生駒城の家守 10
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乾物屋のおばちゃんは俺を覚えててくれて、お勧めを色々教えてくれた。 カラフルなきな粉や砂糖。
俺も“おばちゃんの店の品ぞろえが凄いから、また来ちゃった!”と言っておいた。 嘘も方便だろ?
なんか。 ダルイさんって、ほんといい人だよな。 上忍が砂糖やきな粉の買い出しに付き合うか?
皆が皆、そうじゃないと知ってるけど。 5年前、誘拐未遂を起こしたあの雲の忍びとは思えないよ。
昨日はコレを買ったんです、モンザ様は揚げパンが大好きなんです、ダルイさんリクエストはあります?
なんて。 店の中で、俺がくだらない事を話しかけても、ちゃんと笑って聞いてくれるし、答えてくれた。
俺ばかりが喋らされたんじゃないよ? 行き帰りに色々な他愛のない話をして、情報収集もしてみた。
俺のは嘘八百だけど、ひょっとしたらダルイさんのは本当の話が混じってるかもしれない・・・・。
例えばお姉さんの事。 あの日向 宗家の幼女誘拐未遂事件、雲からの草がダルイさんのお姉さんだとか。
これは、ダルイさんがそう言った訳じゃない。 自分の姉はそそのかされて木の葉に迷惑をかけた、と。
今なら姉を諌めてやれたのに、とか。 話の内容や年数を当てはめると、当事者だとしか思えないんだ。
どうしてあんな事を俺に話してくれたのか。 多分・・・・ 俺の顔の傷の話をしたからだと思う。
不意にダルイさんが“その顔の傷、どうしたのか聞いてもいい?”って、聞いて来たから。
潜入中に必ず聞かれるんだ、この鼻の上の傷。 派手だしね、目立つから。 だから理由も考えてある。
俺はいつも忍びにつけられた傷だと言うんだ。 それで、俺を助けてくれたのも忍びだ、って言う。
小さい頃、身代金目的で誘拐されてつけられた。 木の葉の忍びが助け出してくれたんです、ってね。
『そんな思いをしたのに・・・・ 忍びを・・・・・ 恐ろしいとは思わないのか?』
『だって生きてますもん。 それに、俺を助けてくれたのも忍びですから! ふふ!』
『ケド、他里の忍びは・・・・ 憎んで当然だろう。 遊び半分でそんな傷を・・・・』
『・・・・・そういう人達ばかりじゃないと思います、俺。 国を守ってる忍びの里はどこも立派です!』
『・・・・イルカ君は・・・ ホント、いいとこの坊っちゃんだね。 ハハ!』
『む! だって、現にダルイさんは・・・・ こんなに話し易いし、優しい忍びです!』
『くくくく! ヤー 親御さんが、見聞を広げろと、城に預けたのが頷けるなぁ!』
『なんか・・・・ もの凄く馬鹿にされてる気がするんですけど??』
『スミマセンねぇ、あんまりイルカ君がストレートに話すから・・・・ くくく!』
『じゃぁ今度は、ダルイさんのお話を聞かせて下さい! 俺ばっかり話させてずるいです!!』
『くくく! イルカ君、絶対一人っ子だろう? おれには姉がいたんだ、もう死んだけど。』
『・・・・・・・・そうなんですか・・・・。』
あの内容からすると、日向家の幼女を拉致して来いとそそのかされたのは、ダルイさんのお姉さんだ。
ヒナタちゃんの拉致に失敗して、ヒアシ様に殺された雲のくの一。 さらにその死を利用された。
この事実を考えると、誘拐に成功しても失敗してもいいように仕組まれていた、という事・・・・。
酷い。 つまりダルイさんのお姉さんは、雲隠れの里からすれば捨て駒だったんだ、最初から。
木の葉の過激派組織【根】も、他里でそんな事をしてるのかと思ったら・・・・ 情けなくて涙が出た。
ダルイさんはお姉さんの話で泣かせちゃった、と思ったらしく、一生懸命謝っていた。 違うのに。
俺って涙もろいんだよね。 でもただでは転ばない、涙腺が緩んだらしっかり泣く事! 時間稼げるし。
う〜ん 泣きやむまでずーっと慰めてくれてたもんな・・・ やっぱ、ダルイ上忍はいい人だ。
夕飯の後、差し入れに行きますから! と言って別れた。 ダルイ上忍は滞在してる部屋へ、俺は台所。
・・・・・・・と見せかけて、こっそり城門の外で待機。 今度こそ紫様のお相手を発見するぞ!
揚げパン? 自分では作らないよ? それは厨房にいる人達にお任せ、きな粉と砂糖は買ってあるしね!
・・・・・・・・本当だ。 なんとも可愛らしいと形容のしようがない女性が・・・・ 紫様と会ってる。
黒眼が大きくて・・・・ ポッチャリしてて・・・・・ 愛嬌がある。 奥処にいる女性達とは全然違う。
お人形さんみたいに動き方も可愛らしい。 首をかしげる仕草がピコッ! って・・・・・ 可愛いい!
わー これは・・・・ モンザ様が正妻に迎えたいとおっしゃったのが分かるなあ・・・・・
紫様、全然お顔が違うもん。 なんと言うか・・・・ ほんわか和みムード。 幸せそうな雰囲気だ。
よし、気配は覚えたぞ! これで明日追跡だ。 念の為、変化術紙を擬態させて彼女につけておこう。
何がいいかな・・・・ 出来るだけ女性が身につけて不自然じゃないモノに・・・・ あ、帯!!
彼女の帯の柄の一部に擬態させてくっつけよう。 女性って、柄モノを身につけるから楽だなあ!
・・・・・・・・・・よーし、くっついた! 明日気配をたどれなくなったら、術紙を回収しよう。
帯の柄のように擬態させてくっつけた術紙を動物に変えて、彼女の元に案内してもらう。 うん、完璧v
本当なら、このまま後をつけたいところではあるけどね・・・・。 ダルイさんとの約束があるから仕方ない。
城に戻って、さも俺が作りました、な顔して差し入れして来なきゃ。 どうせ食べないと思うけど!
だって上忍が、他国の有名な大名の城で出された物、ましてや一般人が作ったかもしれない物なんて。
絶対に口にするはずがない、何が入っているか分からないから。 ダルイさんもそう言いかけてたしね!