狼達の晩餐 2   @BC DEF GHI JKL MNO PQR




私達、人見の里のクノイチは、少しづつ毒に慣らしていく。 中毒性があり暗示の効力が強い毒。
だから体液は、上物の麻薬と同じ。 それを得る為には、どんな事でもしてしまう様になる。
私の指示が自分の最優先、そう脳がすり替えてしまうだけ。 私の声が、自分の思考であるがごとく。
けど、声に抵抗する思考が残っていては、すり替えられないの。 心の底まで敬服してたり、ね。

今ではこうして自由に男達を操る私でも、最初はミスもしたし、危ない事だって何度かあったわ。
完全に末期症状だと思えるまで、たっぷりと惜しみなく私を与える、そのタイミングを掴むまでは。
何の疑問も持たなくなる。 私の声に従い、従順な操り人形にできた、と私が完全に思えるまで。

私を充分与えてから指示を出すから、今回の様な事はまれ。 麻薬中毒の末期患者が薬を否定する?
自決するのは出来ても、影は暗殺できないの? 人の心の奥底にまでは入りこめない、例え私達でも。
もう大丈夫だと思って指示を出したのに。 ふふ、でもおかげで、忘れていた気分の高揚を味わった。
クノイチとして・・・・ 相手が死ぬか、私が死ぬか。 命の駆け引きを楽しむ、この高揚感を。

「誰かっ!! 誰か助けてっ! 早く・・・・ お医者様を呼んでっ!! 女将さんっっ!!」

今私が潜伏しているところは、火の国の花街のたつ屋。 私達の感知は不可能、忍術は使わないから。
一般人の遊女として潜伏、不幸な生い立ちの儚い女。 同情して買ってくれる木の葉の忍びが大勢いる。
暗部の隊員と普通の忍びを見分けるのは簡単。 他の忍びの態度を見ていればいい。 一歩引くから。
火影の直轄部隊だからと、他の忍びは暗殺戦術特殊部隊の隊員を、特別視してる。 だからバレバレ。


「蜜葉〈みつば〉 どうしたんだい?!  !!!! これは・・・・!!」
「止まらないの、血がっ! 彼を・・・・ 女将さん! 彼を助けてっっ!!」
「・・・・・・・蜜葉。 さ、手をお放し。 もう手遅れさ・・・・ この男は死んだんだ。」
「うぅ・・・ うっ・・・・・ 女将さん、まだ温かいの・・・・ 嘘、こんなの、嘘よっっ!!」

たつ屋の女将が入って来た。 血溜まりの中、彼の首を押さえて固まっている私の手をそっと外す。
もう手遅れなのは私が一番知っているわ。 だってそう指示を出したんですもの、死んでね? って。
木の葉の暗部は腕に炎の刺青がある。 それを見た女将さんが、木の葉の忍びだとすぐに分かる様に。
贔屓の上客を死なせてしまった遊女。 その客が木の葉の忍びなら、里に差し出されるはずだから。

「! この客は木の葉の暗部じゃないか! まさか他里の忍びに?! お前、木の葉に報告出来るかい?」
「・・・・忍びじゃないの。 私が身請けを断ったから・・・・・・ 私のせいなの・・・・・。」
「蜜葉、身請けの話が出ていたのかい・・・・ 何度でも・・・ 信じてみればよかったのに。」
「忍びは・・・・ 先が見えない、から・・・・・ でもこんな事になるなら、うぅ、うっ・・・」


そうなの。 筋書きはこうよ? 身請けをしてもらう度に、その相手と死に別れた来た遊女。
自分を身請けすると男を不幸にしてしまう、そう思い込んでいる馬鹿で臆病で幸薄な女、蜜葉。
人の死はお前のせいじゃない、そう言って自ら命を絶った男。 私の記憶に永遠に残る為に・・・・ね。
どこにでもある遊女と客の身請け話だけど、相手が木の葉の忍びでは、唯じゃ済まされない。

「・・・・蜜葉。 幸せはすぐそこにあったのに・・・・・。 臆病で馬鹿な子だよ・・・・。」
「うぅ・・・ 女将さんっっ! うっ、あぁーーーーっっ!!」
「すまないね、これは火の国の花街の決まりなんだ。 お前を木の葉に差し出さなくちゃならない。」
「・・・・・はい。 覚悟は出来ています。 今すぐ後を追いたいけど、せめてお詫びを・・・・。」

知ってるわ? だから発見してもらったんだもの。 だって彼が暗殺出来ないって言うから。
次を見つけるしかないじゃない。 私を連れに来た忍びを誘惑して、新しい手駒にする為にね。
暗部の結束力は強い、連行しにくるのは同じ暗部のはず。 さあ、私の張った蜘蛛の巣にいらっしゃい?

連れに来た時に、死体と交わっている女を目にすればいい。 暗部の隊員に身も心もささげた女を。
血にまみれ愛を囁く。 もう少しで一緒になれると、泣きながら腰を振る蜜葉に、欲情すればいい。
それが忍び、暗部なら。 生死が切なく交わるそんな光景を目にすれば、たまらなくなるわよね?
同じ忍びの心理を知りつくしているの、だって私はそうやって生き抜いて来たクノイチですもの。

次はどんな男かしら。 ふふ、私が死ぬか、あなたが死ぬか。 さあ、勝負しましょう?