生駒城の家守 3
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「どういう事ですかネ。 雲はまた何かを企んでるんじゃないデスか?」
「いや、ダルイという若者は、二心ある・・・・ そんな感じには見えんかったぞ?」
「では、単純に協力要請・・・ と取っていいんでしょうかね。」
「おそらくはな。 生駒様の監視があるゆえ、うかつに国境を越えられんじゃろうからの。」
少し前、雲隠れから使者が来て、雷の国を越え火の国の国境付近で調査を行いたい、との申し出があった。
それにはまず、木の葉の許可を、と。 なんでも雷の国境付近で、謎の死体が次々と発見されたそうだ。
雲は木の葉とはあまりソリが合わない。 その昔、二代目雷影と二代目火影の平和対談を壊した時から。
もちろん少数の過激派によるもので、実際、二代目扉間様はあの時受けた傷が元で体調を崩し亡くなった。
その後、何度も停戦協定条約の場が設けられたが、毎回どちらかの過激派が阻んで、前回やっと・・・だ。
白眼欲しさに日向家の幼女を誘拐しそこねた雲隠れは、一方的にウチが雲の忍びを殺したと言い張った。
あらかじめ怪しい動きを国境監視役の生駒様より報告を受けていたので、事前に草を発見、始末しただけ。
「ま、生駒様の兵に見つかれば、すぐに木の葉に連絡がきますからネ。」
「それに、あの血の犠牲での協定以来、雷影様は約束を反故にした事はありませんから。」
「うむ。 ・・・・あのダルイとかいう青年を、ワシに紹介したかったのかもしれんの。」
「雷影様は、ご自分の右腕を着々と強固にしていると・・・・ そう伝えたかったのかもしれませんネ。」
「ヘー そういえば元々、雷影様とビーさんは、あの事件も恥じていたようだし・・・・」
「報復合戦で巻き込まれる命の犠牲の重みを、エーもビーも知っておるのじゃよ。 ほほほ。」
あの時は知らぬ存ぜぬで自里の忍びを切り捨ててた・・・・ まあ、草とは本来そういうものだけど。
何の罪もない雲隠れの里の忍びを殺したと、言いがかりをつけて来た。 この責任をどうとるのかと。
最初からそれが目的だったんだろう、己が娘をただ守っただけの日向家のヒアシ様の首を寄越せ、とね。
そして木の葉は影武者を立てた。 往生際の悪い雲隠れへ、忍びの格の違いを見せてやれとばかりに。
ウチからは火影様と日向ヒアシ様、雲からは雷影に着任して間もないエーさんと人柱力のビーさんだった。
ボク達、暗殺戦術特殊部隊の部隊長四人は陰からの護衛に就いていて、当然だけど雲からも暗部が来てたな。
あの緊張の対談の席は、生駒城で設けられたものなんだよ。 今でも覚えているよ、はっきりとね。
ヒアシ様の代わりに弟のヒザシ様が両目を焼いて自害された。 弟の首を大切に抱え、差し出したヒアシ様。
里の一部の過激派が仕出かした事だと、互いに分かっていたから。 手ぶらで帰る雷影の立場を考慮して。
言いがかりをつけて白眼をだまし取ろうとした雲隠れの忍びの為に、言い訳と許しの両方を与えた。
あの時、エーさんとビーさんは、ヒザシ様の首に頭を下げた。 ヒアシ様が面を上げてくれ、と言うまで。
どこの国の隠れ里も互いに誇りを賭けて戦うが、悲しいかな過激派は存在する。 木の葉も“根”がそうだ。
どうしても力のある者はその力に訴えるからね。 それはもう己の為の行動であって、里や国の為じゃない。
二度と同じ間違いは起こさないと、雲と血の犠牲を払った木の葉の間でやっと不可侵協定が結ばれたんだ。
三代目の許可が下り、条件付きで生駒城に雲の小隊が滞在している。 もちろん国境付近の調査の為に。
使者に来たダルイという忍びが隊長の一個隊。 条件とはボク達二人だ。 暗部を後で監視に行かせる事。
雲隠れを信用していない訳ではない。 過去に何度も問題を起こしてはいるが、それは雲に限った事じゃない。
生駒城の城主にもしもの事があっては、火の国の民を悲しませる事になるからだ。 その為の監視任務。
「ユウダイ様と同じく、民に熱烈に愛されちゃってるからねぇ、紫様は。」
「この前、生駒城の奥処に身請けされたって・・・・ 花街の廓で大送別会がありましたよね、確か。」
「アー あれ、派手だったよネー。 オレ達も一緒になって騒いだヤツ。」
「そうそう、特別サービースとかって、半額にしてもらいましたよね。」
「ほほほ。 それとの、先に一人中忍が別件で潜っておる。 そやつの任務の邪魔はせんようにな?」
「了解です。 木の葉の忍びだと分かっても、放置ですね?」
「ま、その中忍にはオレ達の事は分かんないだろうけどネ。」
「・・・・・ダルイ小隊に関わっていなければ良いんじゃが・・・・・ の。」
「?? では紫様と一緒に、その中忍の身柄も護衛しろ、ってコトですか?」
「うむ。 信用しとらん訳ではないが、潜っておる忍びなら拉致されても気付かれんからの。」
「なるほど。 ただの男を拉致しただけ、と言い訳できますからね・・・・」
「そういう事じゃ。 そんな事はまず起こらんと思うが、備えあれば憂いなしじゃろ?」
確かにそうですね。 でも、三代目にここまで“信用”の太鼓判を押させる人物に会ってみたくなった。
どこの里にも馬鹿はいて、どこの里にも英雄はいる。 多分・・・・ この感じじゃ、彼は後者なんだろうね。
でもボク達部隊長二人を向かわせたという事は、間違いが起こった時は全てを闇に葬って来い、という事だ。