愛する事が罪ならば 16   @AB CDE FGH IJK LMN PQR S




俺って奴は、全くどうしようもない。 一番やっちゃけない事だ。 泣くもんか! と誓ったのに。
これじゃまるで・・・・ まるで、二人のこの任務を・・・・ 無言で責めてる様なものじゃないか。
駄目だ、止まらない。 面越しじゃなく、二人の目を直接見てしまったから、余計に・・・・ くそっ!

「勘違い・・・・・ しない・・・で、下さ・・・・ 俺は・・・・ ふっ、っ・・・・っく。」
「・・・・ウン。 仕方ないヨ、深月上忍とは・・・・ イルカさんの方がつき合い長いもんネ。」
「深月上忍は最後まで、誇り高い木の葉の忍びだったよ。 ・・・・助けられなくてごめんね。」
「ぅぅうう・・・・・ 違う・・・・ そうじゃ、ない・・・・ っっ! 違いますっ!!
「「?!」」

なんでそんな事言うんだ! 深月上忍は立派な木の葉の忍びだった、そんなのは俺が一番知ってるっ!
二年間、夢やに通った。 かない酒店の従業員として、俺がご主人に魔王を届けていたんだぞ?!
俺は責めてるんじゃないっ! 何もできない自分に腹が立って・・・・・ 俺は・・・・・
そんな辛そうな気を纏っているのに・・・・・・ 俺は・・・・ 酒を撒く事しか思いつかないで・・・・



俺こそ、ごめんなさい。 声を忘れてごめんなさい。 こんな辛い思いをさせてごめんなさい。
代わってあげられなくてごめんなさい。 ご武運を、そう言ってあげられなくて。 ごめんなさい。
この町の潜入員のくせに、巣の異変に気付かなくて・・・・ 誰一人助けられなくて。 ごめんなさい。

何も・・・・ できないで・・・・・ ごめ・・・・
「もういい、もう終わったんだよ、イルカさん。」
「いくら自分を責めても意味はないヨ。 違う?」
「・・・・それはあなた達の事でしょう? なんですか・・・・・ そんな、目をして。」
「「?!」」



ねえ、苦しいんですよ、俺。 お二人のその辛そうな目を見たら、俺は・・・・ 言わなきゃって。
木の葉の忍びの苦しみの全部を背負ってる様な、その重い気を・・・・ ほんの少しでいい、俺に。
俺にも分けてくれませんか? お二人の足元にも及ばない忍びだという事は、実感しています。
同じ事をしろと言われても、絶対俺には出来ません。 それでも。 俺に・・・・ 分けて下さい。

「俺も・・・・ 木の葉の忍びです。 何を聞いたところで動じません。」
「まいったな。 ・・・・・・最初からそのつもりでしたが。」
「・・・・・ウン。 イルカさんには知ってほしい、ってネ。」

「・・・・全部を聞きたいんですか? 何が原因だったか、だけじゃなく?」
「・・・・オレ達に綺麗な言い訳もさせてくれないんだ? 結構意地悪だネ。」
「はい。 ありのままを包み隠さずに、全て。 それが痛みの元なら。」
「「・・・・・・・・・・・・。」」

夢やをこの後どう表向きに公表するのか、なんて事は興味ないです。 俺が知りたいのは真実。
店の中の人達や深月上忍の身に何が起こっていたのか。 占拠してた忍びは何人で、どこの里の者か。
お二人が任務に向かうまでに、何人の木の葉の忍びが、どういう殺され方をしてしまったのか。
お二人の見聞きした事、全部を教えて下さい。 どうやって・・・・・ 皆の仇を討ってくれたのかも。


お二人が一つ懺悔をする度に、褒め称えよう。 今はもう誰もお二人に答える事が出来ないから。
巣にいた普通の奉公人の代わりに、逝ってしまった木の葉の忍びの為にも。 彼らの言葉を伝える。
その重い気を少しでも軽くしてあげたい。 瞳の奥にある痛みを少しでも取り除いてあげたい。

俺が感じて言ったことは全部、彼らの言葉として受け取ってほしい。 ・・・・・分かってる。
こんなの形だけの慰めだと、俺にだって分かってるよ。 でも何かしたいんだ、この二人の為に。
完璧なモノははないと実感している今だからこそ。 面で覆い隠していた忍びの痛みを感じとれた。

本来、慰めなど必要ないほど優秀な忍び達だ。 けど、泣くだけの今の俺に。 他の何ができる?
俺が思いついたのは、せいぜい深月上忍の好きだった酒を撒く事ぐらい。 こんな俺が二人の為に。



「俺は深月上忍と二年間一緒にいた潜入員ですよ? 皆の気持ちで答える、なんて余裕です。」