小さな恋の行方 8   @AB CDE FHI JKL MNO PQR S




オレの事を泣き虫小僧呼ばわりした、ちょっとばかり無神経で優しいイルカは、かなりのイタズラ小僧。
イルカがやってきてから、三代目の静かだった屋敷のそこかしこで、イタズラ小僧を呼ぶ声がする。
聞けばうみの上忍夫妻の息子だとか。 あの性格は確かにあのふたりの子だヨ。 なかなかの人気者。
名前の前後には必ず“あんにゃろー!”とか“どこ行った!”とか“お仕置きだ!”がつくケド。

『カカシ君。 誰が何を言っても、おれ達は白い牙を誇りに思ってるから。 覚えておいてくれ。』
『親が死んだからってグレるんじゃないわよ? 子より早く逝くのは、変えちゃいけない順番なの。』

父さんを慕う一部の上忍連中が、父さんの遺体を埋葬してくれたあの時、うみの夫妻はそう言った。
遺体の入った棺に土をかけながら、右から左に聞き流していた言葉。 優しくて無遠慮な言葉だった。
そうか、あのふたりのかけ合わせは、ああなるんだ? 足して二で割る、まさにイルカの為の表現だネ。

「カカシさん!! 中に入れてっ!!」
「・・・・・ハイ、ハイ。 ・・・・どうぞ?」
「ありがとっ! ふぅ。 アスマさん、めちゃ怒ってる!!」
「またなんかやらかしたの?」

選別式結界の張ってあるこの部屋は、イタズラした後のイルカの、格好の避難場所となっている。
オビトの左目が泣き止んだから、ミナト班に戻れると思っていたのに。 ミナト班は解散となった。
リンは医療班に配属。 オレの上忍師 波風ミナト先生は、なんと、四代目火影に就任するそうだ。
んで、なんでまだオレが三代目の屋敷に居るかと言うと、オビトの写輪眼をコントロールする為。

「最近髭伸ばそうとしてるみたいだから、ちょっとね・・・・ へへ!」
「三代目にも、その息子にもイタズラするって、根性あるよね、ホント。」
「だってアスマさん無愛想だから、カラフルな方が、可愛いじゃんか!」
「カラフルって・・・・ ひょっとして、アスマのヒゲを染めちゃったの?」

うわー そりゃ怒るヨ。 イルカは叱られても叱られても、不屈の根性を発揮してイタズラを繰り返す。
ナニがそこまでイルカを突き動かすのか、大いなるナゾ。 オビトがいたら意気投合してたな、絶対。
オビトの写輪眼はチャクラの消費が激し過ぎる。 これはもろ刃の剣だ、チャクラ切れを引き起こす。
必要最小限のチャクラで使いこなせるように。 オレが死んだら、オビトに未来を見せられないもんネ。

「ところでテンゾウは? 修行につき合うって約束したんだケド・・・・」
「あ、今ね、俺に変化して、アスマさん引きつけてくれてる。 へへへ!」
「・・・・・・テンゾウ、後で土遁の鍛錬、イッパイしてやるからネ。」
「いいなー 俺も、カカシさんやテンゾウさんみたいにチャクラ練りたいっ!!」

ふふふ、イタズラに命懸けてるようじゃ、まだまだチャクラは練れないヨ。 根性は一人前だけどネ?
イルカが案内してくれたこの屋敷のずっと奥に、一人の少年がいた。 あの大蛇丸の実験体だったらしい。
自分の中に眠っている木遁チャクラを開花させようと、ひとりで修行していた。 イルカの友達だそうだ。
オレも修行につき合ってやる、この目を使いこなさなきゃならないから、と言ったらビックリしてた。

「イタズラを止めるって誓うなら、イルカにも修行をつけてあげるヨ?」
「ほんと?! ね、カカシさん、ほんとに教えてくれる??」
「英雄 白い牙の息子は、嘘をつきません。」
「!!! しろ、い・・・・ え?! カカシさんって、サクモさんの子供だったのーっ?!

くすくす、この驚き方! イルカがなんで人にイタズラするか、ほんのちょっとだけわかった気がするヨ。
スゲー、サクモさんは、俺のヒーローなんだ! って興奮してる。 やっぱり何も知らなかったんだ?
例え知っても、イルカのオレに対する態度は、友達のまま。 オレが上忍だと知った時と同じだーネ。
三代目がなぜイルカをよこしたか、コレもなんとなくだけどわかる。 オレもテンゾウもまだ子供なんだ。

「カカシ先輩っ、入れて下さい!!」
「ん、お疲れさん。 入ってイイよ。」
「あー 冷や汗かいた・・・・ お尻、燃やされそうになりましたよ・・・・」
「テンゾウさん、燃やされなくて、よかったねーっ!!」

「「・・・・一体、誰のせいだと?」」
「え? アスマさん??」
「「違うでしょ!!」」

実力があって年上に命令をしても、上忍や実験体であっても。 まだオレ達は、8〜12歳の子供だ。
周りの大人に合わせる必要なんてなかった。 オレ達はこれから伸びる、木の葉の若葉なんだ。
今の大人達に代わり、いつかオレ達の時代が来る、その時代の中心にいろ。 火影様、そうなんですネ?