生駒城の家守 7
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ボク達が城に戻ってくると・・・・ って言っても、ボクとカカシ先輩は気配を殺し、姿を見せてないけど。
そうすると当然、人の目には雲の三人しか映らない。 誰かが足音をさせて部屋に飛び込んで来た。
ごめんなさい、とイルカ君が。 いつもは昨日の様に、日が暮れるまで妖を探して帰ってくるんだろう。
きっとダルイ小隊の、おおよその帰りの時間に合わせて、揚げパンを作ってあげていたんだろうね。
「ごめんなさいっ! こんなに早くお帰りになるなんて思わなかったですから、まだ何も・・・・」
「いいんだよイルカ君。 ・・・・・・・できれば後で持って来て欲しかったり・・・・ へへー!」
「はい! 任せて下さいっ! 今から揚げてきますから。 じゃぁ!」
「やった! 言ってみるもんですね、ダルイ隊長?」
「いくら忍びに抵抗がなさそうでも、あんまり懐くな。 別れが淋しくなるぞ?」
「・・・・ダルイ隊長、それ・・・・ 自分に言い聞かせてます??」
「若くしてボスの右腕と言われているダルイ隊長が? ・・・・へー。」
「厚かましいって言ってんだよ! この城の教育係、モンザ様の客人だぞ?!」
「「くすくす! 赤くなってるっ! あははは!!」」
「ったく、ダリーな・・・・ そんなんじゃねぇよ!」
・・・・・鋭いダルイさんなら、ひょっとしてウチの潜入員だと当たりをつけてるかも、って思ってたけど。
ボク達がかろうじてアレ? と思う様な視線。 イルカ君を盗み見てたのは、そういう理由からか・・・・。
第一印象で三代目に信用出来る忍びだと言わしめたダルイさんが、イルカ君に淡い思いを抱いてる?
でももしかしたらイルカ君は木の葉の潜入員かもしれないから・・・・ 雲には連れていけないよ?
そういえば昨日、さり気なくナンパしてたもんね。 ダルイ小隊の二人は、隊長の思いに気付いて??
う〜ん、なんだか微笑ましいな・・・・。 とてもその昔、木の葉に言いがかりをつけた雲とは思えない。
・・・・それはそうか。 そんなのは一部の過激派で、忍びの多くは皆、未来を見据えて行動する。
はぁー ウチも根が馬鹿だもんな・・・。 暗部の養成組織という名にかこつけて、好きな事やってるし。
まあ、三代目はもっと悪知恵が働くから、全部ダンゾウ様のせいに出来るこの組織を黙認してるけど。
体の中には必ず善玉菌と悪玉菌がいるんだよね。 どっちかだけにしちゃったら、病気になっちゃうんだ。
ヘンな例えだけど、共存共生してる、って事。 どっちも体調維持には欠かせない菌なんだよね。
・・・・・・?? あ、ダルイさんが部屋を出て行く・・・・ どこへ? ああそうか、イルカ君の所だな。
思わず分身を出して後をつけさせた。 もちろん、分身の気配も消して。 ・・・・カカシ先輩も。
そうですよね、一応、ボク達の任務の名目は、雲忍の行動の監視、ですから。 それは雲も了承済みだし。
「ひょっとしてさっき、分身飛ばしました??」
「あ、分かった? ウン、影分身出して一緒に行かせた。」
「お二人ってアレですよね、暗部の・・・・」
「そう。 戌と猫です。 今更ですけど。」
「「やっぱ、そうかー 部隊長クラスか・・・」」
「ところでダルイ上忍って・・・・ もしかして?」
「あ! そうなんですよ!! どうも・・・・ な?」
「うん、年相応で微笑ましいと言うか・・・・ な?」
「あはは! やっぱり。 イルカ君・・・ でしたっけ??」
あの和気あいあいとした雰囲気は、そういうのも関係していたのか・・・。 ふふふ、なんだかなぁ。
丁度いい、里からパックンが戻るまで、イルカ君とダルイ小隊のエピソードを聞かせてもらおう。
イルカ君が潜入員かどうか、話の中に何かヒントが隠れているはずだ。 合言葉が必要ないほどの確証が。
三代目が合言葉を教えなかったのは、城で接触する機会がないから、じゃなくてワザとなのかもしれない。
ボク達の見込み違いで、木の葉の中忍は別にいる、って事になれば、お互い任務を遂行して終了。
でもそうなら・・・・ ダルイ上忍の淡い思いは壊さなきゃならない。 連れて行かせる訳にはいかない。
他里に連れて行かれて頭を覗かれでもしたら、潜入員に待っているのは、果てしない拷問の後の死だけだから。