小さな恋の行方 18   @AB CDE FGH IJK LMN OPR S




先ほど夜影に三代目の書状を見せ、コトの終息に協力する旨を伝える。 さすが第弐大陸一の隠れ里。
星隠れの里 夜影宅の修行の間の中に、カズハ様本人にそうとは知られないよう、軟禁しているらしい。
夜影は『我が国には婚儀の前に、一ヶ月間しなければならない修行があるそうです。』と言ったダケ。
そうか、ならば歴代の国主と同じようにせねば、民に示しがつかんな、だって。 上手いよネ?

「実はもうすでに、雷へ刺客を放った後だ。 あの沈没事故を頼んだ、国主が三男を仕留める為に。」
「おそらく事は、雷影の知らぬ動き。 星の関与を知っても、黙認するはずです、国外に出た忍びも。」
「ふふ。 雷影は馬鹿共を切り捨てるだろうな。 ではこの国にいる雲は、誰ひとり生かして帰さん。」
「心中をお察しします。 星隠れの忍びは、すぐにでもカズミ様の仇を討ちたかった事でしょう。」

瑠璃色の目の女傑 星隠れの影。 交戦を知られない為、最小限の力で雲を見つけ出し始末していた。
少しでも日常に変化があれば、カズハ様は気付く。 自分が狙いならば、兄の死も事故ではないのか?
兄と自分が狙われる共通する要因とは? やがて、縁談が持ちあがった為ではと、そう行き着くだろう。
もしそうなったら、雷と月の全面戦争は避けられない。 国同士の戦争は多くの民が飢え苦しむダケ。

「・・・・・しかし。 ふふふ、随分昔にフラれているというのに・・・・ 見苦しい道具だな?」
「まったくその通りです。 我が里もその昔、悪あがきの為、誇り高き忍びが犠牲になりました。」
「木の葉と星を怒らせたのだ、その命を持って償ってもらおう。 雷にとっても有害な道具のな。」
「短期集中決戦。 一ヶ月間に、全てを水面下で終息させるつもりだったんですネ?」

兄に来た縁談の写真を見せてもらって、一目で美咲様に心奪われたカズハ様。 タイミング良く兄が死ぬ。
自分が兄の婚約者を思ってしまったから、天が罰を与えた。 本当は自分が死ぬはずであった、と。
それから5年間。 己を罰する様に、美咲様を忘れようとしておられた姿は、国主や里の皆の心を打った。
亡き兄上の為、美咲様を幸せにしてあげるのが、弟君の役目ではありませんかと、説得し続けたという。

「今日一日で終わらせる。 では、この屋敷とカズハ様、木の葉に委ねるが、良いか?」
「その為にオレ達がきたんですヨ。 ・・・・もう思う存分、暴れまくって下さいナ。」
「ふふ。 前回は、まさか雷が絡んでいるとは思わなかった。 二度も舐めた真似はさせない。」
「夜影本人が出向いたとなれば、統率力のない雲の寄せ集め、半日で殲滅でしょう。」

確かにこの国は素晴らしい。 火の国に勝るとも劣らない結束力を持つ、第弐大陸一の月の国。
きっとカズハ様は、民の誰もを魅了する、親しみやすさがあるのだろう。 さすがは光一族の血だ。
雑念を払い無我の境地を極める為、日々、修行の間で座禅と瞑想を繰り返しているらしい・・・・。
一途というか、純粋で・・・・ 思わず、美咲様のそんな光景を想像して吹き出しちゃったヨ。

「しかし・・・・ 本当に信じておられるとは・・・・ ナンか・・・・ フフフ・・・・。」
「もうすぐ胸を張って迎えに行ける、そう言っておられるぞ? 可愛らしい方だ。」
「次期国主を “可愛らしい”と表現する夜影様。 心配はしておりませんが、御気をつけて。」
「ふふ。 そなたたちもな。 カズハ様に知られるような事が有れば、その首もらいうけるぞ?」

影と呼ばれるほどの実力者、瑠璃色の目がオレ達を射抜く。 三代目同様、国の行く末を案じる人。
ところでウチの内勤ふたりが、なぜか急にカズミ様暗殺事件や、カズハ様の居所を知りたがったが。
やはり木の葉の仕業か? ・・・・・なんて、ドキリとする言葉を投げかけられた。 ハハ、ばれてたのネ?
きつくオレ達を突き刺した視線が、途端にいたずらっ子のような目に変わった。 まいりました、夜影様。

「木の葉の暗部、部隊長・補佐の首をかけ、約束いたします。 コトの一切は、全てが闇の中へ。」
「両国の為に。 真実は黙して語らず。 明るい婚礼の儀の知らせを、民に知らしめるのみです。」
「直接関与せず、我らの手で始末できる機会を与えてくれて。 木の葉よ、感謝する。 ではな。」
「「お留守番は任せて下さい。 ご武運を。」」

美咲様、国の道具も恋をしていいでショ。 だってカズハ様は、あなたのコトを本当に思ってらっしゃる。
12年前、国の国境平定の為の政略結婚とは違い、国主も星隠れの里も、あなた自身を歓迎していますヨ。
婚礼の儀で両国に同盟が結ばれ、姉妹国関係が出来上がる。 その結果、全てが民の為になる、そうでショ?