狼達の晩餐 12
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暗部の待機所で先輩と検討していた。 何をって、獰猛な猛禽類からひ弱な兎をどう守るか、だ。
なんでも、イルカが仲裁した猿部隊の隊員が殉職、そろそろ自害事件のほとぼりも覚めた頃だろうと。
ソイツが匿っていた遊女を探し出して狩る、とかなんとか。 是が非でも部下の墓に入れたいらしいよ。
アズサさんにしてみれば、一度引き下がったからそれでもう良いだろう、という事なんだよね。
アズサさんの気持ちも分かるけど、せっかく間に入ったイルカを上層部にアピール出来たのに。
暗部内の調和をとるという面で重視されているなら、良し。 イルカには嫌な事だろうけどね。
そうやって里の上層部に重要視されればされるだけ、戦闘部隊に組み込まれる可能性が低くなるから。
イルカを失いたくないボク達にとっては、喜ぶべき事なんだ。 もちろん、これはイルカには内緒。
だからなるべくならイルカの顔を立ててやりたい。 上層部へのPRにもなる事だしね。
あの気性の荒い肉食の猛禽類から、か弱い兎を守る方法。 アズサさんの目から女をどう逃がすか。
カカシ先輩、いくら考えても・・・・ 無理かもしれないですね。 相手が相手だけに・・・・
表向きはイルカの顔を立てた、という事にして・・・・ 黙認しますか。 国外でなら発覚しませんよ?
ならイルカには少しの間、集中できる何かを与えた方がいいですね、暗部の動きを気取らせない様に。
・・・・アカデミー職員? ああ、人員を増やすって言ってましたっけ。 研修か・・・ いいかも。
「カカシ、テンゾウ、そろってるな、丁度いい。」
「お疲れ、カオル。 なーに? オレ達にナンか用??」
「ちょっとお前らの情人、貸せ。」
「カオルさん・・・・ それ、本気で言ってます?」
思わず殺気立ったボク達に、猿部隊長のカオルさんが“ん? そういう意味じゃない”と言った。
じゃぁ、どういう意味なんだ! 全く・・・ この人は時々、肝心要の主語が抜けるから紛らわしい。
普通、情人を貸せと言われたら、味見をさせろっていう意味だと思うだろう? どうなんだ、それ。
ああ、カオルさんにも知らせておきますが、ボク達、酉班部隊長の行動を黙認しようと思っています。
で、イルカには、少しだけ暗部と距離を置いてもらおうかな、と。 丁度アカデミー職員の研修が・・・・
・・・・・へ? アズサさんの事・・・・・? カオルさんの用事とこれ、関係があるんですか??
どういう事でしょう? あなたいつも最初に重要な事を言わないから、わかりにくいんですよ。
「・・・・・仕組まれている。」
「「??」」
「今さっき知らせを受けた。 おれの部下が死んだ。 おかしいと思わないか?」
「アズサんトコの部下は自害でショ? んで、カオルんトコのは殉職だよネ?」
「木の葉の忍びは・・・ 無茶な特攻はしない。 違うか?」
「・・・・・・違いません。 特に暗部の個人行動は厳禁としています。」
聞けば猿部隊の隊員が、また死んだらしい。 それもかなり無茶な特攻をして。 猿部隊から二人目。
最初の一人が死んで一週間しかたっていないのに、同じように無茶な特攻をかけて殉職したしそうだ。
仕組まれている? ということは、酉部隊も入れて三人の隊員の死に・・・・ 繋がりがあるとでも?
「・・・・・まさか。 同じ遊女が関係してるっていうの?」
「最初のふたりは分かりますよ? 同期で仲良かったし・・・・」
「・・・・・・・・・多分。」
「ナニそれっ!! タダの勘なの?!」
「だからお前達の情人から話を聞きたい。」
「でもイルカは、遊女本人には会っていませんよ?」
確かに暗部の隊員が、突然無茶な特攻をかけて二人も死ぬなんておかしい。 というか、あり得ない。
でも暗部の隊員が暗示や洗脳にかかるなんて事は、もっとあり得ない。 これは・・・・・ 手紙??
え、戌班の隊員が預かったんですか? で、猿部隊長に渡した方がいい、とカオルさんの元へ持って来たと?
なるほど。 そういう手紙なら、遺書みたいなモノでしょう? ボク達が読んでもいいのかな・・・・
「ん? ・・・中は見るな。 ・・・・宛名だ。」
「だから! カオルは主語がぬけてるのっ!!」
「 “蜜葉へ” ・・・・これが??」
「よくある遊女の源氏名だろ、どうみても。」
「・・・・・・よくあんの? 冷血男のくせに、源氏名は覚えてんのネ?」
「・・・・・・さあ?? 源氏名しか覚えないのかも、お金払う訳ですし。」
「・・・・・・・どこの遊郭にも一人はいるぞ?」
「「・・・・・へ―――ぇ。」」
カオルさんの勘は当たってるかも・・・・・ 確かに引っ掛かる。 イルカにそれとなく聞いてみるか。
もしイルカが遊女の名を覚えていて、同じ蜜葉という名前なら。 同一人物の可能性が高い。
忍びは裏の裏を読め。 木を隠すなら森へ。 こういう場合、よくある名前というのがかえって怪しい。