小さな恋の行方 12   @AB CDE FGH IJL MNO PQR S




火影様はわたしに協力して欲しいことがあるそうだ。 美咲様の為になる事なら何でも、喜んで協力する。
今日は昨日のニコニコ忍者はいない。 火影室には暗部のふたりと、顔に大きな傷のある忍びが一人。
巨大な熊にでも削がれたような、大きな痕。 けれど、どことなく優しい雰囲気を纏わせていた。
まだ後一人、誰かが来るらしい。 なんでも、それによって月の国に暗部を飛ばせる、というのだ。

「不知火ゲンマ 入ります・・・・・ あれ? ライドウも?」
「ゲンマとおれ、って事は・・・・ 三代目、飛雷神の術ですか?」
「うむ、そうじゃ。 ちと協力をしてもらうぞ?」
「「なんなりと。」」

入って来た忍びも、ふわりと優しい雰囲気が。 何かを口に咥えているから食事後? とか思ったけれど。
その楊枝らしきモノをじっと見ていたわたしに、“ん? コレ一応武器なんで。 すみませんね。” と。
どうやら行儀が悪いと、咎めているように見えたようだ。 このふたりはなんだか雰囲気が似てる・・・・。
それもそのはず、ゲンマ・ライドウと呼ばれたふたりは、あの四代目の護衛小隊にいたそうだ。

「どうりで。 四代目と雰囲気が似てらっしゃると思いました。」
「・・・・・三代目、聞いてもいいんでしょうか? この方、何者なんです?」
「やたら落ち着いてて、上品で、その・・・・ 理解力も、ね?」
「すまぬな、素性は明かせぬ。 じゃが火の国の要人のひとりじゃ。」

「・・・・・残念。 火の国の要人じゃ、くどけねぇ。」
「・・・・ゲンマ、命知らずの発言は止めてくれるか?」
「冗談はそこまでじゃ。 では早速、お主達に頼みたい。 ワシの水晶とコラボするぞ?」
「「コラボ・・・・・ ですか??」」

くすくす。 おふたりとも実に楽しそうな人達だ。 木の葉隠れの里の忍びは、皆が生き生きとしている。
火の国の警護は、全て彼らがになっている。 本来なら、彼らこそが国を治めるべきなのかもしれない。
ずっと昔は違ったらしい。 炎の一族は、初代火影の人柄に感銘を受け、木の葉隠れの里を手足に据えた。
それからずっと、この国の民は木の葉隠れに守られている。 国主と影の信頼関係こそ、国の命綱だ。

彼らが裏で汚れ、民を守るのならば。 表に立つ人間は、常に民の象徴でいなければならない。
一挙一動が世の注目を浴びる為、何一つ自分のしたい事を出来ない。 生まれてから死ぬまで、ずっと。
炎の一族はもとより、わたし達も。 だからわたし達には自由などない。 でも、だからこそ。
美咲様がご自分で気付いてもいないだろう恋心を、大切にしてあげたいと、わたしはそう思うから。

「ワシはその方の顔を知らぬのでな。 この水晶玉に両手を。」
「手? ・・・・こうですか?」
「うむ、そのまま彼の方を頭に浮かべていて下され、目を開けてはなりませんぞ?」
「はい!〈・・・・カズハ様。〉」

「カカシ、テンゾウ、準備は整っておるな?」
「「もちろんです。 じゃ、ちょと様子を見に行ってきます。」」
「ゲンマ、ライドウ! カカシとテンゾウに飛雷神の術をかけよ! 今じゃっ!!」
「「はいっ! 飛雷神の術っっ!! 時空間転送っっ!!」」

キーンと耳鳴りがしたと思ったら、大きな風圧を感じた。 目を開けていいと言われて周りを見たら。
昨日の暗部のふたりがいなくなっていた。 なんと、カズハ様の元まで空間移動したと言うのだ。
船で月の国に行くまでに、二十日はかかる。 それが・・・・。 いや、彼らだからこそ可能なのだ。
きっと何かしらの危険なリスクを伴うはず。 一般人がそれに耐えられるはずもない。 忍びのなせる技。

「宿でお待ち下され。 明日にでも詳細をお伝えする事が出来るじゃろうて。」
「火影様・・・・・・ ありがとうございます。」
「ゲンマ、ライドウ、臨時任務を言い渡す。 老舗旅館【翠屋】の警護に当たれ。」
「「はっ!!」」

どうやら火影様は、わたしの泊っている旅館を警護させるつもりの様だ。 やっぱり気を使わせてしまった。
ご迷惑をおかけしますと、ふたりに頭を下げたら、武器を咥えた忍びが何かを言いかけて、殴られていた。
くすくすくす。 こんなに人間らしい忍びの里は、きっと他国にはない。 我が国の誇り、宝だ。






「一発だけでいいのに・・・・  実に美味そうだ。」
「だから! お前、真顔でそういう事言うなって!」