さっさと殺せ？ 馬鹿を言うんじゃない、お前ら全員、楽に殺さないと最初に言ったじゃないか。
君だけが目当て？ 何をどう自惚れているのか分からないけど、どっからそんな発想になった訳？？
二十人に満たないが報復を止める？ ボク達の任務が報復だって？ 勘違いしてるね、完全に。
木の葉の巣が、ここ呉服屋【夢や】だった事を他里に知られると不味いんだよ、この後にね。
ちょっと考えれば分かるだろ？ 夢やに出入りしていた者達が潜入員だと疑われる元となるなんて。
だから皆殺しに来たんだ、この店の中にいる全員を。 巣を清掃する、それがボク達の任務だ。
ちなみに一階にいた奉公人は、もう全員斬ってきたから。 後はお前ら五人を残すのみ。
君が言うところの、囮になった英雄なんて綺麗な話にしないで、木の葉を売った呉服屋として潰す。
早い話が証拠隠滅。 巣であった事実を消しに来たんだ、少数の犠牲を伴ってでも他を助ける為にね。
マフユ・・・・ とかいう名だっけ？ 中忍君。 その話は木の葉でも割と知られているんだよ。
けれどウチでは全然違う話なんだけど、どっちが正しいと思う？ 教えてあげるね、冥土の土産に。
・・・・・弁解？ あははは！ 違う違う、単純にマフユ中忍を、苦しみと後悔の渦に落とす為だから。
君も知っての通り、ボク達は汚い手を使いまくる暗部だからね？ 知らなくてもよかった事を教えるよ。
他は無駄な足掻きをするなよ？ どうやってもボクの結界と先輩の瞳術からは逃げられないんだから。
「・・・・・ね？ こんなに違ってるなんて驚きだよね？ まるで正反対だもん。」
「だからあそこに慰霊碑も立ってるじゃないの。 オオノキ・猿飛 って連名で。」
「騙し討ちしたなら、三代目が慰霊碑なんて寄贈する訳ないよ。」
「土影と火影の名前が刻まれてるんだヨ？ アンタ、見たコトないの？」
ボク達も当然、この話の当事者じゃないけど確実に言える事がある。 マフユ中忍が馬鹿って事。
君も自分で言ってたじゃないか、まだ子供だったと。 利用されやすい子供だったから、って。
子供って見解が狭いから利用しやすいのは事実だよ。 現に、客観的に考えられない君がいい例だ。
忍びにもなっていない幼い子供の発言に対する影響力なんて知れてる。 生かして置いても意味はない。
木の葉側が真実、ボク達の様な汚い手口を得意とする忍びの部隊だったなら。 君も殺していたはずだ。
もっと情に厚い忍びの場合、もしかしたら親と一緒にあの世に送ってやろう、と思うかもしれないね。
どっちでも結果は同じ、全員殺した方が楽だ。 岩がその子を別の意味で利用する危険性もあるもん。
・・・・・・え？ 分からない？？ だってその子を殺せば・・・・ ああ、君だね、マフユ中忍。
終戦直後だったんだろう？ 君を殺せば岩は大義名分ができるじゃないか、木の葉に殺された、って。
戦争の口実が出来る。 けれどそうしなかったのは、土の国と火の国の間で戦争が終わってたから。
帰還命令を無視し、戦い続けていた自里の忍び。 勇敢な囮だった、とした方が格好がつくだろう？
助かったのは君だけという事実、己がその状況でなぜ生き残れたのかを、冷静に考えれば分かる。
「？！ 俺が・・・・・ 上層部に・・・・ 殺されていた・・・・ とでも？」
「“楽しんで殺した”というなら、実際に子供の死体を見せた方が説得力がある。」
「木の葉に見逃してもらった子だと知ったから、岩は殺せなかっただけだーヨ。」
「・・・・・・・・・・・馬鹿な事を・・・・」
「覚えてないと思うけど。 岩の忍びだと名乗るな、と口止めされませんでしたか？」
「その他の木の葉の忍びに見つかれば殺される可能性があるもんネ、殲滅任務だし。」
「深月上忍は殲滅するはずだった部隊の一人を逃がした。 まだ忍びになってない子だったから。」
「・・・・・・・・・それは・・・・ 宣伝の為だ・・・ろう？」
「アンタはサ。 命の恩人を侮辱し、挙句、死に追いやるハメになった。 それが今の現実。」
「・・・・・・・・・・。」
知らない方がよかったよね？ でも教えた。 だって君は無関係の木の葉の忍びを八人も殺したから。
正確には君たちが殺したんじゃないけど。 深月上忍の手にかけさせたんだけどね、卑怯にも。
・・・・気に入ってくれた？ 君が連発してた卑怯という言葉を、そっくりそのままお返しするよ。
そう聞かされたのは君のせいじゃないし、どっちの情報を信じようが勝手。 でもボク達は忍びだ。
忍びは騙し合い、殺し合う。 だから第三者の言う事を鵜呑みにはしない、必ず裏があると知ってる。
たくさんの情報を聞いたとして、どれが真実かを想定できるぐらいにならなきゃ、生き残れないよ。
さあ、おじゃべりはここまでだ。 巣で何があったのか、それが判明したからね。 卑怯・・・・・ か。
ボク達にはピッタリの言葉だよ。 卑怯、上等。 ボク達は同胞からも恨まれるのが仕事だから。
こうやって一緒に恨まれてくれる仲間もいるし。 君の様に勝手に敵討ちみたいな真似もしちゃったりね。
一階の同胞や一般人を手にかけておいてなんだけど。 今、少々ムカついてるから、ボク達。
そこの雛壇に飾ってある首と同じく。 額当てを口にツッコんで岩に届けてやるよ、お前らの首を。
