生駒城の家守 6
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翌朝、オレ達も協力する旨をダルイ上忍に伝えた。 そして一緒に行動、今、国境の山中を皆が散策中。
相手が活発に動く時間、まして正体も弱点も判明していない妖に戦いを挑むだなんて、馬鹿のするコト。
妖なら、夜に動きまわって朝にはどこかで眠ってる、ってパターンが一般的だから、寝てる間に退治だ。
それに手がかりも残ってるしね。 毎日来ていたら、その変化を忍びが見逃すはずはない。 ホラ・・・・
「ダルイ隊長!! ちょっとコッチ来て下さい!」
ダルイ小隊の一人が、何かを発見したらしい。 オレ達も行ってみる。 ・・・・・?? ゼリー??
なんだろ、何かの粘液のような、ネバネバしたモノのようだケド・・・・。 んー ここは任せて?
オレは口寄せの術で、忍犬のパックンを呼び出した。 パックンの知ってる臭いならシメたもの。
パックン、この臭い、ナニか分かる?? ・・・・・・・?? 胎盤と・・・・ 羊水?? ハ?
「なんだ、獣が子を産み落としたのか。 お前ははなんでも結論を急ぐからなぁ・・・」
「あはは! 昨日まではここの場所に、こんなのなかったもんですから、つい・・・・」
「スミマセンねー どうもコイツは先走る癖が・・・・・」
「若造ども、この胎盤は獣のモノではないぞ。 そんな馬鹿な獣はおらん。」
「そうだネ。 野生の獣なら、胎盤をそのままにしておかないヨ。 全部食っちゃうカラ。」
「産まれたての子、産んだ後の親、どちらも他の敵に狙われやすい・・・・ 臭いを消すんですね?」
そう、野生の獣なら胎盤をそのままにして去る、なんて事はしない。 みすみす餌の場所を教えるなんて。
臭いを残すコトは、近くにまだうまく動けない獲物がいますよー って、宣伝してるのと同じコトだヨ。
昨日ここにこの胎盤がなかったのは、ダルイ小隊が確認済だし。 夜の間に、ってコトで間違いない。
もしかして例の妖のモノか?! まさかソイツは繁殖期で・・・・ 密かに増えている、とか・・・?!
「「「じゃぁ・・・・ コレは・・・・・ ??」」」
「分からん!!」
「「「・・・・・・・・・。」」」
「なんなの、パックン! 肝心な事が分かんないんじゃないっ!」
「仕方なかろう、嗅いだ事のない臭いじゃ。」
「そうなのか・・・ 忍犬の頭のパックンすら知らない臭い・・・・」
「それよりも若造ども。 向こうに死体が埋っているぞ? この臭いもそこから続いておる。」
「「「なっ!!」」」
「「・・・・・・・。」」
他の死体と同じく雷の国の土地に・・・・ 前に回収した死体と同じ、骨と皮だけの人だったモノが。
つい最近までは、そこらに死体が捨てられていたそうだ。 なぜか野生の獣も寄りつかない死体。
埋められていた死体は初めてらしい。 ダルイ小隊皆が驚いているから、きっとそうなんだろうネ。
悔しそうに封印の巻物に入れていた。 そりゃそうか、自分達が調べている間に、犠牲になっていたんだ。
もっと早く、本当の事を話してくれていたら、使者に来た時に三代目が教えてくれたかもしれないのに。
ま、正体不明の妖の話をして、昔の様に言いがかりをつけるのではと思われるのが嫌だったんだろう。
“その妖は木の葉が飼っていたモノだった” と主張するのではないかと。 三代目ならソコまで読んだかも。
どうにもこうにも。 昔の小汚い負い目が木の葉にあるから、後手後手に回っているみたいだネ・・・・。
可哀想だケド、過去の過ちは変えられないヨ。 でもだからこそ、ここで一歩を踏み出す気があれば。
一部のバカが仕出かした事は変えられないケド。 でもネ、オレ達は同じ忍びとして、力になれるヨ。
もう、どっちかの里のプライドの問題じゃない。 実際、人に害をなすナニかが棲みついてるんだ。
丁度、国境線の境目から雷側に胎盤が。 そこからナメクジが這ったみたいな跡が国境を越えてる。
コレを見ただけで・・・・ そのナニかが火の国の領土にも・・・・・ 入り込んだと分かる・・・・
「ここは一つ、お爺ちゃんの知恵袋をお借りしませんか? これ以上犠牲を出さない様に。」
「フフフ、そうだネ。 木の葉にはやたら長生きの爺がいますから。 なにか知ってるかもネ。」
「くくっ! 三代目火影の事ですか、ソレ。 酷いなぁ! 笑ってスミマセン、火影様・・・・」
「我が里では正体は掴めず。 もしナニか心当たりがあるのなら・・・・ ぜひ。」
「宜しければ、この胎盤を木の葉に。 検分してもらった方が早い。 良いですよね、ダルイ隊長?」
「あー お願いします。 ウチの分析部は解析が遅くて・・・・ スミマセン。」
・・・・・フフフ。 木の葉を頼るなど、雲隠れのプライドが許さないだろうケド。 思った通り。
ダルイ小隊の面々はオレ達と同じ、己が国の民の為なら、くだらない忍びのプライドなんか捨てられる。
自里の利益、自里の忍びのコトしか考えられない様なヤツは、いずれ道を誤るからネ・・・・
オレ達が作るこれからの時代は、そんなくだらないプライドなんかない時代に、出来ればイイと思うヨ。
発見した胎盤、羊水らしきモノで湿っていた小枝、粘膜の様なモノがついた葉っぱを、封印の巻物入れた。
さ、パックン、大好きな運動だヨ? コレ持って、三代目のトコまで超特急でお願い。 ヨロシク!
後は城に戻って、情報を待つだけだ。 ・・・・・ねぇ、ダルイ上忍。 あの揚げパン、美味しいの?