生駒城の家守 5
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雲の忍びによると、雷と火の国の国境付近で、骨と皮だけの死体が山の中に捨てられていたそうだ。
どう考えても遭難による衰弱死ではない。 それに動物の餌になったとしたら皮は残っていないから。
体中の体液、肉組織だけが全て無くなる奇病なんて、聞いた事がない。 まったく不可解だよね。
身元は雷の国の者達で、皆家族から失踪届けが出ていた年若い男女。 発見したのは数十人に上るらしい。
かと言って忍びの仕業でもないんだって。 残留チャクラがないし、忍びなら死体は残さないからね。
たくさんあった遺体を巻物に回収して里に送ったところ、妖の一種が棲みついているのでは、との見解。
妖が火の国の領地に逃げ込んでしまったら、逃がしてしまう。 だから国境越えの許可を求めたんだ。
「ダルイ小隊の本来の任務は・・・・ その妖の討伐か・・・・ オレ達も手を貸さなきゃネ。」
「そうですよね、その妖がこの領地へ移り棲んだら・・・・ 今度は火の国の民が犠牲になります。」
「ウン。 ・・・・・でもこの話が本当なら。 雲も変わった、ってコトだヨ。」
「はい。 ワザとこちら方面に妖を追い、火の国の民を犠牲に出来たかもしれないのに。」
一昔前の雲なら、確実にそうしただろう。 何も知らせずに、火の国の領地に逃げ込むのを黙認した。
ダルイさんは “討伐” と言ったんだ、“捕獲” ではなく。 それはつまり、妖を利用しないという事。
まあ、生駒様の兵に先に妖を発見されて、雷の方面から逃げてきました・・・ なんて報告をされたら。
おそらく木の葉は、雲隠れの画策か何かだと思っただろうからね。 どちらにしても先手を打ったんだ。
「これ以上、木の葉や時宗様のイメージを悪くしたくないのが、本音かもしれないけどネ。」
「ええ、日向家の血の犠牲の上に成り立った不可侵協定を、さすがに破りはしないでしょう。」
「・・・・・・・・あの喧嘩っ早い猪突猛進バカの雷影が、頭をさげたからネー・・・・」
「ぶっ! カカシ先輩、言い過ぎです。 でも、あの人柱力のビーさんは思慮深かったですね。」
そうなんだ、雷影エーさんは、なぜか雲の忍び達に好かれている。 まあ、こう言ったら失礼だけど。
ウチの三代目みたいに、穏健派を装い計略好きな影とは違い、考えなしに動いてあちこちで問題を起こす。
それでも影を名乗っているのなら、ただの力馬鹿じゃない。 彼の素の人柄がいいからとしか思えない。
ビーさんは雷影をブラザーと呼び慕っているらしい・・・・ ひょっとしたら、ビーさんの人徳なのかもね。
「・・・・ウチの里のちっこい人柱力も、あれぐらい堂々とした風貌になってくれるのかねぇ・・・・」
「大丈夫です。 四代目夫婦のご子息ですから。 今の逆境には決して負けませんよ。」
「そうだネ。 ミナト先生とクシナさんの息子だし? ハー 強いだろーネー。」
「いつか、あのビーさんよりも、立派な人柱力の忍びになりますよ、きっと。」
ウチの潜入員のイルカ君は、雲の三人が来るより前に潜ってたのかな? 彼の任務は一体何なんだろう。
・・・・て、勝手にこっちで潜入員と決めてしまってますけど。 実際はどうなんでしょう??
そうであってもなくても、接触しては来ないだろう。 ボク達の気配に気付いてなさそうだったしね。
ボク達が彼の前に姿を見せる時は、紫様やイルカ君に何かあった時だから。 それはそれでうまくない。
「・・・・・・・・明日の調査後サ。 しらばっくれて、オレ達も揚げパン食っちゃうか!」
「あははは! 実はボクもそう思っていました。 スルーしとけばいいだけですもん。」
「ネ? オレ達は気付かないフリしてあげようヨ。 それならアッチも仕事しやすいじゃない。」
「そうですよ。 木の葉から、雲への調査協力に来ただけです。 実際、紫様にはそう言ってあるし。」
とかなんとか言いながら、カカシ先輩もきっと決め手に欠けてるんだ。 里の潜入員だという確証がない。
全く関係なかったら、それはそれで、ボク達の見込み違い、って事で。 上手く城に溶け込んでるんだ。
ボク達の知らない所で、別口の任務を遂行中。 でもイルカ君が潜入員なら? 保護しないといけない。