誰が道を歩くのか 13
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よしよし、頑張ったな? ・・・・・ちょろっと触っただけでその自慢げな顔はどうなんだ、テンゾウ!
?? ちょっと待てや。 確かにおれは火の寺に籠った。 その間、お前の兄貴はカカシだったかもしれねぇ。
だがな、そこでなんでカカシと一緒に喜ぶ必要があるんだ?! カカシもイルカを狙ってる恋敵なんだぜ?
・・・・・・おう、テンゾウ。 お前は暗殺戦術特殊部隊の部隊長補佐、だろ? 木遁秘術継承者だろ?
「・・・・・あんな少年のような目をしやがって・・・・。」
「・・・・・クールビューティーなあのカカシが・・・・。」
「「・・・・・・・・・。」」
なんだよ。 同情させる気なら無駄だぜ? イルカはおれも気に入った、テンゾウの恋人にする、決定だ。
暗部の長達と知っても、態度を変えるどころか気負いもしない。 お茶と茶菓子をサラッと薦めやがった。
・・・・上忍が他人の作ったモンを里外で口にするはずがねぇ、そんな事は忍び社会での常識だ、なのによ。
イルカはめったにいない忍び、掘り出しモノだ。 目の付け所が良いじゃねぇか、さすがだな、テンゾウ。
お前が惚れたぐらいだ、カカシも惚れて当然。 あの様子を見る限り目クソ鼻クソの勝負、有利に事を運べよ?
安心しろテンゾウ、お前の方が・・・・・ お前の方が・・・・・。 と、年が同じだ。 それに・・・・??
あれ? あとなんだ? テンゾウの方が有利になるようにPR出来る点は・・・・・ ???
まあいい。 そこはおれの力量でカバーだ、ダテに兄貴を名乗ってねぇ。 例えカカシと一緒に喜ぼうが。
ちょっと肩に触ったぐらいで・・・・ ふたりしてそのへんをゴロゴロ転げ回りそうな勢いだろうが。
初めてのイルカにタッチを実行できたんだ、もう大丈夫だろ? 後は慣れだな、慣れ。 対イルカ抗体を・・・
「・・・・・・・・ヘンな事聞くけど。 テンゾウ、隠れチェリーじゃないわよね?」
「おう、当たり前だ。 ・・・・・カカシこそ、隠れチェリーじゃねぇのか?」
「違うわよっ! 自分でスル方が楽なのよ、カカシはっ! そういう主義なのっ!」
「・・・・・・なんだよ。 それじゃ、テンゾウと同じじゃねーか・・・・。」
シキさんも言ってたが、暗部に入れば廓遊びの洗礼を受ける。 テンゾウもあの時言ってたからな・・・・。
火の寺に遊びに来て、おれに脱童貞報告をしやがった時だ。 みんな勇気があって凄い、とかなんとかよ。
マッパになって入り乱れ、くんずほぐれつ。 急所をさらしまくりの状況でよく平静を保てると感心してた。
“ボクは一人でスル方が気楽で良いですよ、生きた心地がしませんから。” なんて言って、笑ってたっけな。
「・・・・そうか。 アレはカカシの影響だったのか・・・・・。 ヘンなところ似やがって。」
「なによ、カカシが悪いっていうの?! 忍びとして、当然の危機感を教えただけでしょう?!」
「悪いとはいってねぇよ。 長年の謎が解けた、って事だ。」
「・・・・謎? 健全な自給自足スタイルが・・・・ 謎なの??」
火の寺にはよ、美味しそうなデリヘル嬢がよく遊びに来てたんだ。 テンゾウにいくら勧めても無駄でなぁ。
いや、デリヘル嬢の訪問はおれら傭兵の楽しみの一つだったからよ、当然チャクラチェックもしてあるんだが。
それでもテンゾウは警戒した。 ・・・・そうか。 無防備になる、というカカシの警戒心に同調したんだな。
ははは、しまいにぁ、アスマさんは少し油断し過ぎじゃないですか? なんて、逆に説教されたりよ・・・・。
おれの兄貴としての立場はどこに行ったんだ? 姉の幸せを見届けて、今度こそテンゾウの、と誓ったのに。
いつの間にか・・・ 兄貴の立場はカカシに持っていかれてたんだな・・・・・・ あ? 紅、お前もか??
テンゾウとばっかり遊んで、自分の事はかまってくれなかった? 当たり前だろ、暗部の司令塔なんだからよ。
「・・・・・いつの間にか。 弟は姉の知らないところで、どんどん成長していたのね・・・・。」
「おう、知らない間にいろんな事を見聞きして、おれ達より遥かに強くなったのがその証拠、だな。」
「カカシの出した答えが・・・・ あれなのね?」
「テンゾウの生き方は、ああなんだな・・・・。」
弟分に幸せを贈ってやろうと思っていた。 何が嬉しくて何が悲しいのかさえ分からなかったテンゾウに。
そうだよな、あいつはもう・・・・ あの時の様な、人の感情が分からない実験体だった子供じゃないな。
カカシが、親父が、木の葉の仲間が・・・・ いつも誰かがあいつの側にいたんだ。 今や部隊長補佐、だからな。
・・・・なあ、紅。 この勝負、引き分け、って事で手を打たないか? おれ達にとっちゃ痛み分け。 どうだ?
「・・・・・・決めるのはカカシよ。 アタシはカカシがしたい恋を応援するだけっ!」
「・・・・・・そうか、そうだな。 ありがとうよ。 お前はやっぱり、イイ女だな。」
「・・・・・・・ヤリチンの癖に、口説き方はいたって普通なのね?」
「おい。 なんだ、ヤリチンって。 どっからそんな・・・・・」
「火の寺の逆デリ上手なエセ坊主。 アンタの事でしょう、アスマ。」
「あ――― そんな事もあったな・・・・・ まあ、あれだ、ヒマつぶし・・・・・ いて゛ーーーっ!!」
「・・・・はい、火遁っv おほほほv 女の敵はくのいちの敵。 ごめんあそばせ?」
おーー 痛てぇ! ヒリヒリしやがる。 紅に髭を引っこ抜かれて燃やされた。 多分、4〜5本燃えたな。
シキさん、イルカの攻撃は凶暴とはいえねぇよ。 このクノイチに比べたら、可愛いモンだろ、どう考えても。
落とす気満々のおれに、一抹の不安がよぎったが・・・・・ まあ、なんとかなるだろ。 ・・・・多分な?
そうこうしていたら親父から式が来た。 依頼人にはおれ達が三笠屋へ行く事を伝えたらしい、書簡でな。
指示はこうだ。 その娘に事の全てを知らせた上で、記憶を消すか、チャクラ質を封印するか、を選ばせる。
・・・・そう、25才の成人女性。 親や番頭に決めてもらうのではなく、自分で決断しなくちゃならない。
楽な道を選ぶもよし、贖罪の道を選ぶもよし。 それは誰が決めるものではない、自分自身の事なのだから。
「よし、各自の役割を伝える。 紅は今のお嬢さんを説得、夕日家お得意の幻術、魔幻をかけてくれ。」
「はい。 そうですね・・・・ 強盗の人数で・・・・・ 充分ね。 あの日の記憶へのキッカケにします。」
「頼む。 イルカは一緒に幻術世界へ入って、あの日の少女に教えてやってほしい。 怒らせるなよ?」
「はい! これでもアカデミー教師志望です。 ・・・・忍術とは何か、子供にも分かってもらいます。」
「アスマとカカシは風遁と雷遁の暴走に備え、お嬢さんの術を相殺しろ。 殺気がないから注意しろよ?」
「いつ、どこで、どんな風に術が暴走するのか、全く予測が出来ない、ってコトだネ。」
「今までは実際に攻撃対象がいたが、今回は・・・・・ 幻術の中、ってワケか。 ち、めんどくせぇな。」
「一瞬足りとも気をぬくなよ? 無意識でも、彼女は二種類のチャクラを練れるんだからな。」
「テンゾウは部屋を木遁で覆ってくれ。 術者の紅、魔幻の中にいるお嬢さんとイルカの本体の保護も頼む。」
「はい、了解です。 それに彼女を拘束しておけば、術の暴走を警戒するだけで済みますもんね。」
「そういう事だ。 おれはご両親と番頭さんに全てを話し納得してもらう、火影の名代としてな。」
それぞれの役割分担が決まった。 そうだ、火の国一のかんざし屋のお嬢さんも、カカシも、テンゾウも。
自分の歩く道は自分が選び、その足で歩く。 他人があれこれ言うのは、あくまでも助言に過ぎないんだ。
お嬢さんにはお嬢さんの人生が、あいつらにはあいつらの人生がある。 おれ達は所詮、応援団って事だ。
弟可愛さに、おれも紅も目が曇っていたぜ。 この任務依頼で改めてそう気付かされた。 決めるのは本人だ。
これから皆で三笠屋へ行って、そこのお嬢さんに現実を突きつける。 便利屋しきちゃんの助っ人としてな。
お嬢さんのお部屋をリホームしに来ました、っつてよ。 ルームコーディネーターとかいうヤツらしい。
その後、おれと紅は夢の国へ出発だ。 あ? 何しに行くかって? もちろん競売に参加だ、決まってるだろ?