狼達の晩餐 2   @AB CDE FGH IJK MNO PQR




「海野イルカ、顔貸しとくれ。」
「・・・・・あ・・・・れ?! 酉部隊長??」

「イルカや、呼んでおるぞ? ご指名じゃ。」
「そ、そんな、火影様ぁ。 ・・・・・お、俺ふたりの情人だし、ボコられませんよね? ね?」
「大丈夫じゃ、それはワシが保証する。」
「・・・・・じゃ、ちょっと・・・・ 抜けます・・・・」

「三代目・・・・ イルカの奴、何かやったんですか?」
「なに、クッションの役目をしてもらっておる、心配はいらん。 ほほほ。」
「「クッション?? ・・・暗部の??」」





さっきカカシ、テンゾウ、カオルが、アタシに会いに来た。 アタシをなだめる気かとイラっとしたが。
あんたらの情人の顔は、一度立ててやったろう? これ以上アタシのヤリ方に干渉するんじゃないよ!
そう言ってやろうかと思っていたんだ。 でも思わぬ事を頼まれた。 安心させてやれ、と。

「すまないね、受付の途中で抜けてもらって。 あんたに謝らなきゃならない。」
「ア、アズサさん? 謝るって・・・・」
「あの遊女を生かしてやれた、アイツの記憶と一緒に。 あの時は頭に血が上って、すまなかったね。」
「・・・・・アズサさん。 はい、彼女が生きてる限り、彼女の中で彼も生き続けると思います。」

これでいいかい、カカシ、テンゾウ。 アタシがこう言ったらイルカは安心する、そうなのかい?
アタシんトコの部下が自害した遊郭での騒動。 裏があるかもしれない、勝手に動くなと言われた。
もしそうなら、イルカを巻き込みたくないからと。 追求しなかった自分を必ず責めるとも。
あの件を丸く収めたという形にして、イルカの目を暗部の動向からそらして欲しい、と。



女の記憶に残りたい、それがアイツの最期の願い、か。 まるで自分のコトの様に言うんだね?
・・・・・フン、なんて顔で笑うんだい。 アタシにそんな羨望の眼差しを向けるのはやめとくれ。
これはカカシとテンゾウに頼まれたから、仕方なく言っている言葉なんだ、お門違いだよ。

今のアタシの頭ン中、見せてやりたいよ。 もし今回の騒動に裏があるなら、黙っちゃいない。
カオルんトコの部下が二人死んだそうだ。 その内の一人は、アタシに頭を下げに来たヤツらしい。
アイツと同期だった親友、アイツの惚れた女を友に誓って大切にするからと、アタシにそう言った。
そして今また、猿部隊のヤツが死んだ。 もしかしたら、同じ遊女と繋がっている可能性があるとか。

カカシやテンゾウがあんたを思うのとは違うが、アタシは部下が可愛い。 よくブン殴るけどね。
自分勝手に死んだ男の為に、アタシの部下の為に、親身になってくれて・・・・ ありがとう。
・・・・・・カカシとテンゾウに頼まれて本意じゃなく謝ったが、お礼は本心から言っておくよ。


だからこれはアタシからのお礼だ。 そんな優しいあんたを見つけてきたカカシとテンゾウに。
アイツら、後であんたから聞き出すとかなんとか言ってたけど・・・・・ フン、どうだかね。
かえって気にしちゃうんじゃないかい? 今さら何でそんなコトを聞くのか何かあるのか、ってね。
だから名前は、この件に関わりがあるアタシが聞くのが一番自然だ、そうだろう?

「そんな、アズサさんの気持ちを思うと・・・・ どんなに我慢されているか想像も出来ません。」
「アハハ、もう落ち着いたよ。 ところで一つだけ頼みがあるんだが、聞いてくれるかい?」
「わ、緊張するなぁ、なんでしょう? 俺で出来る事ならなんでも。」
「アタシは、今まで殉職した部下の位牌を部屋に置いてるんだ。 で、もしよかったら・・・・」

部下が心底惚れた女の名を、位牌の後ろに刻んでやりたいんだ、覚えているなら教えてくれないか?
アッチはまだ生きてる人間だし縁起が悪い、だから・・・・・ これはここだけの話にしておくれ。
別に無理に調べてくれとか言わないよ、字なんてどうでもいい。 もし覚えているなら、でいいんだ。

・・・・・・ “みつば”というのかい。 蜜葉、アタシと違って随分可愛らしい名前だねぇ?

「・・・・これで、少しはアイツも淋しくはないね。 本当に、ありがとう。」
「や、やめて下さいよ、俺、間に入って居心地悪かったんですから・・・・・」
「アハハ、そうかい。 じゃぁ改めて・・・・ すまないね、イルカ。」

「う〜 もっと居心地悪いので、謝まるのはナシ! ・・・・で、お願いします。」
「アハハハ、了解。 イルカ、またアタシらが暴走しかけたら、ストッパーになっておくれ?」
「それ、俺じゃなくて、カカシさんとテンゾウさんの力でしょう? なんだかなぁ、ははは。」

いや、本心からお礼を言わせたのはイルカ、あんたの力だ。 あんたの記憶の中でも部下は生きてる。
それが・・・・ アタシは嬉しいのさ。 覚えててくれるだろ? アタシのこんなバカな部下でも。
最後に謝ったのも本心。 すまなかったね、と言わなかったのは、これからあんたに嘘をつくからさ。

部屋に位牌を置いているけど、位牌に名を刻むコトはしない。 本物をあの世へ送るつもりだからね。