誰が道を歩くのか 12   @AB CDE FGH IJL MNO PQR S




う〜ん、可哀想な話ではあるけど・・・・・ その三笠屋のお嬢さんは、人を理由もなく殺したのよ?
夢の国で自分が落札した子であっても。 気に入って、お店の事も教えて可愛がっていた、それなのに。
過去に起こった事は不幸な偶発事故だった。 でも無意識とはいえ、その子を殺してしまったのは事実。
忍びは人を殺すけれど、理由のない殺しはしないわ。 それをやったら人じゃなくなると知っているから。

それに無意識で、なんてもっと駄目。 人の命を奪った事実をアタシ達 忍びは絶対に忘れないのよ?
忘れちゃいけないの、奪った命の重みは。 どんなに正当性のある殺しでも、無かった事にしては駄目なの。
自分のとった行動の全てを死ぬまで忘れちゃいけない、それが忍びとして、人の命を狩る責任だと思うわ。

まだ6才だったけど、アタシの父は全て教えてくれた。 弟が死んだ事も、それが忍びの世界だという事も。
サクモさんは弟の遺体を見つけてくれて。 魂を里に連れて帰って来てくれた。 だってそれが現実だもの。
三笠屋さんも、それがどんなに残酷な事実であろうと、娘にはちゃんと伝えてあげるべきだったのよ。
忍びの資質を持っていた少女なら、弟を殺した事に耐えられず、自分で記憶を封じてしまった可能性がある。

「・・・・・・・三代目は、そう予想された。 だからチャクラ質の異なるお前達を寄越したんだろう。」
「どう転んでもいい様に、はその為か。 そのお嬢さんを・・・・ 木の葉の忍びにするつもりなのか?」
「さあ、それはなんとも・・・・。 今は三代目の指示待ちだ。 式は飛ばしてあるからな。」
「忍術でもう一人の自分を作り上げたのね・・・・ でもまた同じ事が起きてしまうわ、きっと・・・・」

話を一通り終えて三代目の指示を待っている間、カカシの恋人候補イルカは、少しもじっとしていない。
これイケますよ? と梅こぶ茶を出してくれたり。 梅こぶ茶にはコレです! と塩アラレを出してくれたり。
若いのにじじくさい好みね・・・・ とは言えなくて、ポリポリと出された塩あられをつまみつつ、観察。
ふいに目が合うと、ニコリとするから毒気を抜かれる。 う〜ん、若いけど良い潜入員だわ、この子・・・・。








・・・・ねえ、カカシ? さっきから、テンゾウとコソコソ何話してんのよ。 アンタが話すべきはイルカ!
テンゾウとツルんでどうすんのよ! アスマが言った通り、テンゾウもイルカを狙ってんのよ? 分かってる?!
せっかく暗部に好意的な忍びなのに・・・・ チャンスを生かせないないなんて、アンタそれでも部隊長なの?!
え、なに? ・・・・・・・胸が一杯で・・・・・ 何を話して良いか分からない?? ・・・・・・カカシ。

「アンタどこのチェリーなのよっ!!」
「テンゾウ!! 童貞か、テメーッ!」
「チョ・・・・ ナニ言ってんの、紅!」
「と、突然なんですか、アスマさんっ!」

ハッ!! 本当、何言ってるのかしら。 カカシがてっきり、ここぞとばかりに話しかけるものと・・・・
焦れちゃったじゃない、アタシとした事が。 アンタがモジモジして一向に動かないから痺れが切れたのよ!
恋敵まで同席してるっていうのに、その恋敵と同じように・・・・・ ねえ、アスマ。 アンタも焦れたの?
そうよね? これだけアタシ達がチャンスを作ってあげてるのに。 自己紹介しただけ、だもん。

「うそぉ! マジで?! 暗部って、そこまで制限されてるんですか?!」
「「エ? え? ・・・・・ イヤ、あの・・・・」」
「それはない。 暗部では入隊祝いに廓遊びを教えるから。 今もだろ? な?」
「「ええ、そうです・・・・・。」」

「あはは! あー 吃驚した! 童貞だったら今夜、花街のお勧め店を案内しようかと思っちゃった!」
「お前なぁ。 もうちょっと気を遣えよ。 この二人はお前の・・・・・」
「暗部の司令塔、部隊長と補佐なんでしょう? さっき聞きました! ・・・・って! 〈ペシッ!〉 」
「・・・・こんな鈍感なくせに。 なんでおれのゴロゴロはバレるのか・・・・・」
「俺は猫じゃない、って言ってるだろうがっ!」
「「「「・・・・・・・・・・・。」」」」

こういうノリの二人だから・・・・ 忍びだとバレにくいのかも・・・・。 というか、シキさんって・・・・・。
きっと、イルカの反射神経を鍛えているのよね? 失敗する度、闘志を燃やしちゃうタイプなのよね?
カカシが部隊長補佐になる前の補佐、暗殺戦術特殊部隊の長だったんだもの、百歩譲ってそう解釈してあげる。
・・・・・と、自分に言い聞かせていたら、カカシが・・・・ イルカに手を伸ばした! ガンバよカカシッ!

シキさんがイルカに手を叩かれてブチブチ言ってたら、カカシもイルカに手を伸ばしたの。 羨ましかったのね。
シキさんみたいに冗談っぽく、イルカの顎に触ってみたいのかもしれないわ。 でもマジ顔は引かれるわよ?
自然にね? 猫だと思うのよ?  ・・・・・・・うん。 勇気を出したのよね? お姉ちゃんには分かるわ。

「「 ・・・・・・・・・・ イルカvv 」」
「はい、なんでしょう? ・・・・・・??」
「 ・・・・・ 梅こぶ茶のおかわり ・・・・・ 」
「 ・・・・・ 塩アラレもおかわり ・・・・・ 」
「えへへ! それ、結構イケるでしょう? シキ兄も俺も大好きなんですよ。 今お持ちしますね!」
「「・・・・・・・・・・。」」

そーっとカカシが触ったのはイルカの顎でも喉でもなく、肩。 ちょっとテンゾウ、アンタその手、邪魔よっ!!
せっかくカカシが勇気を出してタッチしたのに、アンタも同じ様に肩に手を置いてんじゃないわよっ!
なによ! アスマにどや顔なんてしなくていいのよっ! あ、カカシはいいのよ? うん、頑張ったわねーv

イルカの肩に触った手を、握ったり開いたりしているカカシ。 きゃ〜v とか聞こえてきちゃうほど乙女。
・・・だから! なんでそこでテンゾウとハイタッチなの?! 確かにテンゾウも乙女チックだったけど!
はいはい、でも匂いは嗅がないでっ! 変態じゃないんだから! 全く、あんなことで大喜びしちゃって・・・・・
恋愛に不慣れなカカシに、シキさんの様な高度なジョークセンスを求めちゃいけなかったわ、ごめんね・・・・・。