小さな恋の行方 10
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オレが教えてやった土遁とは明らかに違う。 テンゾウが見た事もないチャクラを練りだした。
地面から木の根が出て来て、スゴイ早さで成長してる。 これは・・・・ 話に聞く千手一族の木遁秘術?!
なぜテンゾウが? そうか。 屋敷の奥に匿われて、なんかワケ有りなんだろうな、とは思ってたケド。
大蛇丸の、ただの実験体じゃなかったらしい。 あの忍術馬鹿は、初代様の細胞研究でもしてたんだろう。
「二つの忍術を同時に発動させるのは上忍の資質、さらに木遁は血継限界じゃ。」
「カカシ先輩のおかげです、ボクの水遁に、土遁が加わった時の感覚をつかめました。」
「うむ、テンゾウ、よく頑張ったな。 やはり初代様のチャクラ質じゃったか。」
「ボクの体は・・・・ 初代様の細胞から作られたんですね・・・・。」
「カカシも。 見事にうちは一族の写輪眼を使いこなせるようになったな。」
「ははは、ただ夢中で・・・・ 三代目、オレの千鳥は雷切と呼ぶコトになりました。」
「うむ。 その目を生かすも殺すもお主次第。 世の先を見据えよ、カカシ。」
「・・・・はい。 これからも二人三脚でいきますヨ、オビトとオレで。」
「ところでのぉ。 その、うみの夫妻が来ておるが・・・・・ 覚悟はできとるか?」
「「うっ・・・・・ はい。」」
そう、あの日、無我夢中で助けたあの時。 オレの放った雷切はふたりを拘束してた樹木に波及した。
テンゾウは避けきったけど、イルカが。 鋭く裂けた木片がイルカとテンゾウに向かって飛び散った。
ザクザクと周りに突刺さる木片。 一生懸命避けてたけど、一番大きい鋭い木片が、イルカの顔をかすめた。
その結果、顔のど真ん中に一直線の切り傷が。 本人は忍術に感動していて、気付いてなかったケド。
イルカが嬉しそうに、オレ達の間に入って来て座った。 それを見たうみの上忍ズの眉がピクリと上がる。
う・・・・・ 白い大きなガーゼが痛々しい。 よかった、ちゃんと医療班に治療してもらったんだネ?
オレ・イルカ・テンゾウ。 んで、漆塗りの上品な卓袱台をはさんで、三代目・海野夫妻が対面に。
いくらイタズラが過ぎるからと言っても、コレはヤリ過ぎ。 ・・・・とでも言われるのだと思っていた。
「実に残念だ、カカシ君、テンゾウ君。 君達のどちらかに、責任を取ってもらわなくてはならない。」
「カカシ先輩はボクの修行につき合っただけです、全ての責任はボクが。」
「お前バカ? オレ上忍だヨ? 責任は上官が取るモンでショ、普通。 ってコトで、オレが。」
「う〜ん・・・・ そーねぇ、ふたりともに責任を取ってもらう、っていうのはどう?」
「責任って、なんの責任?! 俺がふたりの修行に入ったんだ! ふたりは悪くないっ!!」
「イルカ、いいからお前は黙ってろ。 全ての責任はオレが取る。」
「先輩もイルカも! 聞いてた? うみの夫妻は、ボク達ふたりに責任を取れと言ったんですよ?!」
「「そのとーり。 じゃぁ、ふたりともイルカの許婚って事で。」」
は? 許婚?! 一人息子を傷モノにした責任は、キッチリ取ってもらう、って・・・・・ ナニそれ?!
イルカはイルカで、イイナズケって痛いのか、どこに浸けられちゃうの? と、心配そうに聞いて来た。
どちらもこの先、里を背負う忍び、イルカや玉の輿じゃの? とか。 三代目はスゴク嬉しそうだ。
なあ、テンゾウ、オレ達イルカの許婚だって。 今さオレ、ソレもイイかもって、ちょっと思ったヨ。
「イルカの雑草魂は凄いですからね。 きっと尻に敷かれますよ、ボク達。」
「うわー クシナさんとミナト先生みたいに?? じゃオレ達、モジモジカップルしなきゃ。」
「「ぷっ! ふふふ、あははは、はははははっっ!!!」」
オレ達の笑いの中、イルカはハテナマークを飛ばしてた。 痛くなさそうだね、よかった、そう言って。
うみの夫妻は、オレ達に負い目を感じさせないようにと、冗談混じりに話を出したのかもしれない。
三代目もそれに気がついて、話を合わせてくれたんだ。 こうやって、しっかり外に目を向ければわかる。
いままでそれに見向きもしなかった。 オレ達子供を見守る温かい目、里にはこんなにたくさんあった。
でもネ。 大人になったイルカとテンゾウ、ずっと一緒にいたとしたら。 そんな想像をすると楽しい。
誰がいつ死んでもおかしくないこの世界。 楽しいコトは多い方がイイ。 しかも親と火影の公認だし?