誰が道を歩くのか 3   @AC DEF GHI JKL MNO PQR S




「ちょっと! ウチのカカシに色目使わないでくれる? ミエミエよ、アンタ。」
「・・・・・・・な、なによっ! 紅のモノでもないじゃないのっ!!」
「あら知らなかったかしら。 アタシはサクモさん公認のカカシの姉、なの。 おわかり?」
「だからって、何よ! 私のどこがカカシに相応しくないっていうの?!」

「全部v ブブー 却下っ! そもそもカカシには好きな子がいるから無理っ! 諦めて?」
「なっ!!! なんでそんな事、紅から言われなくちゃならな・・・・・」
「告白してから恥かくのはアンタだから。 くのいち仲間としての思いやりーv」
「ふんっ! ・・・・・・・聞きしに勝る、ね。 このブラコンッ!」





ブラコン? 上等じゃない。 好きなだけ言いたいように言えばいいわ、アタシはカカシの姉、なの。
アタシにはね、血の繋がった弟がいた。 今の様に、アタシがカカシの姉だと名乗るのには訳があるの。
木の葉の白い牙と言われた英雄、カカシのお父さんのサクモさんが、生前そう言ってくれたから。

サクモさんが心ない忍びに避難され自害しようと、早熟なカカシに反抗期が来てサクモさんを罵ろうと。
アタシはサクモさんがどういう忍びなのか知っていたもの。 カカシもいつか気付く、そう信じてた。
カカシの気持ちは痛いほど分かった。 サクモさんの自害を止められなかった自分を責めてる、って。
アタシも父を責めたから。 自分の力が足りないばかりに弟を攫われたのに、全部父のせいにして責めた。

第三次忍界大戦の時、アタシの弟は殺され、木の葉の白い牙 サクモさんが遺体を見つけてくれた。
夕日家の幻術は後方支援に来られると厄介だから脅しね、敵忍に誘拐されたのよ。 まだ4才だった。
【もし木の葉の夕日がこの戦いの援護に加わったら息子の命はない 誠意をみせよ】そう脅迫された。

それでも父は弟を犠牲にして戦いに参加したの。 切り捨てたのよ、弟を。 父を激しく責め、恨んだわ。
そんなに里が大事なのか、実の家族よりも弟よりも! 行かなければ良いだけじゃないの! そう罵った。
夕日家の者が戦いに参加しなくても、里の忍びは一杯いるでしょう?! それでも父親なのかと、恨んだ。
でもそれよりも・・・・ 木の葉の下忍なのに己の弟たった一人を守れなかった自分が、情けなかったわ。

戦いから帰って来た父は、6才だった私に全てを教えてくれた。 とっくに弟が殺されていた事も全部。
信用出来るのは仲間だけ。 残念ながら他里の忍びの手に渡った時より、弟の命はないものと思ったと。
事実、サクモさんが忍犬を使い探し出してくれた弟は、脅迫が来た日より前に殺されて埋められていた。

敵方の増援がいつ来るかもしれないのに、戦いのあった陣営でずっと探してくれてたんですって。
何の得にもならないのに、弟を見つけてくれた。 木の葉の仲間だから、里の家族だから、というだけで。
戦いの中で気を反らせばどんな事も命取りになる、なのに。 今ならそれがどんなに凄い事か分かる。
サクモさんはそういう人だった。 仲間を・・・・・決して見捨てない、誇りある木の葉の忍びだった。

血の繋がりがなんだと言うのだろう。 人が人を思う繋がりに比べれば、なんて軽い繋がりなのか。
下忍になってすぐ、6才になったアタシは血の繋がった弟を亡くしたけど、血の繋がらない弟が出来た。
あの時、目の前で弟を攫われ自分の身を守る事しか出来なかった私に、サクモさんと父はこう言ったの。

『知ってると思うけど、私の息子はこの子と同じ位の年なんだよ。 自分を責めちゃ駄目だ。』
『紅、木の葉の忍びは約束は守るが、他里の忍びはそうじゃない。 覚えておけ、これが現実だ。』
『里の名家の子供達は、常に狙われる存在なんだ。 これからはカカシを弟だと思ってくれるかい?』
『まあ、カカシ君の方が出来の良い弟だがな、はは・・・・ 紅、お前だけでも助かって良かっ・・・・っ!』

そして父は私を抱きしめて泣いた。 初めて見る父の涙だった、後にも先にも父が泣いたのはあの一回だけ。
あの時からカカシはアタシの弟なの。 姉のアタシより強くていつも上を行くけど、カカシは大切な弟。
九尾襲来の時、四代目や三代目、父達に未来を生きろと言われて・・・・ アタシ達はその通りにしたわ。

カカシは強い、アタシより遥かにね。 けど里の復興の為に脇目も振らず頑張って来たカカシに・・・・。
そんな頑張り屋の弟の為にも、カカシの見目だけに寄ってくる様な、ヘンな女を近付ける訳にはいかないの。
だってアタシはサクモさん公認のカカシの姉! ですもの。 カカシが幸せになる道を、必ず探してあげる。
 






「アー 紅。 今更なんだケドさ・・・・ オレも青春してみたいんだケド・・・・・・」
「何言ってんの、カカシッ! クールビューティーなアンタが、ガイみたいな事言わないでっ!」
「なんで? ガイは青春だー って、女の子追っかけまわしてるヨ? フラれるのも修行だって。」
「カカシにはピッタリの人をアタシが選んであげるんだからっ! サクモさんと約束したものっ!」
「ハイハイ、またそれネ。 ・・・・でも。 気になる子が一人いるんだヨ、どうしよう・・・・」

「・・・・・・・・・・・・まさか。 カカシ、アンタ本当に好きな子が?!」
「ン〜・・・・ なんだか分かんないケド・・・・・ ドキドキして・・・・・」
「カカシッ! どこの誰なの?! お姉ちゃんに任せなさいっ!」
「ホラ、あの・・・・ 三代目のトコによく来るでしょう? あの子・・・・・」

お姉ちゃんは中忍。 でもカカシは暗殺戦術特殊部隊の部隊長。 こんなに階級似差があっても弟なの。
カッコよくて強くて自慢の弟なのよ、それはもう! どこの馬の骨とも分からない様な女は却下よ。
私達正規の忍びは任務受付所に行くから、三代目のいる火影室に直接出入りは、ほとんどしない。
だから火影室によく来る、って言われてもピンとこない。 カカシは火影の直轄部隊だからよ?

でもまさか・・・・・ 自分がチャラ娘を追い払っている言い訳が、本当になる日が来ようとは・・・・。
なんか嘘が現実になるなんて、ちょっと凄くない? アタシの幻術モノホンになるから、なんちゃって!
もしそうなったらアタシは木の葉の幻術使い、夕日家の魔女として超有名になれるじゃないのっ!

・・・・・・・はっ! 違うわ、アタシはカカシを心配しているだけ。 三代目の所ね? 分かったわ!
カカシが言う所の “よく来ている” というのは、どれぐらいの頻度かしら? まあいいわ、行ってみる。
ふふふ、こういう時に便利なのがアスマ。 火影室に中忍が行っても不自然じゃない理由になるわよね。
アスマは三代目の実子。 ついこの前、火の寺から戻って来たところ。 私の同期なのよ、上忍だけど!

「三代目、失礼します!  アスマどこに居るか知りませんか?」