愛する事が罪ならば 3
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火影笠をとりそっと机の上に置いた三代目の、この動作で分かる。 今回の任務は同胞殺し。
三代目は同胞殺しの任務の時には、必ず笠をとるのヨ。 一足先に喪に服す、そんな感じかも。
とある町にある巣が他里の手に堕ちたらしい、速やかに様子を探り場合によっては清掃を、と。
ある町の周辺で任務中の忍びが何人も消えてる。 その町の巣に現状を確認してみたら・・・
【特に変わった様子はない】 との式が飛んできたんだって。 そんなはずはないよネ。
だって、その町周辺でウチの里の忍びが何人も行方不明になってるなら、それは大事件だヨ?
なのにその現状報告。 木の葉の潜入員はどんな些細な事でも報告を怠らない、なのにサ。
だからこそ、巣が堕ちたと分かる。 こう報告すれば情報部が動いてくれると踏んだんだろうネ。
経験豊富な潜入員だヨ。 もし助けを求める言葉が隠されていたら、間違いなく敵忍が気付いた。
巣を利用しているコトが木の葉にバレたと知ったら、敵は証拠隠滅をして自里に引き上げるだけ。
だから暗部の出番となる。 気配を殺し近づいても、誰も気付かない暗殺部隊のオレ達がネ。
アチラさんが撤収する前に逃さず狩る。 巣にいる一般人も、生かされている同胞も、全てを。
敵の手駒にされてるだろう仲間は例外なく“早く殺してくれ”と目で語ってくるんだーヨ。
もし本人の意思とは関係なく体が動き、術か何かで敵に脳を操られているだけだとしても。
結果的に敵に協力してるコトに変わりはない。 その決断で何人もの忍びが死んでるなら尚更。
それにそういう場合は、もう元に戻れない。 脳の中枢を握られたらその時点で死んだも同然。
だからオレ達はそういう時、こう思うコトにしてる。 コイツはもう殺されてたんだ、ってネ。
どういうコトかというと、呪印が仕込まれている可能性が大だから。 早い話が生きた操り人形。
糸を切ってしまえば人形は動かない。 術者を殺せば、操られてたヤツも死ぬ、そういうコト。
自害も出来ず、意識のあるままに同胞を殺す手助けをするなんて。 それこそ生き地獄だヨ。
市井に潜る潜入員の多くは、怪しまれない為にチャクラを最小限に抑え、忍術を極力使わない。
だから奇襲されると、出遅れるんだヨ。 ギリギリまで自分は忍びではない、と偽るからネ。
手練れの忍びの前では、ハッキリ言って無力に近い。 先手を打たれたら対処できずにお終い。
利用価値のある場合は利用されるよネ。 里の忍びが信用してる潜入員なら、いい餌になるし。
敵に監視されながらも異変を知らせてくれた優秀な潜入員を狩るのは・・・・ 正直、辛いヨ。
「テンゾウ、ここって。 あの潜入員がいる町じゃないの。」
「ぁ。 そうですよ、先輩。 ボク達四部隊長を変装させてくれた、あの・・・・」
「?? なんじゃ、お主らこの町で潜入員の誰ぞと接触しとったのか?」
「接触というか・・・・ オレ達全員、ダメ出しされたというか・・・・ ネ?」
「そうなんです。 市井でうろつく時の格好を、注意された事があります。」
そうそう、珍しくアズサが外で騒ぎたい、とか言ったからサ、オレ達四人で遊びに出かけた。
アズサんトコの部下の一人が、アズサを庇って殉職した時。 もう、荒れてたのなんの。
アタシを庇う暇があるなら自分の命を守りな、バカが! って。 ・・・・や、そうじゃなくて。
その時に、その町の居酒屋に行ったんです。 アズサの死んだ部下の出身地だったらしいんですヨ。
んで、居酒屋目指して町の中をゾロゾロ歩いてたら、風呂敷を抱えた青年が突進してきた。
持っていたのは酒瓶で、オレ達にぶつかった途端、当然ながら割れて粉々、中身は全部台無し。
自分がぶつかって来て、お得意さまに配達する物なのに、どこ見て歩いてんだ! って怒鳴られた。
そのどさくさ紛れに“目立ちすぎです着替えて下さい”と、忍びの耳なら拾える小さな声が聞こえて。
弁償してもらいますからね! と言った彼に、ごめんねー と店までくっついて行ったんです。
【かない酒店】 と看板のある店の奥で、木の葉の潜入員だと教えてもらって、即ダメ出し。
『お見受けしたところ、木の葉の上忍の方だと思います。 ・・・・あのですね。 目立ちすぎっ!』
で、オレ達はグレーやら茶色やらの地味な格好をさせられて、酒店から追い出されたんですヨ。
“カード?! うちは現金払いですよ?!” とか、しっかりと外まで聞こえる大声でネ。
もういいです、その高そうな衣服を弁償代に充てます! あのお酒は高いんですから!! とか。
ショボイ地味な格好をしたオレ達が酒店から追い出されたのを見て、通りを歩いていた人は苦笑い。
いきさつを見てた人もそうでない人も、“アララ、可哀そう”ってな眼差しを寄越してた。
自分達ではそんなに目立ってた覚えはないんだケド、彼に言わせれば目立ちすぎてたみたいで。
ま、とにかく上手く市井に溶け込んでいましたヨ。 【かない酒店】に潜ってる、えっと・・・・・
「ほほほ! そうかそうか。 それは多分、イルカじゃな。」
「「そうですっ!! イルカさんでした!」」
「あ奴は若いが良い潜入員じゃ。 ・・・・・失いたくはないの。」
「「・・・・・・・・。」」
そっか。 あの酒店の潜入員の彼がいる町の巣が・・・・ 他里の忍びの手に堕ちたのか・・・・・。
あの町に潜っている潜入員なら、巣にも出入りしてるだろう。 ・・・・・無事でいてくれるといいんだケド。