小さな恋の行方 19
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月の国に潜伏しているだろう雲を殲滅しに、夜影その人が向かった。 いくら雲でも時間の問題だ。
しかしさすが影、迫力ありましたね。 視洞眼の術、バレてたっぽいですね。 と、話していた時だった。
飛雷神の術の風圧がボク達を襲った。 ここに直接飛ばすなんて・・・・ 三代目しか出来ない。
その忍びはわずかに血の臭いをさせていた。 雷の公子を暗殺して来たであろう、星隠れの里の暗部。
「話は全て木の葉隠れ 火影殿よりお聞きした。 争いの終息に協力、影に代わりお礼申し上げる。」
「木の葉はただ、美咲様のご縁談を成功させたい、それだけデース。 月の国と火の国の為にネ?」
「そのふざけた話し方は・・・・ はたけカカシか?」
「くすくす! 先輩、凄い認識のされ方ですね・・・・。」
どうやらカカシ先輩を知っている忍びのようだ。 まあ、他里の暗部なら、知ってなきゃおかしいんだけど。
まさかその日のウチに帰ってこれるとは思わなかったと、星の暗部は言った。 生きて、とは言わなかった。
つまりそれは当然の事、暗殺を成功させるだけの腕と、星の関与を疑わせない自信があった、ということだ。
おそらく、星隠れの暗部の中でも、そうとうな実力者なのだろうと、うかがい知る事が出来る。
「雷影殿から、我が国内にいる全ての雲の始末を頼まれた。 俺はこれから・・・・・」
「ストップ! もう夜影様が行ったヨ? アンタの出番はナシ。」
「そうか、夜影様が。 ふ、なら確かに俺の出番はないな。 風呂にでも入ってこよう。」
「ボク達は夜影屋敷の警護を頼まれました。 どうぞごゆっくり、疲れを癒して下さい。」
どれぐらい雷に潜っていたのか。 単独で国主の三男、しかも証拠を残さずに暗殺するなんて、大役だ。
では警護は頼むぞと、その暗部は瞬身で消えた。 三代目は雲隠れに行って、雷影に全てを知らせたんだ。
そして思った通り、事の真相を知らなかった雷影は、公子暗殺を黙認、自里の裏切り者の処分も容認した。
自国の公子に頼まれただけの雲隠れの忍び。 だがそれを雷影に秘密にした時点で、影を裏切ったも同然。
「さっきの夜影様の言葉じゃないですけど、自分勝手なマネをする馬鹿を切り捨てる、か。」
「そうだヨ。 どの里にだって、それこそ木の葉にだって、バカはイッパイいるしネ。」
「ボク達忍びは、人より優れた力がある。 でも使い方を間違えてはいけない、そうですよね。」
「ウン。 バカはイッパイいるけど、今の平和が実現したのは、間違えない忍びが大勢いたカラ。」
ボクを作った大蛇丸も、そのバカな忍びの一人だ。 天賦の才に恵まれていながら、道を誤った裏切り者。
三代目の弟子にして、木の葉伝説の三忍と呼ばれている忍び達。 今、その誰ひとり三代目の側にいない。
木の葉伝説の三忍には、遠く及ばないけど、先輩とボクとイルカ、足して三で割ったら里の理想の忍びだと。
三代目はボク達に言ってくれた。 もちろんすぐに、四代目夫妻の慰霊碑に報告に行った、ただ嬉しくて。
「ボク達は忍びで、先も見えないけど・・・・ 基本的に生き方は自由なんですよね。」
「ダネ。 自分の意志で里に縛られてるんだヨ。 守りたい何かがそこにあるカラ。」
「建物を壊すのも、生き物を殺すのも簡単。 でも形のないモノを維持するのは、至難の業ですね。」
「信用・慈愛・誇り 形のないたくさんのモノをいくつ持ってるかで、その国の価値は決まると思う。」
だったらやっぱり。 自身が国の顔だと、幼くして知っていた美咲様は、今の火の国最高の道具だ。
見かけは道具として、でもその御身が必要だと言ってくれたカズハ様に、美咲様も一瞬で恋に落ちたはず。
狩野さんが守りたいと言った小さな恋は、この国では、皆が守っていた。 よかったですね、狩野さん。
「・・・・・・しばし、ナルトに貸してあげますか、しょうがない。」
「四代目の息子だしネ。 ひょとしたら、オレが上忍師を受け持つコトになるカモ。」
「先輩の試験を突破したら、の話ですよ。 卒業も怪しいんですから。」
「でもなんとなく・・・・ 来そうな気がするんだよネ、そろそろ。」
「仲間を優先する、強い忍びがたくさん育って来た、そう思いますか?」
「だって、あの真田中忍見ただろ? アレは間違いなく木の葉の未来だ。」
「ですね。 イルカの育てた芽が、どんどん出て来てる。 次はボク達の番ですね。」
「そう言うコト。 イルカのまいた種を、オレ達が育てる。 だってオレ達三人は・・・・」
そう、ボク達三人は、三代目公認の理想の忍び像。 ただし、三つでひとつだけどね。
これからだって、それは変わらない。 ナルトが入ってこようが、大丈夫。 生徒大好きのイルカ。
人の悲しみに何より敏感な、ボク達の心。 でも、あんまりナルトばかりを可愛がりすぎては駄目だよ?