小さな恋の行方 4
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・・・・・昼間あの少女が会わせてくれたのは、同じ年の頃の青年だった。 木の葉の中忍だそうだ。
受付の知人というのは、本職が忍者アカデミーの先生で、彼のもうひとりの恩師であるらしい。
これは個人的な依頼で、仕えている方は無関係、身分の高い方なのでその名を明かせないが、どうか、
ある人の近況情報を手に入れる依頼を、その受付の忍びに通して欲しい、報酬は望みのままに、と。
「美咲様・・・・ わたしは、カズハ様の事も心配なのです。 ご無事な事を確認したい・・・・。」
早ければ明日には返事がもらえるだろうと、出されたお膳に手をつけようとしていたところだった。
わたしの部屋に主人がきて、里の忍びが訪ねてきてますが、いかが致しますか、と言うのだ。
わたしの居所を? さすが忍びの里だ、あまりの迅速さに驚いた。 お通しして下さい、と伝える。
風琴守の弟子は、あれからすぐに行動してくれたんだなと、あの若い忍びの誠実さに、胸が温かくなった。
これは・・・・ 人数が多すぎるのでは? てっきりあの青年の知人であるという、受付の忍びだけだと。
まさか。 姿を見せない依頼人の任務依頼など、受理できないと断りを入れに来たのでは・・・・?
だとしたらわたしは国外の者と誤解され、拷問部へと連行されるかもしれない。 そうなったら素性が。
「あの・・・・・ そんなに硬くならないで頂けますか? 緊張が伝わってきますので・・・・。」
「?? わたしの依頼信憑性を問う為に、拘束しに来たのではないのですか??」
「そんな!! ヒカルを通して下さった方を疑うなど。 俺自身が、詳しくお話をお伺いしたくて。」
「それは・・・・ 受理して下さるという事ですね? 失礼しました、ありがとうございます。」
後ろのふたりは、一切話さないが。 なにやら値踏みされている・・・・・。 どこかで会った、とか?
わたしの任務内容が怪しいモノであるなら、即座に連行される。 そんな気がして、落ち着かない。
この目の前の、ひたすらにニコニコしている忍びを信じよう。 あの青年の恩師であるという先生を。
美咲様の名は伏せて、婚約者の近況報告を依頼する。 月の国 国主の子息 カズハ様の今を知りたいと。
月の国はこの第壱大陸の裏側にある第弐大陸。 昔から火の国とは交易を重ね、信用を築いて来た。
光〈こう〉一族は、炎一族と同じく、正当な国主の血を受け継ぐ一族。 カズハ様は月の国の次期国主。
もしこの婚約が成功して火の国と月の国が姉妹国になれば。 無血で国交同盟が結ばれる事になる。
月の国は火の国と同じく、あちらの大陸で一番勢力を持っている国。 世界平和へのかけ橋、そのもの。
「心配はつきません。 なにしろ第弐大陸のあちこちで、いらぬ交戦が続いていると聞いております。」
「勢力のある国の周りには、陰謀が渦巻いております。 この火の国もしかり。」
「第弐大陸一の月の国を手に入れれば、と血の気が多い忍びが多く、無駄な血が流れているのです。」
「・・・・・・まるで、あなたは・・・・ 国政に関わりのある方の様な発言ですね、狩野さん。」
「!!!! い、いえ、その・・・・ わたしは、・・・・。」
「ふふふ、あなたのお仕えする方が、とても有名な大名家なのだという事は理解できましたよ。」
「あ、あの・・・・ その・・・・ はい、これはわたしの自己満足な依頼なんです・・・・。」
お、驚いた・・・・。 つい熱く語ってしまったけれど。 彼は有名な大名家だと思ってくれたらしい。
もしその婚約者が美咲様、国主の妹君だと知れれば。 火影様は元より、時宗様をも心配させかねない。
それは民の事を思い、己を殺し続ける美咲様の本意ではないのだから。 勝手にわたしが動いているだけ。
例え炎一族の血を受け継いでも、恋のひとつぐらいしてもいいと。 わたしは本気でそう思っている。
「あーーー 狩野さん? 申し訳ないんだけどサ、オレ達と一緒に来てもらえます?」
「一応ね、様子を見てました。 もしあなたが国主の使いできたのなら、と。」
「か、カカシさん、テンゾウさん?! 国主って・・・・?!」
「わ、わたしは国主の使いなどでは・・・・ 断じて!!」
「だいたいのコトは察しました。 木の葉は依頼人の要望を厳守しますヨ? 安心して下さいナ。」
「美咲様には内緒できたんですね? 護衛もなしでなんて、無茶ですよ、まったく・・・・。」
「・・・・・・・ ご、ご存じだったのですね・・・・ あはははは・・・・・・。」
「もう、隠しだては致しません。 時宗様の妹君、美咲様のお側仕え 狩野と申します。」
「時宗様、美咲様?? ・・・・・・・ え゛――――っっ!!! 」
「「イルカ、声デカイ!!」」
ふたりは、どうやらわたしの事を知っている忍びだったようだ。 でも秘密を厳守すると言ってくれた。
わたしを知る木の葉の忍びがそう言ってくれたなら、火影様は秘密裏に情報を集めてくれるはず。
・・・・・ふふふ、しかし。 このイルカという受付係は、なんて表情の豊かな忍びなのだろう。