生駒城の家守 11
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・・・・・・・猿飛? イルカ君は猿飛って苗字なんだ? ヘー。 ウン、ウチの火影様と同じだネ?
んじゃ・・・・ いわゆるモンザ様に差し入れするついでに、おこぼれをもらってる、ってコト?
オレ達が言うのもおかしいケド、よく手をつける気になったネ、他国の城で出された食い物にサ。
到着した日に、和気あいあいと揚げパン食ってたから、ビックリしちゃったヨ、ホント。
「イルカ君は小さい頃、忍びに誘拐されて。 でも助けてくれたのが忍びだからと・・・・」
「他里の忍びでも、全部が全部そうじゃない、って。 恐れずに接してくれるんですよね。」
「ダルイさんの話だと・・・・・ 買い物につき添ったお礼だとかで。 それから・・・ な?」
「明日も揚げパン、食べたいっ! って。 このオネダリが、毎日続いてるんですよ、ははは!」
「じゃぁサ、ずっと報酬代わりに作ってもらってるの? 生駒城の客人に? フフフ。」
「や、俺達もダルイ隊長と一緒に、帰りに乾物屋へ寄って材料を買って来たりしてます。」
「あはは! 妖の捜索の後、変わり種のきな粉と砂糖を? 雲隠れの上忍達が?! くすくす・・・・」
「だって、なんか嬉しいじゃないですか! 俺ら・・・・ 他里の忍びなのに・・・・」
そうだろうネー。 他国の、しかもナニかと因縁のあるこの城の中で、快く受け入れてくれる存在。
紫様やモンザ様のような国の要人ではなく、いい所の坊っちゃんかもしれないケド、ただの一般人。
一般人は他里の忍びを脅威としか思っていない。 なのに、親しみを持って接する青年・・・・ か。
ンー。 敵地で知人に会った様な気になるかも・・・・ しれないネ。 同じ客人同士だしサ。
でも残念ながら、イルカ君は木の葉の忍びなんだよネ。 今の話の内容で確証が持てたんだーヨ。
もしそうなら・・・・ と思ってたトコ。 やっぱ、その通りだったネ。 猿飛イルカ君は潜入員。
雲が木の葉の潜入員だと気付く前に手を打つか。 てか、全然疑う余地もないほど信用されてるケド!
ウチの里の特別上忍以上は皆知ってる。 この火の国で“猿飛”と名乗る一般人はいないんだよネ。
猿飛一族の遠縁の者だと思われて、関係ないのに猿飛という名の一般人が過去にたくさん殺された。
一般人からすれば、名だけで他里の忍びのターゲットにされてはたまらない。 ほとんどの人が改名。
木の葉隠れの調べでは、火の国国内で猿飛姓の者はいない。 猿飛姓はウチの里に残っているダケ。
だから潜ってる中忍がいると聞かされてて、ソイツが猿飛を名乗っていたなら、合言葉は必要ない。
合言葉は接触する時には必要だケド、さり気なく護衛したりするだけなら接触しなくてもいいから無用。
つまり火の国 国内で猿飛と名乗る者がいたら、それは潜入員で木の葉の仲間だというコトなんだよネ。
「あれ、隊長だけ? イルカ君は? あ! 薄緑色!! 昨日俺らが買ったずんだきな粉だ!」
「お! ホントだ! さっそく使ってくれたんだ、イルカ君! 揚げたてホカホカだ!」
「あー おれが持って来たからって、味は変わらないだろ? 食え。 良かったらお二人もどうぞ?」
「「・・・・ははは、頂きます。」」
ダルイ上忍が戻ってきた。 オー、これがイルカ中忍の噂の揚げパン、か! 料理得意なのかな?
どれどれ・・・・・ ン、そんなに甘くなくて美味いヨ! 猿飛イルカ中忍は、餌付けで墓穴掘ったのネ。
んじゃ、オレ達も影分身を解除して、影を戻そうか。 ・・・・・・・解っ!! ・・・・・・・ハァ?
「「・・・・・・・・・・・。」」
ダルイ上忍につけてた影を戻したから、当然記憶も入って来た。 チョット? ナニやってんの、アンタ。
「・・・・。 あー おれにつけてた分身の記憶、吸収したんですね? ハハハ・・・・。」
「「坊っちゃんには、刺激的じゃないの?」」
「あー ヤバイです、おれ。 アイツらには内緒で、お願いしますね・・・・ スミマセン。」
「「・・・・・・・・了解。」」
「「あったけ〜 ハフハフ・・・・ 揚げたてホヤホヤは美味いです、マジで!」」
昨日あんなにガツガツ食ってたダルイ上忍が、一口も食ってない。 手で口を押さえてこらえてる。
ナニをって、ニヤニヤした笑いを、だ。 雷の国の男は情熱的らしいと噂にはよく聞くケド。
ダルイ上忍も例にもれず、しっかりと猿飛青年にアピールしてた。 ・・・・てか、墓穴掘りまくりだから。
あのネ? ああいう反応をしたら男は喜んじゃうってコト、同じ男なんだから少しは分かろうヨ。
こりゃ一回、猿飛イルカ中忍と、接触しなくちゃならないネ。 アッチも困ってるだろうしサ。
ナンか別の任務抱えてるんでショ? 里から謎の妖の解析報告が来たら、こっちは行動開始だもん。
テンゾウ。 ほっといたら、ウチの潜入員がずっとこの城に滞在するハメになるヨ。 お手伝いするか。
影分身を台所に残したままイルカ中忍に接触しても良かったケド、ダルイ上忍は一筋縄じゃいかない。
監視だから黙認してるだけで、オレ達の影分身の気配をしっかりと捉えてる。 他の二人より明確にネ。