小さな恋の行方 9   @AB CDE FGI JKL MNO PQR S




イルカがボクの部屋へ連れてきた人は、里の忍びなら知らない者はいない。 天才忍者、はたけカカシだ。
そのカカシさんが、ボクの修行につき合ってくれる、そう言った。 驚いた、噂では・・・・ いや、違う。
そうか、この人も中傷されてる口か。 本人も事実も何も知らないくせに、騒ぎ立てる馬鹿な輩達。
そいつらが話す “はたけカカシ”なんか信じない。 ボクの目で見た忍びは、強い目をした先輩忍者だ。

「え、いつもの見学じゃなくて? イルカも参加するの??」
「うん! カカシさんが修行つけてくれるって!」
「コラ! イルカはまだ上手くチャクラ練れないでショ。 まずはコレ。」
「・・・・この紙に・・・・ 念を込めるの? 念か・・・・・ う〜ん、う〜ん。」

ボクも火影様に一番最初に教えてもらった。 あの紙がどう変化するかで、自分のチャクラ質がわかる。
ボクは紙が濡れたから水遁チャクラ質だった。 自分のチャクラ質の忍術が、一番使いやすいんだ。
イルカのチャクラ質はなんだろう、どれどれ・・・・  ん? なんか・・・・ もの凄く複雑な変化だね。
シワになって切れた。 プスプスと煙が出て、燃えるかと思ったら。 じわっと濡れて、最後に崩れた。

「カカシ先輩、この変化って・・・・ どうなんです?」
「・・・・・・イルカ、残念なお知らせがあります。」
「え? え?? なに、なに?!」
「イルカの得意な忍術はナゾのままです。 五大性質変化が全部入ってるんだよネ。」

「・・・・・・それって、全部の忍術を極められる、って事?? 俺、スゲー!」
「ははは、そんなの陰陽の始祖 伝説上の六道仙人でなきゃ無理だよ。 くすくす。」
「が〜ん! ・・・・・ん? でも、どのチャクラとも相性がいいって事だ、うん!」
「沈んでも必ず浮上してくるネ? ふふ、人はそれを雑草魂と呼ぶ、ウン、ピッタリ。」

雑草って・・・・ カカシ先輩、結構毒舌?? でもイルカは全然気にしてない。 むしろ・・・・
よし、雑草魂を燃やして頑張るぞ〜 って、張りきってる。 あははは、ほんと、雑草魂そのモノだ。
ボクもイルカを見習おう。 例え何回引き抜かれても、踏みつぶされても、地面に根を張ってやる!
そう言えば人柱力のクシナさんは、他里の人だったらしい。 あの人も雑草魂の持ち主だな、きっと。

「カカシ先輩、クシナさんって凶暴だって聞きましたけど・・・・・」
「ウン、ミナト先生はいっつも尻に敷かれてる。 赤いハバネロ、最強。」
「スゲー、あの黄色い閃光を尻に・・・・・ 母ちゃんみたいだ・・・・。」
「でもふたりは、モジモジカップル。 こっちが恥ずかしいヨ、ホント。」

知ってる、なんで三代目が引退を迫られたか。 いつまでたっても木遁を使えない、ボクのせいだ。
志村ダンゾウという人が、ボクの無用性と三代目の優柔不断を、上層部に申し立てたらしい。
きっと自分が火影に、と考えていたんだろう。 でもそこは三代目。 後任に黄色い閃光を推薦した。
行く行くは渦巻クシナを娶らせる、と。 つまり九尾の人柱力の所有者にする、そういう事だ。

三代目はふたりが好き合ってるのも知ってる。 だから四代目に推薦したんだ。 反対する者はいない。
年が若いふたりだけど、人柱力が火影の妻になるという事は、里を絶対裏切らないと宣言するのと同じ。
九尾は尾獣の中でも最強を誇る。 だから人柱力は、まさに木の葉隠れの最終兵器だといって良い。
その時の志村ダンゾウは、きっと “やられた!” と歯ギシリしただろう、ザマーみろ、だ。

「・・・・え? これ・・・・ これ、は・・・・?」
「テンゾウ!! その土遁のチャクラなんだっ?!」
「うわっ! 地面からっっ!! カカシさん! テンゾウさん!」
「「イルカッ!!!」」

水遁と土遁を組み合わせたら面白いかも、って昨日先輩が言って、早速土遁チャクラを練ってたんだけど。
ボクの練ったチャクラは、どんどん地面に吸い込まれて・・・・ 突然足元がグラグラと揺れ出す。
ボコリ、ボコリと地面から何かが突き出てきた。 これは・・・・ 根? 木の根か?! まさかっ!!
これがボクに眠っているという木遁チャクラ?! 根はどんどん育ち、イルカを呑み込み始めた。

「う、くそ、放せ! このっ・・・・・・!!」
「カ、カカシ先輩! どうすれば・・・・ 抑えきれませんっ! うわっっ!!!!」
「くっ・・・・・ イルカ、テンゾウ、くそっ!! 千鳥ーーーーっっ!!!」

自分で木遁をコントロールする事ができないボクは、同じく成長する樹木に呑み込まれそうになった。
里の忍びが天才と呼ぶ、次期火影波風ミナトの愛弟子。 ボクが目標に決めた男の力を、この目で見た。
カカシ先輩が雷遁で雷を呼ぶ。 バチバチと青い稲妻の衝撃が、木々を裂き、薙ぎ払っていった。
ひと際大きな雷が空から。 それは先輩も想定していなかったような軌道を描いて落ちてきた。

「なんでっ!!!! イルカ、テンゾウ!! 間に合ってくれ!! 千鳥、相殺っっ!!」

あのまま落ちて来てたら、感電死で黒焦げ。 雷は間違いなく、ボクとイルカに直撃してた。
雷を忍術に取り入れた術。 先輩の雷遁は自然と同調し過ぎて、本物の雷を呼んでしまったようだ。
大自然が作り出した脅威、稲妻を。 先輩は放った雷遁 千鳥で相殺した。 雷を雷で切ったんだ。
雷遁に感動したイルカが、スゲー技名ひらめいたと、“千鳥”を“雷切”と勝手に名付けて威張ってた。