小さな恋の行方 17   @AB CDE FGH IJK LMN OQR S




なんだかなぁ。 たしかにその前は、自分が煽った責任は取らなくちゃ、って頑張ったんだけど。
昨日はなんて言うかその・・・・ いつもにもまして、甘えん坊コンビ全開だったと言うか・・・・。
ふたりが大好き、この世で一番好き、俺達は三つで一つの魂だと、ずっと言わされ続けた。 まったく!
どこの駄々っ子だよ、みたいな感じ。 それもそのはず、狩野さんの依頼は、思わぬ展開をみせたから。




『いい? イルカ、ボク達は心技体、三つで一つ。 心だけどっかに行っちゃったら駄目だよ?』
『あ、あ、ん、・・・・ はっ、はっ・・・・ いか、ない、 んん、どこ、にも・・・・ あっ!!』
『イルカ、言って。 オレ達の為に生きてる、って。 オレ達を生かす為に生きてる、って。』
『うぅ、んん・・・俺は・・・はう、全部・・・カカシさ、とテンゾ、んで、うまって、る、ふぅっ!』



『で?? “俺達は三で割ったら理想の忍びです” 昔、四代目夫妻の慰霊碑に報告しましたよね?』
『『だって・・・・・・。』』
『・・・ぷっ! くすくす! もういいです。 ふたりが側にいてくれる、それだけで俺、幸せ。』
『『・・・・・・・もう一回する・・・・。』』
『えっと、あの・・・・ 明日俺、伝令なんですよね、確か。』
『『うん。 でも、もう一回するっっ!!!』』






で、今に至る。 俺は国主の妹君、美咲様に謁見している・・・・・ もう、コチコチでガチガチだ。
おおまかな事はウチのふたりから聞いた。 俺は伝令として、火影様の言葉を伝えるだけなんだけど。
うう、近いっ!! 琴音様の時は、こんなに近くなかった! 覇気が、ビシビシ伝わってくるんだ。
伝令を聞いた美咲様は、上忍師を失ったばかりの里に迷惑をかけてしまったな、許せ、とおっしゃった。

「佐上上忍は素晴らしい方でした。 琴音様の為に、里の為に。 今でも俺達の中に生きています。」
「狩野はその上忍師のファンじゃそうじゃ。 ゆっくりと参らせてやってくれ。」
「はい。 それはもう。 風琴守世度の慰霊碑に、わざわざ隠密でいらして下さったのですから。」
「火影殿の気持ちを思うと、申し訳なく思うぞ、さぞ辛かろう。 すまぬ、と伝えてくれ。」

例えば。 俺達忍びが国の手足なら、炎一族は国の顔。 そして、そこに住む全ての民は国の心だ。
全部合わさって、始めて火の国になる。 心が泣いても、顔で笑って乗り越える、手足の動く限りずっと。
痛みを知っても笑える強さ、痛みを乗り越える力強さ、それこそが炎一族、そして木の葉隠れの里なんだ。
辛いのは自由のないこの方だろうに。 この人は琴音様と同じ、国の道具としての役目を知っている。

「・・・・木の葉の、何を泣く? そなたは忍び、我が国の手足ぞ?」
「・・・・・・申し訳ありません、国に縛られる炎一族に代わり、しばし泣く事をお許しください。」
「涙もろい忍びもおるもんじゃな。 じゃが、そうか。 私の為に泣いてくれておるのか、礼を言うぞ。」
「うぅ。 狩野殿は、木の葉が責任を持って、城までお送り、致し、ます、くぅっ・・・・。」

琴音様の時もそうだった。 おとぎ話の真実を知って、あまりのやるせなさに泣いてしまった。
今回の事も、そうだ。 美咲様が原因で、カズハ様の兄上が殺されていて、そのカズハ様も狙われてます、
そんなこと、この人に言えるはずがない。 “小さな恋を守りたい” そう狩野さんは言ったそうだ。

木の葉と狩野さんの事ばかりを気にかけて。 美咲様はご自分の恋は置き去りで、ほんの欠片も見せない。
炎の一族であっても、忍びであっても、恋のひとつもしても良い。 狩野さん、俺もそう思いますよ。
好きな人に好かれていて自分も好き、でも言ってはいけない。 そんな事、俺だったら耐えられない。

「そう言えば美咲様、ご縁談があったそうですね。 良縁だと聞きました。」
「さすがに木の葉は情報が早いな。 月の国じゃ。 私が嫁ぐことで、両国のプラスになる。」
「また日を改めて、我が影がお祝い申し上げると。」
「義母を失ったこの国の民の悲しみを、婚礼の儀の知らせが、少しでも癒してくれると良いのじゃが。」

はい。 忍びはその為に暗躍するのです。 事が明るみに出て争いが起き、民が苦しむ事のないように。
今朝、暗部の司令塔が星隠れに飛びました。 カズハ様をお守りし、必ず美咲様との再会を果たします。
そして、三代目が雲隠れに。 雷影に事の真相を知らせ、形のない星隠れとの交戦を止めさせる為に。
火と月の明るい知らせだけを、両国の民が知る。 三つの隠れ里の影が、見事それを実現するでしょう。