狼達の晩餐 4   @AB DEF GHI JKL MNO PQR




「カカシ、後は歩いていく。 ・・・・悪いけど・・・  ふたりにしてくれる?」
「・・・・・・分かった。」
「ふふ、我儘を聞いてくれて、ありがとうね。 ・・・・・・オビト、お待たせ。」
「・・・・・・。」

リンの病状が悪化した。 自分の体を使って解毒薬を開発していたミナト班のもう一人の生き残り。
その体はもうボロボロ。 彼女のおかげで、大蛇丸が研究していた毒の、全種類の解毒剤が完成した。
全ては里の為。 大蛇丸がその毒を散布しに来てもいいようにと、自ら被験者となった医療忍者。

三代目の愛弟子の大蛇丸は、様々なモノを研究をしていた。 忍術も、禁術も、毒も。
ヤツが里抜けしてから数年後、九尾が里を襲う。 里は壊滅状態、えぐれた山肌からそれが出た。
未発表の毒の研究書類。 研究をしていたという事は、すでにヤツの頭に入っているだろうモノ。
リンはその時それを発見し、そのまま毒の解毒研究を始めた。 迅速で成果がすぐに解る己の体で。

「こんな研究をしてたなんて言ったら、オビトは怒・・・・・  リン?  リンッ!!」


まさか! 今朝病状が悪化したから、まだ自分で歩けるうちに慰霊碑に来たい、そう言ったリン。
いずれ訪れる死も甘受しているような笑みだったから・・・・ 諦めるな、そう言って付き添って来た。
そして今、気付く。 あの笑みはいずれ訪れる死ではなく、死を前に覚悟を決めた笑みだったんだと。
ナゼ気付かなかった?! ・・・・・リンは医療班の連中も一目置くチャクラコントロール、当然だネ。

「 騙されちゃったネ。 お前、オレの事好きだって言ったでショ、ずーと前にサ・・・・・
  ・・・・・・コレって、惚れた男に対する仕打ち・・・・なの? ふざけるな、リンッ!! 」

リンは里の誰にも死の気配を悟られる事なく、オビトの慰霊碑に寄りかかったまま、静かに逝った。
今度は、ボロボロになった自分の体を治療する為の研究をするわ、そう言って笑ってたよネ?
さすがに現場には出れないかもしれないわね、でも引退なんてしないわよ私は・・・・ ってサ。
あの時フッた仕返し? お前までオレを置いていくの? ナニも言わずに? オレの目の前で?!

「ふざけるな、リン! ふざけんな・・・・ヨ ・・・・オレ、そんなヒドイ事、お前にした、の?」

オビトに言われた通り、リンを見てきたつもりだった。 オビトに代わって見守っているつもりで。
まただ。 父さんが死んだ時も、父さんの変化を見つけられずに、みすみす死に追いやった。
オビトの時も、ミナト先生の時も・・・・・ 今、またそうやって、リンも・・・ 自分勝手に死んだ。
誰にも止められない、本人が止められる事すら望んでいなかった死を前にして、オレはただ脱力した。

オビトの慰霊碑へ寄りかかっていたリン、全てやり尽くしたと自己満足した笑みを、オレは忘れない。





それから何年か後、オレはうみのイルカに出会った。 要注意の敵忍がいて、暗部が呼ばれた戦場で。
土の国の国境付近で、ソイツを含む岩隠れの小隊と睨み合っていると。 到着すると状況が変わってた。
昨日敵の部隊が増援部隊と合流したらしい。 オレ達の仕事がもうひと手間増えた、というコトだ。

暗部から部隊長の、テンゾウとオレのふたりが援護しに来た。 問題の忍びと対峙する為にネ。
オレ達がソイツの相手をしている間、陣を張っている本隊が残りの忍びを叩く、それでイケるでショ。
交戦部隊 隊長のカジキ上忍の天幕で、そう話していた時だった。 出会ったんだ、イルカに。


「入ります! あの隊長、昨日の話なんですが。 俺・・・ 身内いないんで、潜って来ますよ。」
「おお、海野中忍か。 いや、その話はナシだ、ありがとな。 もう暗部が到着したから。」
「「・・・・・・。」」

海野と呼ばれた中忍が見せた微笑みは・・・・ あの時の記憶が鮮やかに甦る、リンの笑み。
この中忍、死ぬつもりなの?! リンがみせた様な頬笑みで、敵後方部隊の偵察を申し出た中忍。
どんな忍びが増援に来て、補給物資は何だったのか、あらかじめ分かっていれば戦いやすい。
敵の後方部隊を偵察する為に、直接後方陣営に潜ってくるという。 身内がいないからナニ?!

「!!! 暗部!! 到着してたんですね、気がつきませんでした、失礼しました!」
「・・・・・確認したいんだケド。 アンタさ、最初から死ぬつもりなの?」
「カジキ上忍、ボク達が来ると知っているのに立てた作戦なら、許しませんよ?」
「いや、こんなに早く援護が来るとは思わなかったんで、探れるだけ探っとくか、的な話を・・・」


この隊の隊長が言ってるのは、正しいようだ。 海野イルカはその話を聞き、自分から申し出たらしい。
全てに勝手にキリをつけて笑っている様に見えた。 敵陣営の偵察で命を懸ける? ふざけんな!
そんな話が出ただけで、昨夜の今朝で、自分の命を手放すのか?! オレはそんなイルカに腹が立った。