狼達の晩餐 10
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「・・・・・で? まだ話の途中だヨ?」
「うっ・・・・・ ぁ・・・・・ はぁぁ・・・・ あ、あ・・・・」
「イルカ。 ちゃんと話さなきゃ。 ほら。」
「あ・・・・・ それ・・・・・・ で・・・・・ はぁ・・・ うぅ・・・」
さっき火影室で会ったアズサが、ものスゴイ目で睨んできた。 聞けばテンゾウもそうらしい。
すれ違った時に、ジロリと睨まれたと言っていた。 部隊の違うオレ達ふたりが同じように睨まれる。
それはつまり、オレ達に共通するナニかが気に入らない・・・・ というコト。 十中八九イルカだ。
アズサが我慢する、オレ達に文句があってもナニも言わず睨むだけなんて、それしか思い当たらない。
アズサを怒らせるようなコトをイルカがしたなら、オレ達が話をつけておかなくちゃ。 でショ?
部隊長同士がギクシャクしていたら、隊員が何事かと心配する。 だから趣味と実益を兼ねて詰問中。
実はイルカを焦らすのは楽しい。 他人の快楽に溺れる様が楽しいなんて、イルカぐらいだヨ。
「いつも言ってるじゃないの。 暗部内でナニかあったら、オレ達に話なネ? って。」
「ぅ・・・・・ あぁああ・・・・ 三代、目が・・・・ ぁ、ぁ・・・・ んん・・・・」
「・・・・まさかその遊女を、逃がしてやれとでも?」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・・・ あんん・・・・・ そう、です・・・・・ 俺は・・・んっ!」
アー なんとなく読めた。 アズサのコトだ、自害した部下の慰霊碑に遊女の首を供えたかったんだろう。
アイツ、部下にだけは妙に甘いというか・・・・ そんなトコだけヘンな母性本能? があるんだよネ。
イルカが待ったをかければ、アズサは黙認するしかない、か。 三代目に利用されちゃったねぇ。
フフフ、それってどういうコトかわかる? イルカはオレ達の起爆剤だと里が認めてる、ってコト。
「そっか。 じゃぁ、間に入って嫌な思いしてきたネ? ん・・・・」
「はぁ・・・・・ あっっ!!!! そんな・・・・ こと、は・・・・ ふぅっ ぅ・・・・」
「猿部隊の隊員も、矛先がイルカに向いて、多少なりとも気が楽になったのでは? ふふふ。」
「あん・・・・・ 友に・・・ 誓うって・・・・ ん・・・・ 大切に・・・ はっ、ぁ・・・」
イルカと溶け合うと気持ちが良い。 体の汚れが洗われるみたいに。 初めて抱いた時は・・・・・
テンゾウもオレも抑えが効かず、無茶苦茶に抱いた。 最後は気絶したイルカを樹に吊るして抱いた。
こんな存在が戦場にいた、狂気に染まらず、その場の濁った空気を浄化してしまうような、そんな。
オレの自慢だった医療忍者のリンでさえ諦めたコトを、堂々と言ってのけた。 しかも本気で。
戦場では、一番に餌食になってしまう様な危うさを抱えながら、そうならないスベを身につけていた。
オレもテンゾウも、あまりに強烈な生の輝きを見せつけられ、手に入れたい衝動に駆られた。
コレがいつか誰かのものになる前に、本人は意図せずとも敵に蹂躙されるかもしれない、それならばと。
暗部内の均衡を保つ為、イルカが利用されるなら仕方がないネ。 可哀想だケド耐えてもらおう。
そうやって里の中での己の価値を高めていけば、イルカの存在は里の機密扱いになるでショ?
オレ達の望みを里が叶えてくれるってコト。 つまり戦場に出さず、里内で飼われる忍びにするコト。
戦場に出さずに済むのなら、もう安心。 信用してないワケじゃないケド、やっぱりイルカは危うい。
コレはエゴ、ごめんネ。 でもオレ達はもう失いたくない。 血にまみれて、忘れそうになるナニか。
せっかく手に入れたのに、人としてのナニかをいつも感じさせてくれるイルカを、失くしたくない。
こうやって焦らして抱いても、必ず抱き返してくれる腕、絡めてくれる指。 温かい人間の情を。
「イルカ、今日一日大活躍だったネ。 ・・・って。 聞こえないか、フフフ。」
「アズサさんの怒気を受けたんです、並のプレッシャーじゃないでしょう。 ふふふ。」
「ねぇ、テンゾウ。 もしイルカが・・・・ その女みたいにオレ達を拒絶したらどうする?」
「あり得ませんけど・・・・ そうですね・・・・ 逆、ですかね・・・ 殺しちゃう方・・・・」
「ウン・・・・ やっぱりそう思う? オレ達って、イルカに関しては我儘だしネ。」
「ええ。 イルカの記憶に残るんじゃなくて、ボク達だけの中に記憶を残すと思います。」
酉部隊の隊員が、惚れた女の前で自害した。 身請けされる度、惚れた男と死に別れてきた遊女らしい。
“お前を身請けしたから死ぬわけじゃない、死ぬ時は誰でも死ぬ、お前のせいじゃない” そう言って。
なんとも身勝手な自害。 気持ちは分からなくもないけどネ。 心底、惚れていたんだヨ、ソイツは。
確かにその女の記憶には、一生残る。 ケド、重い枷にもなる。 どっちがヤツの望みだったのカナ。
でも部隊長のアズサは、めんどくさいコトは一切無視。 とっととあの世で会わせてやろうとする。
そんなアズサの気性は皆が知っている。 遊女を生かすつもりなら、まずアズサに会いに行くだろう。
アイツには普段から仲が良い猿部隊の隊員がいた。 部隊は別だが同期で。 よくツルんでいたっけ。
イルカの話だと、女を連れ出したその隊員はやっぱりというか、アズサの元へ頭を下げに行ったらしい。
アイツの代わりに、自分が必ず面倒を見る、アイツの惚れた女を生かしてやって下さい、と。
自分もその女に惚れた、アイツの思い出を一緒に語りたいと、アズサに土下座して頼み込んでたんだって。
“お前が首を落としてこい、でなければアタシが落とすまで。 どこに匿っている? さっさとお言い!”
目に浮かぶようだヨ。 そんなふたりの間に割って入ったのが、遊郭から戻ったイルカ・・・・ か。
ワー アズサ、キレかけてただろうなぁ・・・ イルカじゃなかったらソイツも無事じゃすまなかったヨ。
割って入ったのがイルカなら、アズサは黙認するしかない。 なんてったって、オレ達の情人だから。
んで、オレ達が・・・・・ アズサにスーンゴイ目で睨まれたワケ、か・・・・ ンー 納得。
でも同じ酉班のヤツなら、問答無用で女を取り上げてたと思う。 猿部隊のヤツでよかったネ、イルカ?