小さな恋の行方 11   @AB CDE FGH IKL MNO PQR S




カカシ先輩とボクは、四代目の火影直属部隊、暗殺戦術特殊部隊に配属される事が決まった。
うちは一族じゃないカカシ先輩が写輪眼を使っても、ボクが初代様と同じ木遁秘術を使っても。
そこでは、人の事をとやかく詮索する輩はいないらしい。 思う存分暴れられるぞ、と三代目が言った。

実際その通りで、目には目を歯には歯を、実力だけがモノを言う部隊。 ボク達にピッタリだった。
あれから二年、暗部に入った新人の噂は瞬く間に広がった。 敵も味方も近寄れない、双璧がいると。
カカシ先輩は14才、ボクは10才。 けど誰ももう子供扱いをしない。 里の仲間として認めたからだ。







あの時うみの夫妻が言った事は、きっとボク達を気遣っての事だろう。 随分周りに心配かけていたから。
せっかく子供同士仲良くなったのに、負い目を感じさせないように、ワザとああ言ったんだ。
だって、イルカには、“男前が上がったなー”“傷のある男はモテるわよ?”って、言ってたし。
さらにその台詞でイルカが“マジ? シカクさんみたいに渋くなれる?”とか三代目に聞いてたし。

でもボクはイルカが、本当にずっとそばにいてくれたら嬉しい。 あの時の話を実現させたい。
これだけはハッキリしてる。 ボクは大蛇丸の生体実験の被験者。 女の人と、なんて事は考えていない。
どんな子が生まれるのかわからないし、そんなボクと一緒になってくれる人なんていないと思う。
でもイルカとなら。 この前、精通がきた。 最近特に、あの話を盾に取ってでも、なんて思ってる。

「カカシ先輩、あの時の責任・・・・ ボク、本気で取るつもりです。」
「ナニ、テンゾウ。 オレが本気にしてないとでも思ってたの?」
「え、だって・・・・。 先輩は、はたけ家の血を残した方がいいんじゃ??」
「・・・・・そうか。 お前、知らないだろうから教えてやる。」

知らなかった・・・・。 だってそんなこと誰も教えてくれなかった。 玉の育成方針について、なんて。
アカデミーに通ってれば教えてもらえたのかな。 精子・卵子は冷凍保存の為、提出義務制、驚きだ。
子供を望む者に、里が審議をし与える。 だからか。 だから、里の大人達はみんな・・・・。
全員が我が子の様に、玉を見守る。 今さらながらこの制度を推進した三代目に感謝した。

「ではイルカに選んでもらいましょう、どっちがいいか。」
「お前ね。 ソコは、先輩のオレに譲ろうとか思わないワケ?」
「イルカに関しては譲れません。 この前夢精しました、イルカで。」
「・・・・・このエロガキ。 でもオレもこればっかりは譲れない。」





ってなわけで。 イルカの許婚に正式に立候補する為、襟を正してうみの夫妻の家にやって来た。
去年からアカデミーに通い始めたイルカ。 持ち前の明るさでたくさんの友達に囲まれている。
でもボク達が会いに来ると、決まって飛びついて来る。 “お帰りなさい!”って、眩しい笑顔で。
ほら、こんな風に。 ああ無傷で帰って来てよかった、会いたかった、イルカが好きだ、と再認識する。

「カカシさんとテンゾウさん、どっちが好きか選ぶの??」
「ウン。」 「そう。」
「・・・・・じゃぁ、どっちも! だって選べないよ!」
「「は?!」」

「俺、どっちも大好き!! ふたりとも俺のヒーローだもん!」
「「・・・・・・・ヒーローね、ははは・・・・。」」
「ヒーローの心が痛くなったら、俺がまた撫でてあげるんだ!」
「「・・・・うん、そうだね、そうだった・・・・。」」

不屈の雑草魂の持ち主イルカは、ボク達の遥か上を行っていた。 ふたりとも大好きなんだそうだ。
しかもボク達の心の痛みを感じたら、また撫でてくれるらしい。 まだ恋愛にはほど遠いけど、それでも。
今、最高の気持ちをもらった気がする。 イルカ、ありがとう。 やっぱりボク達、尻に敷かれそうですよ?
イルカが恋愛を意識した時、いつの間にかボク達が側にいた、そうなるように仕向けましょうね、先輩。

「じゃあ、イルカはボク達の許婚ね?」
「許婚はオレ達だカラ。 覚えといて?」
「うん! ・・・・・・イイ菜って、何? どんな漬物??」
「「あははは! やっぱりイルカだ!」」

いつも予想外の事をしでかして、イタズラを繰り返しては怒られていた。 イルカといると子供でいられる。
戦場で血にまみれ、どんなに人を斬っても。 イルカが撫でてくれた、小さな手の温かさを思い出す。
どんなに踏まれても育つ雑草魂、自分の物でない目を使いこなす匠、生命の息吹を与える木遁秘術。
忍びの心得、心・技・体は、ボク達そのものだ。 ボク達は三つで一つの忍び、誰も欠けちゃいけない。







「お兄さん達〜、寄っていかない? 木の葉の暗部は特別にサービスしちゃうわよ?」
「あー ごめんネ? 間に合ってるカラ。」
「すみません、ボク達、許婚がいるんです。」
「残念だわ〜 こんなに若くてピチピチしてるのに。 飽きたらいつでも遊びにいらっしゃいな。」

「「飽きないから。」」

うん、絶対ない。 花街で声をかけられても、はやくイルカが意識してくれないかなぁ、なんて思うぐらいだ。
先輩もボクも、その時の事を想像して腰が熱くなり、慌てて家に帰る。 お互いこれから妄想タイムだ。
一応目標はある。 カカシ先輩が写輪眼で術のコピーを千回したら、って。 それまでには、きっと。 ね?