小さな恋の行方 7   @AB CDE GHI JKL MNO PQR S




三代目が言うには、ボクの中には初代様の木遁秘術チャクラが眠っているらしい。
木遁チャクラを開花させなければ、ボクは処分される。 抜け忍 大蛇丸の残した産物だからだ。
ボクの身柄を預かって修行をつけてくれているのは、他でもない。 その抜け忍の師、三代目火影だ。

『猿飛正気か?! 大蛇丸がこ奴自身を無意識の草に仕立て、わざと残したのかもしれんのだぞ!』
『柱間様の気を感じるなどと、何を根拠に! バカバカしい、綱手にさえ遺伝しなかったモノを!』
『猿飛、もし違ったら。 お主が上層部の審議にかけられ、火影の座を追われる事になるのだぞ?』

三代目は、全ての責任はワシがとる、とご意見番に言って、あの日からボクを屋敷の奥に匿った。
手の空いた時に鍛えてもらって。 公にはできないが、ボクの忍びとしての実力は里の中忍レベルらしい。
木遁は必ず開花する、己自身を信じるのじゃ、と。 事あるごとに、火影様はボクに言い聞かせる。

「テンゾウさん? 俺、イルカ。 じっちゃんに言われて来たんだ。」
「うん、テンゾウだけど・・・・ 火影様に??」
「根暗小僧の友達になってやれ、って。」
「・・・・・・・君さ、失礼だって言われない?」

いつもの様に中庭で鍛錬をしていた。 一日も早く木遁チャクラを引きだそうと、試行錯誤を繰り返す。
だって、ボクが処分されるだけならいいけど、三代目が火影の座を追われるなんて、絶対駄目だから。
火影様に言われて来たというその少年は、なにも考えずに思った事を言うタイプの人間らしい。
例え三代目がそう言ったとしても、そんな事本人に向かって言わないよね、普通。 なんて無神経なヤツ。

「・・・・水遁 水風船の術!」
「わわわ、なんか飛んできたっ!! お〜 うまそうっ!〈バクッ!〉」
「・・・・・・・まさか、飲んだの??」
「ラムネ大好きー! ・・・・ん? 味しねーぞ??」

教育的指導だ。 ピンポン玉ほどの大きさの水弾を飛ばしてやったら、なんと少年は、飲んでしまった。
綺麗な水色をしてたから、ラムネ味なんじゃないかって思ったそうだ。 そんなわけないだろ?!
しかも根暗って。 一生懸命なだけなのに。 みたところ少しだけどチャクラ質を感じる・・・・。
なら、もうすぐこの子は、木の葉隠れの忍びになるべく、里の忍者アカデミーに入る事になるはずだ。

「アカデミーに行ったら、君と同じぐらいの年の友達が、たくさんできるよ?」
「は? お前だって俺と同じ位の年だろ??」
「残念ながら、ボクには遊んでいる時間なんてないんだ、一刻も早く・・・・」
「・・・・なあ、ちょっとだけ俺につき合えよ、面白いから!!」

な・・・・!! なんて自己完結型なんだ! 遠回しにもう帰れ、って言ってるのがわかんないの?!
同じ年ぐらいだから何? アカデミーなんか行かなくても、ボクの実力は里の中忍クラスなんだよ?
イルカはボクの手を強引に引っ張りながら、火影様の部屋へ入って行った。 まだ主が帰っていない部屋。
火影様が座るだろう座椅子と座布団の間に、札を入れた。 お前も共犯者だぞ? とニヤリと笑って。

「なに仕込んだんだ! そこは火影様が・・・・・」
「まあまあ、ちょっとソコに座ってみて?」
「・・・?? もし害があったらただじゃおかな・・・・〈ブブ―――ッ!〉」
「やった、うまく発動した! ブーブー札って名付けたんだ、俺の力作!」

人柱になろうと座椅子に座ると、先ほどの仕込み札から、下品なオナラって感じの大きな音が出た。
どうやらボクは悪戯に引っかかったらしい。 ・・・・火影様、いつもこんな目に合わされてるんですか?
きっとそうなんですね、いくら子供でも、火影様の事をじっちゃんと呼ぶ、無礼千万な無神経少年イルカ。
ボクの肩をバンバン叩いて、本番が楽しみだな? な? なんて。 こんな、こんな・・・・・・。

「・・・・くすっ! ふふふ、火影様に?! 勇者だねイルカ! あはははは!!!」
「俺の父ちゃん、なかなか朝起きなくて、母ちゃんが目覚しの札作ってさ。」
「なるほど! それの応用か、音を札に込めたんだ? すごい発想だよ、あははは!」
「・・・・・なあ。 お前、声出して笑えるじゃん。 へへへ!」

え? ボク、そんなに笑ってたの?? そう言えば声に出して笑った事なんて・・・・ あったかな。
イルカがボクの目をみてニッコリ笑った。 三代目も、自己鍛錬をしてるボクと目があったら笑う。
あの実験室から助け出してもらって、修行つけてもらって、一生懸命鍛錬して。 ボクは今まで・・・・
ボクを信じてくれてる火影様の目を見て、笑いかけた事が・・・・ 笑顔を向けた事があったか?

「わわわ!! テンゾウさん!! 急に泣かないでっ!」
「・・・・・・泣くなんて、忍びの恥だ! くそっ!」
「違うよ? 心が痛いって言ってるんだ、恥じゃない。」
「そんな訳、ない、だろ・・・・ うっ、くっ・・・・」

火影様、ボクは必ず木遁チャクラを開花させます。 ボクの助命は間違いじゃないと、証明してみせます。
あんなに火影様は笑いかけてくれていたのに! 三代目、今まで心配かけて・・・・・  ごめんなさい。
イルカがそっと頭をなでてくれた。 母ちゃんに叱られた時、いつも父ちゃんがしてくれるって言って。
お前の痛いのが、少しでも俺に移ってきたらいいのにな、って。 何度も何度も背中をさすってくれた。