誰が道を歩くのか 17   @AB CDE FGH IJK LMN OQR S




イルカが幻術世界に入ってしばらくして、それは突然起こった。 眠っているお嬢さんの体からチャクラが。
もちろんテンゾウが既に彼女を木遁拘束していて、術を相殺するだけだケド。 オレ達はその術に驚いた。
別々に発動したモノじゃなく、既に術として完成されていた。 風遁と雷遁を同時に操っていたんだヨ。
雷の気質を纏った風が、辺りを切り刻み始めた。 テンゾウの木遁が部屋を覆ってあって良かった、マジで。

オレ達が相殺した術は、消える瞬間に火花が飛び散る。 雷遁はこれだから厄介・・・・ ってオレもだケド!
火花は鋭い光の雨となり、テンゾウの木遁に刺さりまくったんだ。 その度に修正して、テンゾウも大活躍。
お嬢さんも紅もオレ達のイルカも、がっちりガード! やー ホントこういう時、木遁って、便利だネー。
おかげで術の相殺に集中出来た。 シキさんの言った通り、一瞬でも気を抜くと大変なコトになってたヨ。

アスマとタイミングを合わせて、彼女とまったく同じ量のチャクラを練り、風雷遁をぶつけ、相殺した。
結構余裕そうに見えたかもしれないケド。 コレ、多分アスマとオレじゃなきゃ、ヤバかったと思うヨ?
こっちも同じ量の術を作ってぶつけなきゃ、術は相殺できないからネ。 彼女は、スゴイ逸材だったんだ。

やがて嵐の様な術の、二度にわたる暴走が終わった。 イルカが幻術の中で、彼女の説得に成功したんだヨ。
お嬢さんを見ると、眠ったままのその目から涙が流れていた。 イルカはなんて説明してあげたんだろう。
オレ達に “目が優しそう” なんて言ったケド、それはイルカの方だヨ。 物事を慈しむ目をしてるんだ・・・・
きっと彼女にとって一番欲しい言葉を探し、それを与えたに違いない。 チョットだけ羨ましいな、なんて。







オレ達の視線を感じたら、必ず微笑んだイルカ。 三代目の目くらましの術で、自分が見えていないと思って。
上忍クラス、それもかなり熟練した潜入員と三代目の術の組み合わせなら、さすがにオレ達でも気付かない。
でもね、イルカぐらいのレベルの術+三代目の術なら・・・・・ オレ達には見えるんだよネ。 コレ、内緒!
他の潜入員はサ、露骨に視線を反らすんだヨ。 見えてないと思っても、関わりたくないのが本音だろうネ。

だから最初、ビックリしたヨ。 オレ達が見えてるのに気付いたの? って。 でもそうじゃなかったんだ。
イルカの微笑みは “お疲れ様でした” っていう、同じ忍びに対する労わりの微笑み。 優しい、慈しみの。
オレね・・・・ ドキドキしてすぐ目を反らしちゃった。 こっちが反らしちゃったんだヨ、オレの方が!

どんな姿で里に戻って来ても、その微笑みは変わらなかった。 そりゃ、シキさんの影響かもしれないケド・・・・
暗部に対する畏怖の視線とはほど遠い、心地の良い視線。 出ないケド、涙が出るほど嬉しかったんだよネ。
それはテンゾウも同じ思いをしてた。 オレ達二人には見えていたんだから、当たり前なんだケドさ・・・・。
テンゾウもイルカと青春したいの? オレと一緒?? だったらイルカを半分っこしよう? って。

・・・・フフフ、便利屋しきちゃんのイルカ君は作務衣姿。 オレとテンゾウの面をしっかり懐にしまってる。
本当にあのポーズしたのかな・・・・ イルカ、ノリがガイみたいだヨ? 明るくて真っ直ぐな忍びだネ。
例え幻術の世界でも、オレ達の面を手にとって、ポーズを決めて満足そうにしているイルカを想像すると・・・・

「スゴク・・・・・ 温かいネ、ココが。」
「ええ、なんでしょうね、こう・・・・・」
「「・・・・・・・・・・・・。」」

今ね、スゴクくだらないコト思いついちゃった! 幻術の世界にいて、眠っている今なら触れるかも、って!
オレがこう思うってコトは、テンゾウもそう思ってるとみて間違いない。 この沈黙は何よりの証拠だーネ。
あのシキさんでさえ、まだ触らせてもらっていないアゴ! イケるかな・・・・ ネ、どう思う、テンゾウ?
触ってみる? 多分だケド・・・・・ イケるよネ、今なら! そぉーと、人差し指をイルカに近付けた。

「「 ・・・・・・・・・・・・ゴロゴロ・・・・  」」
「ん、んん・・・・・・・  ハッ!!」
「「っっっ?!」」
「只今、戻りました! わー 何の変化もない・・・・・ 凄いや、さすがですね、皆さんっ!!」

今、心臓が飛び出るかと思った・・・・・・ ハァ――――― ビックリした! あと、それと・・・・・
別にそんなつもりじゃないケド、イルカの “んん・・・・” の声が、妙に腰にキて・・・・・ ギャーー―ッ!
テンゾウ! お前、ナニ起ててんのっ! ダメじゃないっ!! ・・・・・・ぇ。 オレ・・・・も?!
チョット待って! ストップッ!! コッチ見ないでネ、イルカ! 今、頑張って鎮めるからっ!!

「あ、お面! ありがとうございました! カッコよく決めちゃいましたよ、俺! へへ、バッチリ!」
「「・・・・・・・・・・・ちょ・・・・ ごめんっ! トイレーーーーッ!!」」

「暗部の司令塔でも、さすがに緊張の糸が切れたのかな・・・・・ ふふふ!」

「 ・・・・・・バカカシ・・・・・ 」
「 ・・・・・・アホゾウ・・・・・ 」

だってしょうがないじゃないっ! あのタイミングで目を覚ますんだもんっ!! でもアゴ、触っちゃったっv
あんな声で起つなんて、ビックリだヨ、マジで! さらに止めは、直でニッコリ・・・・・ 不可抗力だよネ?!
思わず二人でトイレに瞬身移動した。 テンゾウ、大きいお店で良かったネー、トイレの個室が二個もあるヨ?