誰が道を歩くのか 9   @AB CDE FGI JKL MNO PQR S




ボク自身、暗部に入隊して色々な任務をこなして来たから、多分そうなんだろうとは思っていたけど。
大蛇丸の実験室の破壊。 きっと火影様と暗部が動いたんだろうな、って。 想像はついたけど、驚いた。
当時の部隊長と補佐が、実験室からボクを助け出してくれたのか。  ヒグマさんと、この目の前の人が。

シキさん、か。 話だけは聞いていた。 チャクラを識別できるから有利な戦いを展開出来た、って。
チャクラ質には相性がある。 例えば土は雷に弱い、火は土に弱いとかね。 敵に合わせて小隊を編制した。
敵のチャクラを戦う前に見分けられたから、常に敵の苦手なチャクラ質の隊を組んで応戦したらしい。
ボクが暗部に入隊した時、カカシ先輩は補佐に任命されたばかりで。 シキさんとは入れ違いだった。

シキさんの引退後、数年でヒグマさんも引退した事になる。 ボクが補佐に任命されたのは14才の時だから。
前部隊長のヒグマさんは引退後、忍者アカデミーの管理職、アカデミー長になってアカデミーを運営している。
暗部の引退後は、自分の好きな道を歩んでいいと言われているが。 二人とも奇特な選択をしたもんだなぁ。








・・・・・いや、シキさんに会えたのも吃驚したんだけど。 ボクの恋人候補が・・・・ ここにいるとか。
ボクは大蛇丸の実験室から助け出されて、火影屋敷で内密に育てられた。 アスマさんはボクの兄も同然。
人間らしい感情があまりなかったボクに、たくさんの感情を教えてくれた。 そのアスマさんが言ったんだ。
ある人の前ではドキドキ、ソワソワして落ち着かなくなるのは、それはボクが恋をしているからだと。

さっきの今で、まだ信じられないけど。 あの、ほんのり温かい思いは・・・・ 愛情なんだそうだ。
愛情なら、誰かを大切にする思いなら、ボクは知ってる。 三代目やアスマさん、里の民や火の国の民。
皆、ボクの守りたい大切なモノだ。 でもアスマさんは、それよりももっと深い愛情の事だと言った。

「アスマさん、その・・・・ あの子がここに・・・・ 居るんですか?」
「紅、オレが言ってた子が・・・・ その、シキさんの弟・・・・なの?」
「・・・海野イルカ中忍。 九尾襲来で両親が殉職。 下忍になってすぐ潜入部隊に配属された。」
「「海野・・・・ イルカ。」」

「ずっと市井と里を行ったり来たりだ。 行く行くはアカデミー教師になりたいそうだぞ?」
「・・・・そっか。 シキさんが 親代わりだったんですネ?」
「まあな。 九尾孤児は皆、潜入部隊の誰かと組んだ。 疑似肉親体験も出来るしな!」
「・・・・じゃぁ、イルカ中忍もシキさんをお兄さんだと?」

そうか。 イルカ中忍も、お兄さんと慕う人が側にいたんだね? 凄く嬉しかっただろうね、分かるよ。
ボクもアスマさんをそう慕って来た。 カカシ先輩も紅さんを、実の姉の様に思っているって言ってたんだ。
・・・・・・・だからかな? カカシ先輩の言葉使いは、どことなく丁寧で上品だ。 今、ふいに思った。
ボクはアスマさんとは、仲抜けのブランクがあるから、あんまり言葉使いへの影響は受けなかったけど。

「カカシ、お姉ちゃんに任せなさい! だてにブラコン呼ばわりされてる訳じゃないのよ?」
「テンゾウ、オレに任せとけ! なに、ブラコンならおれだって負けてねぇ! そうだろ?」
「「・・・・・・今度はブラコン対決??」」
「あはは! なんだよおい、重度のブラコンが二人いるんじゃないか!」

そうそう。 アスマさんも紅さんも、里では有名なブラコン。 二人とも早くに姉弟を亡くしたからね・・・・。
可愛がってもらっているボク達は、その愛情を無視する事は出来ない。 だって嬉しかったしね、本当に。
何もなかったボクの世界に、大切な人との繋がりをたくさん作ってくれた。 きっと、紅さんもそうだ。
自分が何をやっても “そうか” と理解してくれる人がいるっていうのは・・・・ もの凄い励みなんだよ。

「「違うっ! 恋人候補の説得対決っ!!」」
「おー 息ピッタリだな! あははは!!」
「「・・・・・・・・・・くすくす!」」
「「・・・・・・・・・。」」

アスマさんと紅さんは同い年、カカシ先輩は違うけど、でも同期らしい。 よく火影屋敷に遊びに来ていたんだ。
ボクはアカデミーには通わなかったから、同期というものがいまいちよくわからなかったけど、皆仲が良かった。
屋敷に居る猿飛家以外の子供が気になったのかもしれないね、カカシ先輩とはそういう面でも話が合った。
なにがって、ちょっと過保護な兄姉談議とかだ。 “虫よけ大作戦” と称される異性いびりも、その一つ。

アスマさんはボクの、紅さんはカカシ先輩の、少しでも色の混じった話が出たら、そりゃもう大変だった。
すっと昔、女の子から誘われて、いざ待ち合わせというのをしてみら・・・・・・ すっぽかされたんだよね。
カカシ先輩に聞いたところ、それは皆が呼んでいる虫よけ大作戦というヤツで、自分もやられた牽制だそうだ。

そんなのが続くと、自然と恋愛事からも遠ざかった。 実際、九尾襲来以降、そんな暇なかったしね。
あれからは、ただ里の復興と民を守る事だけを考えて・・・・・ 恋なんて知らずに来たよ、今まで。
ふふ。 ここに・・・・ もうすぐ情報収集をして帰ってくるらしいんだ。 ボクが気になるあの子が・・・・・
・・・・・いや、違うな。 さっきからの紅さんの言動は、アスマさんと同じだから。 多分、カカシ先輩も。

なんだろう。 カカシ先輩も・・・・・ 気になるのかな? 先輩はボクより恋愛事情に疎いんだよね。
紅さんのチェックの目が絶えず光ってたから。 それに、紅さんみたいな綺麗な人がいつも近くにいたら・・・・
どんな女の子も色あせて見えるだろうと思う。 だから男だけど、あの子が気になったのかもしれないね。