生駒城の家守 12
@AB
CDE
FGH
IJL
MNO
PQR
S
一応、ボク達の派遣の名目は、雲忍の動向の監視。 ダルイ小隊は上忍が三人のスリーマンセル。
ボク達が分身を飛ばしたら、それに反応するぐらいの忍び達だ。 特にダルイさんは隊長だけあって優秀。
もう監視の為に影に徹する必要はない。 昨日と今日の同行だけだけど、信用出来る忍びだと分かった。
彼らは木の葉の潜入員がいたからといって、拉致したり始末したりするような輩じゃない、って。
だけどイルカ中忍の保護は、このまま続行。 拉致や殺害の心配はないけど、別の問題が発生してる。
そのままほんのり淡い思いを抱くだけで留めてくれてればよかったのに。 ダルイ上忍が動いちゃった。
さっき吸収した影が全部見てた。 台所でイルカ中忍にセクハラまがいのチョッカイをかけていたんだよ。
パックンはまだ戻って来ないけど、ここは姿を現すのが得策ですよね。 このままじゃ確実に・・・・
イルカ中忍の別口の任務の邪魔になる。 本人もここまで雲忍に関わるとは思っていなかったはずだ。
本来なら、もうとっくに任務を完了して里に帰っていたかもしれない。 でも好かれちゃったんだよね?
雲忍は紫様の客人扱いだし、無下には出来ない。 多分・・・ 本人は大混乱してると思うよ。
「じゃ、木の葉から分析結果と情報が届いたら知らせるネ? オレ達は紫様に話があるから。」
「へ? 俺らの監視は・・・・ いいんですか?」
「今日一日同行して、監視の必要はないと判断しました。 皆さんのプライベートを尊重しますよ。」
「ですって! ダルイ隊長? 心おきなく口説けるんじゃないですか?」
「・・・・あのな。 おれ達は妖を見つけ出して殺しにきてるんだぞ?」
「「へー その割にはさっき・・・・・」」
「あー 紫様にお話があるんじゃなかったですか?」
「「くすくす・・・・・ じゃ、また後で。」」
「あー 後で。 スミマセンねぇ。」
よし、これで別行動だ。 影を動かして潜入員に接触したら、コソコソ何かを画策してると思われる。
三人とも鋭いからね。 雲忍の行動を監視しに来たのに、自分達が疑われるような真似は出来ない。
紫様に話があると言ったけど本当の所は、台所にいる潜入員の猿飛イルカ君に会いに行く為だ。
くれぐれも中忍の邪魔はするなと、三代目から言われた。 そして猿飛姓を名乗らせるほどの潜入員。
わざわざ危険な猿飛姓を名乗らせるという事は、その潜入員に接触しようとする忍びへの牽制にもなる。
“ワシが目をかけている潜入員じゃ、面倒を起こすでないぞ?”って事だ、気が引き締まるだろう。
ヘンな話なんだけど、繋ぎに行った忍びが潜入員に惚れちゃう、って勘違い系が結構あるんだよね。
秘密を共有してる感じに、気分が高揚するのかもしれない。 頼られてるのは自分だけ、みたいな勘違い。
基本的にボク達忍びは、人に頼りにされると嬉しい。 なまじっか人の命を狩る事を生業にしているからね。
けど他里の忍びにも同じような現象が起こるとは思わなかった。 猿飛姓の牽制は無効だから仕方ない。
このままだと任務の遂行は難しい。 ウチの潜入員 猿飛イルカ中忍は、いつまでたっても里に帰れないよ。
下手したら帰国しても生駒城に通いに来ちゃいますよね、ダルイ上忍が。 かなりマズイ状況ですよ。
イルカ中忍と打ち合わせして任務を終わらせてもらって、とっとと里に帰ってもらうのが一番いい。
「猿飛イルカ君、里から応援に来たヨ。」
「ボク達の事は当然、聞いてないよね?」
「暗部が・・・・・ 応援?? え? え?? なんで?!」
「実は昨日到着してたの。 雲忍の動向の監視で。」
「あ・・・・ そっか。 紫様の護衛に・・・・・・」
「あと君も対象。 潜入員の保護も兼ねて、だよ。」
「ほっ! よかった・・・・ あのですね、実は結構マズイ状況になりそうで・・・・」
「フフフ。 知ってるヨ? さっき見てたから。 雷の国の男は情熱的だからネー。」
「あ、そうなんですか・・・・・・ うー いきなりなんで吃驚したと言うか・・・・・」
「あとね・・・・ ダルイ上忍はボク達の影を感じていたから、あれだけですんだんだよ?」
「!! あの、今、任務が中断してて・・・・ このまま遂行出来るかどうかも・・・・」
「「そうだろうと思った。 くすくす!」」
やっぱりね。 すっかり雲忍に気に入られちゃったみたいだからね。 特に・・・・ ダルイさんには。
他里の忍びをウチの忍びと同等に扱ったから、勘違い効果倍増になっちゃったんだよ? ・・・・なんて。
そんな事を意識していた訳じゃないだろうけど、結果的にダルイさんを喜ばせちゃったのは、事実なんだよね。