狼達の晩餐 17   @AB CDE FGH IJK LMN OQR




ふふふ、いらっしゃい。 臆病なあなた。 本当にいつもその姿を見せるだけで帰ってしまうのね。
そう言えばあなたは、最初から暗部の面を外してやって来た。 そこまで信用してくれて嬉しいわ。
仲間が囲っていた女、それだけでこんなに信用するなんて。 本当にあなた達はおめでたいのね。
仲間もその女も大切にする、そんな結束力のおかげで私は動きやすい、感謝しなくちゃ。 ふふ。

いつも私に、まだおれは生きているぞ、そう言いに来るあなた。 でもそれも今日で終わりね。
だって部屋に入ってきてくれたもの。 ふふふ、もっと私の事を知りたくなったの? 嬉しいわ。
暗部の男達はまるで狼のよう。 一度その懐に入れてしまうと、それまでの警戒が嘘のようになくなる。

一度私の涙をその指に受けたのよ? 私の事が、気になって気になって仕方がなかったでしょう。
私の顔を見なければなんだか落ち着かない、そんな気分になったはずよ。 やっと行動に移したのね?
臆病者のくせに随分警戒していたあなた。 ああ、失うのが怖くて? だから臆病なのね、ふふふ。
そういう男は、落ちたらもの凄い激情を見せてくれる。 さあ、覚悟を決めたあなたを見せて?

「お前に土産を持って来た。」
「あなたの姿を見れるだけで安心、他には何も望まないわ・・・・・」
「気に入ると思うぞ、開けてみろ。」
「これ以上、私に関わらない方がいいわ。 あなたに死が・・・・・」

まあ、何を買ってきてくれたの? 最初の彼のように指輪? それとも次の彼のようにかんざし?
あなたが手紙を預かったという彼は、紅だった。 どうして自分のものをつけさせたがるのかしら?
その心理は征服欲なの。 物で人の心をどうこうしょうだなんて、やっぱり男は低俗な生き物だわ。
人は皆、欲しいものは自分で手に入れるの。 ふふ、あなたも自分で手を伸ばしてみて? 私に。

「ふっ。 ・・・・・・おれが開けてやろうか?」
「どうしてそこまでしてくれるの・・・・? これではまるで・・・・・」
「そうだな。 ・・・・こんなのはおれの性に合わない。」
「・・・・私の為に、なのよね・・・・ ごめんなさい ・・・・ありが、とう。」

警戒心の強い相手との駆け引きは面白い。 毛を逆立てている獣を大人しくさせる醍醐味を味わえる。
せっかく楽しかったけど、ここが引き際。 これ以上焦らしたら、臆病な彼はまた警戒するもの。
ふふ、ありがとう、この大きさは花瓶? それとも香炉? どんな物でも泣いて喜んであげるわ。
なあに? 無表情のあなたが、そんな目をして。 私がどんな反応をするか、そんなに気になるの?



「 !!! ・・・・・・まさかっ! 長っ!! どうしてっっ!!!
「 “楽しかったわね” お前への最期の言葉だ。」
「ぁぁ・・・・・ あぁあああああっっ!! よくもこの方をっっ!!!
「・・・・・・ふっ。 その目。 憎悪、軽蔑・・・・・ それがお前の本心か。」

あの生き地獄から私を救ってくれた長、あなたの為なら私はどんな事でもした、あなたの為なら・・・・
男を操る方法を教えてくれた、男を殺す楽しみを教えてくれた。 長、あなたが私の全てだった。
腕の立つ木の葉の上忍が二人、あなたが治める里の為に、私はどうしてもその男達が欲しかった。
あなたが治める里がもうない? 私がしくじったから? それでも楽しかったと、そう言ってくれたの?


美しい髪と瞳、生前と変わらないその長の首を抱きしめた。 火影様、私の、私達の負けですね。
長の首を抱きしめ自害しようとした私のこめかみに、男の手が伸びる。 冷たい指先が触れた。
あぁ・・・・ 寒いわ・・・ 指がガタガタ震えて自害の印が組めない・・・ 何をしたの?

私の張った蜘蛛の糸。 いつの間にか凍らせて切ってしまっていたのね。 忍びは騙された方が負け。
木の葉の暗部は四部隊で構成されている、それぞれの班の部隊長は、戌・猫・猿・酉の四人。
暗部に一つしか存在しない面、その面を着けた忍びのいる部隊には近寄るな、そう言われている。
とても強い忍び達、その内の二人が貰えたはずだったのに・・・・ ?! 面・・・・ を??

「・・・ふふふ。 あなたが・・・ 面をつけてこなかったのは・・・ 部隊長だから、だったのね?」
「そうだ。 手紙を預かった隊のヤツが自己判断せず、おれに届けてくれた。」
「そうだったの。 ・・・・残念だわ。 本当なら・・・ 部隊長、あなたが・・・ 貰えたのね。」
「ん? 違うぞ。 それはおれよりずっとタチが悪い、アイツらの事だ。」

あなたは・・・ 氷遁使いなのね。 木の葉にあって氷遁を操る男・・・・ カオルさんね?
ふふ、正解? なら、もらえるはずだった男は、カカシさんとテンゾウさんだったのね・・・・。
なにも驚く事はないわ、そのぐらい他里の常識よ? あなた達のいる隊には、近づくな、って。
あのふたりはあなたよりタチが悪いの? ふふ、残念だわ、そういう獣ほど飼い慣らしたかったのに。


「もう身動き出来ないか・・・ ならここまでだ。 お前はアズサの獲物らしいからな。」
「・・・・・・・・・そう・・・・ なの。」
「蜜葉、よくある遊女の名だ。 お前は上手く潜り過ぎた。」
「・・・ふふ・・・・ あり・・・が・・・と。





「ちょいと、森の宿ってのはここかい?」
「これはこれは。 窺っております、暗部の方が訪ねて来たら、小鳥の間に案内するように、と。」
「そうかい。 じゃぁ、ご主人。 小鳥の間の女を連れていくよ、迷惑かけたね。」
「なにをおっしゃいますやら。 里のお役にたてるなら、いつでも手前どもの宿をお使い下さい。」