誰が道を歩くのか 14   @AB CDE FGH IJK LNO PQR S




いい? 今から話す事はあなたをとても苦しめる事。 でもあなたは知らなくちゃならない、全てを。
夢の国であなたが落札した少年を覚えてる? ・・・・・ええ、その子。 その子がどうなったかは?
火の国が珍しくて家を出たままそれっきり、もう帰っては来ない・・・・・ か。 それは封印術というの。
番頭の尾嶋さんが、皆にそう言ったのよね? あなたはそれを聞き、無意識で自分の記憶を封印しただけ。

「何を・・・・ おっしゃっているのか、よく分かりません。」
「そうね、今のあなたは嫌な事を全部もう一人の自分に封印してしまった、弱虫なお嬢様だもの。」
「!! あ・・・・ あなた、酷い事をサラリとおっしゃるのね、便利屋さん。」
「それが違うのよ。 便利屋しきちゃんのお手伝いで来たアタシ達は、木の葉隠れの忍びなの。」

そう、あなたも同じ、忍びなのよ?  ・・・・・何を言ってるのか分からないという顔をしているわね。
無理もないわ、あなたは昔、その可能性を奪われたんだから。 そして自分自身もその道から逃げた臆病者。
ごめんなさいね、わざとキツイ言葉を選んで、あなたが傷付くようにしてる。 ・・・・・なぜだかわかる?
昔のあの事件は、正当防衛の末の悲しい事故だった。 でも今回あなたは故意的に人を殺してしまったの。

「わ、私は人など殺してはいませんっ! なんて恐ろしい事をおっしゃるのですかっ!!」
「いいえ、これはまぎれもない事実なの。 夢の国であなたが気に入って落札したあの男の子よ。」
「だってあの子は・・・・・ いなくなってしまって・・・・・」
「いなくなったんじゃない、殺した。 あなたがその手でね。 正確には、もう一人のあなたが。」
「?! ・・・・・・それは・・・・どういう・・・・・ 意味です、か?」

大切に育てられた三笠屋の一人娘のあなた。 でもその愛情は、もう一人のあなたには与えられなかった。
あなたは自分付きの下働きにすると言って、夢の国で小さな男の子を落札した。 おかしいと思わない?
どうしてそんな小さな子を、自分の側におこうと思ったの? 気に入ったと、養子縁組まで予定していた。
まるで年の離れた弟が出来たみたいに喜んでいたらしいわね、お店の事も色々教えてあげたんですって?

そうなのよ、その不自然さがあなたの記憶の扉だったの。 あなたには本当に血を分けた弟がいたのよ。
20年前、この三笠屋に強盗が入ったの、幼い姉弟がお留守番中にね。 なぜか5才の姉だけは生き残った。
そう、あなたよ? 両親のどちらかの遠いご先祖様に忍びがいたのね、あなたにはチャクラ気質が眠っていた。

「・・・強盗が・・・・。 弟、がいて・・・・ 生き残ったのが、私・・・・??」
「あなたは自分と弟を守ろうとしただけ。 その時に・・・・ 潜在チャクラ質が目覚めたの。」
「チャクラ・・・・ 忍び・・・・ 私が・・・・・ ??」
「ええ。 5歳のあなたは、盗賊を一人残らず殺した。 そして暴走したチャクラで実の弟さんまでも。」

「私が・・・・・・ 本当に私が殺したの? 盗賊を・・・・・・ 弟を?  ・・・・・あの子を?!」
「術のコントロールが出来ないあなたが殺してしまった、それが事実。」
「そんな・・・・・ でも私は・・・・ 何も・・・・ 何も覚えていないんです、何もっ!!」
「思い出してもらいます。 その為にアタシ達木の葉の忍びが、こうして来たんですから。」

取り違えないで下さい。 あなたにキツク言ったのは、あなたが事実を受け止められると思ったから。
忍びの里で、二つ以上の術を同時に操れる忍びは、上忍になれる可能性を秘めています。 ええ、あなたも。
確かにご両親の思いやりもあったかもしれない、でも。 無意識下で20年もの記憶封印は、凄い事なのよ?
上忍になれる資質が眠ってる、今もあなたの中に。 木の葉の忍びは皆、仲間を信じる強い心を持っています。

・・・・・代々木の葉隠れの里に受け継がれて行くモノ。 それを里では “火の意志” と呼んでいます。
あなたの中にも、その火の意志があると思ったから。 だからあなたを信じて、事実を話そうと思ったの。
ただ不幸な出来事だったと、慰める事も出来たわ。 でも非難もされなくては駄目なのよ。 人を殺したから。

「あの子の為に泣き、非難する家族。 夢の国に売られた子、多分いないと思うけどアタシが代弁したの。」
「・・・・・・・あぁ・・・・・ 私・・・・・ は・・・・・」
「アタシ達忍びが人の命を狩る時、どこかで誰かの非難の涙が流れる。 それは当然の代償なのよ。」
「・・・・・・・はい。 お願いします・・・・ 私の記憶を・・・・ 扉を開けて下さい・・・・。」
「そう言って下さると信じていました。 いいですか、忘れないで下さい。 あなたの心は強いんです。」

絶対に大丈夫、あなたなら・・・・・。 彼女に必ず思い出させるからと約束をして、眠ってもらった。








三笠屋の今のお嬢さんの説得は成功、心の受け皿の準備が出来た。 ・・・・・イルカ、用意は良い?
シキさんの言った通り、彼女を怒らせては駄目よ、イルカ。 彼女と同じ幻術の中に入るという事は・・・・
彼女の世界に入る事になるの。 その世界で彼女がイルカを傷付けたら、本体にも少なからず影響が出るわ。
アタシは幻術世界を管理する立場にある、イルカの合図を見て、現実に戻す為の監視者の立場なのよ。

「はい。 合図は・・・・ これです! カッコよくシュパッとベストから出しますからね?」
「ぷっ! なに、暗部のお面じゃない! カカシかテンゾウに・・・・ 借りたの?」
「いえ、シキさんから。 これカッコいいですよねー 暗部参上! なんちゃてっ!」
「あー ちょっと待っててくれる? それは没収。 いいから、いいから!」

そう言って楽しそうなイルカの手から、シキさんの暗部面を没収した。 代わりに渡すから、待っててね?
・・・・・ん。 ほら、何やってんのカカシ! アンタの面を貸しなさいっ! ・・・・・テンゾウもっ!!
ほんと鈍いわねアンタ達。 こういう所でPRしないでどうすんのよ、もう! さっさと貸すのっ、ほらっ!!
ちょっと、血なんか付いてないって! そんなに磨いたら面がハゲるじゃないの! 馬鹿でしょう、アンタ達!

「お待たせv カカシとテンゾウのよ、これを使ってあげて?」
「わ、現役暗部の!! カッコいいっ!! じゃあ、こう・・・・ 胸にクロスする感じで・・・・ ポーズ!」
「ふふふ! ガイみたいなヒーロー好きがここにもいたのね。 了解、合図はそのポーズね?」
「カカシさん、テンゾウさん、ありがとうございますっ! ひゃー 素顔見ちゃった!」

「・・・・・・・どう? ふたりとも・・・・・ カッコいいでしょう?」
「はい! 目がとっても優しそうです! ・・・・幻術世界では忍服ですが、今はずっと抱きしめていますね?」
「「え、え・・・・・あの・・・・・・  い、今・・・・??」」
「ばーか。 面の事だよ、面の。 嬉しそうにソワソワしてるんじゃねーよ。」

「この着物の懐に入れて・・・・ っと。 よし! いつでもOKですっ!」
「くすくすくす・・・・・ じゃぁいくわよ?     ・・・・・・・・・・・・・・魔幻、発動っ!」
「「・・・・イ、イルカ! 気をつけて!」」
「あー ちょっと遅かったな? さあ、おれ達も準備しよーぜ。」

残念、もう幻術の中よ。 でもイルカはアンタ達の目が好きなんですって、優しそうで。 ふふ、良かったわね?
・・・・・アタシはカカシの姉なの、それはこれからだって変わらないわ。 これぐらいの応援、普通よね、アスマ?