、草津屋に戻った使者ですもん。 松葉様じゃありません。」
「・・・・・一人の血の臭いもしないよネ。 全員の香りが忽然と消えたワケでもないし。」
「殺された形跡もない、誘拐されてもいない、という事は・・・・ 考えられるのは一つだけですね。」
「「・・・・・・・松葉様は香華の国のどこかにいる。」」
そうとしか考えられない。 けれどやっぱりあの国では香りが邪魔をして、追跡は難しいだろうな・・・・・。
ここは一旦戻って麗香様に許可を求めるしかない。 何の許可かって? 当然、喋らせる許可だよ。
他国で勝手に忍術を使えば、その国に危害を与えるんじゃないかと懸念されるから、一応承諾を得る。
まあ、暗示をかけるぐらいなら許可なんてとらないけど、カカシ先輩の瞳術は大規模だからね、念の為。
「ヨシ! 戻るヨ、テンゾウ!」
「はい、カカシ先輩!」
「「海野中忍、待っててね〜〜〜〜vv」」
ふふ、雨射は塔のてっぺんの部屋にいるらしいよ? なんだかお話に出てくるシュチュエーションですね!
閉じ込められているお姫様を助ける王子様、とか!! まあ、雨射はお姫様じゃなくて按摩師だけど!
恋人がいる塔のてっぺんを目指す、なんて・・・・ どうにもこうにも活力がみなぎりますよ、先輩vv
ああ、話が分かる国主でよかった! 忍術解禁だって!! そりゃそうか、伴侶の無事がかかってるんだから。
国外での誘拐や強盗の可能性はないと報告したからか、麗香様はあからさまにホッとしていたけど。
・・・・・でもぬか喜びをさせる訳にはいかないからね、事実も伝えた。 かなり前に国へ戻ったはずだ、と。
状況から導き出された報告を聞き終えた麗香様の固く閉じた唇に、国主として最悪の事態への覚悟を見た。
かなり前に帰国しているはず・・・・ その事実は考えたくない事も、想定に入れなければならないから。
国外で誘拐や強盗にあわなかっただけで、国内でのその可能性は消えた訳じゃない。 それよりも・・・・
今現在、身代金の要求が来てない、傷害事件が起きていないなら。 当然、死を想定して然るべきだ。
生きていて欲しいと願えども口に出して言えない。 どの国も国主とはこういうものかと、少し同情する。
ウチの国主や三代目もポーカーフェイス。 自分が動揺すれば兵や民が動揺すると、知っているからね。
ツンデロの雨射がめちゃめちゃ可愛く思えるのは、こういうのをたくさん目にしているからかもしれない。
「なんか、遠慮なしに言いたい事言ってくる海野中忍って・・・・・・」
「ウン、貴重だよネ、ホント。 心に触ってるみたいな気になるよネ。」
「全くです。 今日の一回を使っちゃいましょうよ、先輩っ!」
「賛成っ!! 塔のてっぺんまで壁を駆け登るぞ、テンゾウ!」
「「雨射ちゃ〜〜〜んvv 今行くからね〜〜〜〜vv」」
一杯ハートマーク飛ばして、一気に香りの塔のてっぺんまで駆け登った。 コツコツと出窓をつつく。
ボク達の海野中忍は何をしていたかと言うと、ソファーに寝そべって本を読んでいた。 開・け・てv
今、思いっきり寛いでたね? とかは言わないから安心して。 慌てて海野中忍が出窓を開けてくれた。
ぉおー お待ちしていましたわv って感じですね、カカシ先輩っ!! 王子様になった気分ですよ!
「お待ちしていました!! 凄い事が・・・・ ごふっ!!」
「「わーーーーいっ! 雨射姫〜〜〜〜vv」」
「・・・・・ギ・・・・ ギブ、ギブッ!!」
「「あ、ごめんゴメン、つい・・・・・。 想像通りに迎えてくれたからvv」」
「・・・けほっ! お二人にお話があって・・・・」
「ンー 海野中忍から、とってもイイ匂いがするヨ?」
「あ、ホントだ! これって、この国の香木の匂い?」
「・・・・ほっ! そうです、その事でお二人にお話があります。」
「「 え〜〜〜っ?! 一日一回の権利の行使は!? 」」
「・・・・・・・・・。 マッサージは話の後で、ですっ!」
「「ちぇ! さすがツンデロ、まだオアズケか。」」
「・・・・・・・はいそうです、すみませんね。 ( なんだツンデロ、って。 またも謎の認識を?! ) 」
恋人達の甘い時間を満喫するはずが、海野中忍はボク達に話があると言う。 もうっ! 待ってた癖に!
どうやら香木の製法を調べちゃったらしい。 まあ、麗香様も来ず、他にやる事もなかったみたいだし?
雨射は、塔の中での行動は自由だといわれているからか、ウロチョロしてみたんだろうこの塔の中を。
まあ、仮にも中忍なんだから、塔の中の兵に見つかるよううなヘマはしてないだろう、とは思うけどね?
でも海野中忍はここでは雨射なんだから。 そりゃ確かに軟禁されてる様な気になるかもしれないけど・・・・・