狼達の晩餐 1
ABC
DEF
GHI
JKL
MNO
PQR
*このお話には 原作と違う生き方をしたリンが登場します
ふふふ、馬鹿な男達。 私に夢中になって、殺し合いまでしてくれる。 これがクノイチの醍醐味。
私が泣いてお願いすれば、どんな男達も思いのまま。 涙も唾液も愛液も、全部がクノイチの武器。
私から分泌される液体には、麻薬の様な中毒性がある。 男は欲しくてたまらなくなり、狂っていく。
私は親の顔を知らない。 初潮もまだこないあの日、気が付いたら養父を名乗る男に犯されていた。
この世は弱肉強食の世界で、力を持たない私が生きていく為には、何をするべきなのかを悟った。
第三次忍界大戦後、物資が乏しい世の中。 ただ男を喜ばせる事だけが、私の生きるスベだった。
でもそれを変えてくれた人がいる。 そんな生き地獄の中から救い出してくれたのが、忍びの隠れ里。
クノイチという忍者にならないか、お前の目線ひとつで男をどうとでも出来る、そういう忍びらしい。
その神の啓示にも似た誘いに震えた。 私の中にあったのは、世の男に対する憎しみだけだったから。
そうして私はクノイチになった。 今では本当に、目線ひとつで男を意のままに操る事が出来る。
「・・・・・影を殺してほしいの。 私の為に・・・・・ ねぇ、やってくれる?」
「なんとかしてやりたい・・・・ だが、おれでは無理だ。 ならいっそ、お前と一緒に・・・・」
「・・・・・そう。 だったらもう用はないわ、次を探すから。 悪いけど、一人で死んでくれる?」
「一人で・・・・・ わかった、お前がそう言うなら。 一人で死ぬよ・・・・・ ガハッ!」
首を突いて一人で勝手に死んでくれたこの男は、木の葉隠れの暗部。 私の指示に抵抗を示すなんて。
忍びが心中だなんて笑わせる。 別にあなたじゃなくてもいいわ、暗部の隊員は他にいくらでもいるから。
私の指示には、例え出来そうもない事でも、やってみようとするはず。 即答で否は、あり得ない。
どういう事? そんなに・・・・ 強いの? あなたが心の底まで屈服するぐらいの・・・・ 忍び?
人見〈ひとみ〉の里のクノイチとして、たくさんの男共を葬って来たけど・・・ この気分の高揚は何?
馬鹿な男達の死に際の顔を見るよりも・・・・ その忍びの苦しむ顔が見たいなんて・・・・・。
こんな忠誠心を持った組織の隊員の死は、そのまとめ役である忍びを、何よりも追い込む事になる。
ウチの里に話を持ちかけたのは、木の葉隠れの忍び。 影暗殺の密談だ。 見返りは凄腕の上忍二人。
「ふふ、ふふふ・・・・・。 これは凄く面白い事になりそう。 何人の隊員が死ぬのかしら。」
私を救ってくれた長の治める人見の里は、クノイチの里と言っていい。 だから武力では他里より劣る。
ならどうするか。 大陸でも有名な、それこそビンゴブック級の忍び達に、この里を守らせればいい。
なにも男を全部殺す訳じゃない。 使い道のある忍びなら、そのまま生かして里に置いている。
私達の言う事なら何でもきく忍びだから。 皆、侵入者には容赦しない、最高の防犯センサーなの。
ふふ、不思議ね。 そんな扱いなのに、桃源郷だと夢を求めて、抜けてくる忍びもいるぐらい。
男達からしたらハーレム状態。 同じ里の飼犬なら、いい思いをしたい・・・・ そんなトコかしら。
でも長はシビアなの。 使えない忍びは始末する。 里に在住してるのは、そんな長が認めた男達だけ。
これは他里にとってもメリットの様で、ビンゴ級の忍びを生け捕りにしたら、必ずウチに連絡が来る。
高額で買い取るから、当然なんだけど。 けど今回はお金じゃなく、暗殺任務という形での密談。
ウチの里には強い忍びが揃っているから、滅多な事は出来ないの。 自分が帰れなくなるでしょう?
密談に来た男は、その辺りをちゃんと心得てて、見返りにふたりの腕利きの上忍をくれるらしいわ。
「ふふ、同じ里の忍びから殺したいと思われていたり、直轄組織の隊員に心底慕われていたり。」
忍び五大国の隠れ里は、あまりにも大きすぎて統率がとれていない。 国に縛られるなんて御免だわ。
その一番大きな里の影を暗殺する、それは並大抵の事じゃないけど、縛られない私達になら出来る。
将を射んと欲すればまず馬を射よ、そう言う事。 どんな忍びの長でも、直轄部隊には隙を見せるから。
え? どうしてウチの里の忍びを使って暗殺しないか? ふふふ、守備を弱める事になるじゃない。
それにウチの里にどの忍びが揃っているのか、他里は把握しているから。 足がつくでしょう?
いくらなんでも、忍び五大国の隠れ里と正面きってヤル馬鹿な里は、この世には存在しないわ。