小さな恋の行方 16   @AB CDE FGH IJK LMN PQR S




自分がいなくても、もしもの時は、それを使ってクシナを逃がせ、って事だったのかもしれない。
今でも火の国国境付近、忍び五大国へとつながるそれぞれの位置に、故四代目の三又クナイが埋めてある。
ライドウさんとゲンマさんは、護衛小隊にいた時、飛雷神の術を四代目から伝授されたそうだ。
いつでも飛雷神の術で国外へと逃がせるように。 術の発動には、二人以上のチャクラがいるらしい。

カカシ先輩は四代目本人から、この術をコピーしてる。 もちろん先輩は一人で発動出来るんだ、凄いよね。
でも移動先に三又クナイがないと、時空間移動できない。 今回ボクの生やした樹木に埋め込んで来たヤツ。
戻る時は、あの四代目が残した術式の部屋へ飛ぶ。 これで月の国へと直接行き来できる、という訳。
ちなみに三代目は、あの水晶玉に映しだした思念の強い箇所に、飛ぶ事ができるらしい。 脱帽だ。

狩野さんは、事の成り行きを黙認する、小さな恋を守りたい、そう言って泊ってる旅館に帰って行った。
カズハ様と美咲様の婚儀、その裏で何が起こっていたか知る者は、きっとこの先も彼女しかいないだろう。
彼女はその孤独な沈黙に耐える、火の国国主が妹君 炎の美咲の側仕え 重臣 狩野、その人なのだから。
そう言えばゲンマさんとライドウさんが、やたら楽しそうに警護してるんだけど・・・・ 気のせいかな?






「雷影にはワシが話そう。 来年の中忍試験の開催の事で、打ち合わせだとでも言っておく。」
「オレ達は、月の国への使者、場合によっては協力も辞さない、そう言うコトでいいんでしょうかネ?」
「うむ、本来はそうしたいが、事は雲と星の水面下での静かな戦争じゃ。 国を巻き込む訳にはいかん。」
「では星隠れの里への使者、木の葉が独断でカズハ様御身の警護を申し出る、そんな感じですか?」

「おぬし達は、ほんとうにワシの思っておる事を、間違いなく感じ取れるようになったの?」
「「その為に頑張って来ましたから。」」
「ほほほ、まこと力強く育ってくれたものよ。(これでいつワシが死んでも木の葉は安泰じゃて。)」
「「三代目が、イルカに会わせてくれたからです。」」

そう、全てはあの時から。 確かにボク達は変わった、里全体を見ていなかった、少数の大人ばかりを見て。
生き残って来た今ならハッキリとわかる。 そんな少数の馬鹿なヤツらは、早々と戦場で散って逝った。
語り継がれる事もなければ、慰霊碑に花が添えてある事もない。 まったく儚く寂しい人生だ、と思うよ。

里には自分自身を見る、温かい目がある事、それを知った時、きっと里の忍びは誇りを持って戦える。
そして最後まで生き残る事を諦めないんだ。 自分を信じて待ってる人がいる事を、知っているから。
どれだけ血にまみれようが、いつでも人に戻る事が出来る。 心を置いておける大切な場所がある限り。

「星隠れの里 夜影〈やかげ〉に、ワシから書状を書いておこう。 明日、辰の刻に火影室へ三人で来い。」
「「はい。」」

「・・・・・・ところでの、ナルトが今回もアカデミーを留年した。」
「「はぁ??」」
「・・・・・・今年はイルカを担任にしようと思おておる。」
「「・・・・・・・。」」

なんてことだ、イルカがナルトを受け持つだって? 今までまだ、ナルトは拠所をみつけてないって事だ。
イルカの裏表のない真っ直ぐな愛情を知ったら? ってことはつまり。 先輩、ピンチですよ、何気に。
ナルトは確実にイルカになつく!! もう、手に取るようにわかるよ、ボク達がそうだったから。

「ナルト、お前、四代目の息子でショ? ・・・・もっと周りを見ろよ・・・・・。」
「自分に冷たい大人ばかりだと、思い込んでるんじゃないよ、まったく・・・・。」
「ほほほ、あの時のお主達に、聞かせてやりたい台詞じゃの?」
「「・・・・・・・・。」」

実に面白くない! でもボクと先輩は、死を覚悟してクシナさんの元に向かった四代目に、誓ったんだ。
ナルトの成長を必ず見守る、いつか助けが必要な時は、必ずその助けに応じる強さを身につける、と。
そして、あの時命を落とした忍び達のような、素晴らしい忍びをたくさん育てよう、そう三人で誓った。

三代目、これは決定事項なんですね? 愛に飢えた、四代目の息子 ナルトを見たら、イルカは・・・・。
これも手に取るようにわかる。 絶対、心を抱きしめるはずだ。 罵られても嫌われても、あの雑草魂で。
でもまあ。 城に召し上げられるよりましか。 ボク達の情人で人柱力の拠所なら、もう引き抜けない。

「イルカが悪い訳じゃないのに、なんか無性に腹立ってきました。 では三代目、明日、辰の刻ですね?」
「オレもテンゾウと同じコト考えてるヨ。 もう、めちゃくちゃにしてやりたい。 では、失礼します!」
「・・・・・カカシ、テンゾウ。 伝令に使える体力は残しておいてやるのじゃぞ?」
「「わかってますっっ!!!」」