愛する事が罪ならば 2   @BC DEF GHI JKL MNO PQR S




ボクはちょっとだけ特殊な生い立ち。 仲間から言わせれば“一発芸的な生い立ち”なんだって。
だから特別視されない。 暗殺戦術特殊部隊は、ボクにとってもの凄く居心地のいい場所だ。
部隊は全部で四つ、それぞれの長が隊員を束ねている。 そこの部隊長たちは皆、尊敬できる人達。
どの人も心の中に悪夢を抱えていて・・・・ それでもしっかりと前を向いて笑っている人達。



写輪眼泥棒とか言われているカカシ先輩は、辛辣な言葉の裏に優しさが隠れてる。 一番仲がいい。
マンセル仲間を自分の決断のせいで亡くした、と今でも墓参りを欠かさない情の厚い忍び。

肉親殺しと言われてるアズサさんは、木の葉の里のビンゴブックに罪人として載っていたらしい。
上忍の父親に虐待を受け続けていて、殺さなければ殺されていた状況だと判明、だから削除された。

冷血動物なんて言われ方をしてるカオルさんは亡国の隠れ里の唯一の生き残り、ここが第二の故郷だ。
木の葉にない術を使うからといって冷血動物はないだろう。 でもカオルさんは一切気にしないけど。

そしてボクが配属になった猫部隊の部隊長 コウさんは、一度死んで息を吹き返した奇跡の男。
それ以来、死の気配を感じるようになったんだって。 本人曰く、死神に嫌われた、だそうだ。



ボクが暗部に入隊したあの時に感じたのは“一人じゃない”という何とも言えない心強さ。
部隊長達が声をかけてくれた事も嬉しかったし、こんな人達になりたいと思わせる目標だった。
まさかコウさんが死神に捕まるなんて。 けど嫌われてるのは本当みたい、だって・・・・

今でもしぶとく生きてるから。 コウ部隊長は仲間を庇って、そのまま植物状態になってしまった。
“ふふ、今日からテンゾー君が部隊長だよ〜” 血だらけで苦しい息の中、笑いながら任命された。
ボク達は誰かの命の上に成り立っている。 ずーっと前カカシ先輩が言った事を痛感した瞬間だった。



あの日からボクは猫班の部隊長として、他の三人に引けをとってはいけないと一生懸命頑張った。
ボク達は皆それぞれタイプは違うけどモノの見方は同じ。 里の仲間を守る為ならなんだってやる。
どんなに血にまみれても、何人殺しても、何人にどれだけ恨まれようとも。 そんなの全然平気だ。

結果的に大勢の仲間を守る事が出来るのなら、同じ木の葉の仲間数人に罵られようとも。
同胞殺しなんて本当は誰だってやりたくない。 分かってる、ボク達だってそうだ・・・・ でも。
誰かがやらなくちゃならないなら、ボク達がやる。 憎まれて恨まれるのがボク達の仕事だから。
それにボクには・・・・ いや、ボク達には。 その決断の重みを分かってくれる部隊の皆がいる。

正規の忍びに理解してもらわなくていい、ずっとそう思って来た。 ボク達は暗部だからと。
なのになんで、理解してほしいんだろう? 彼だけには分かってほしいと願う自分がいる。
おかしい、こんなのボクじゃない。 今までは非難の眼を向けられてもなんとも思わなかったのに。

『ナニもたもたしてんの? 行きなヨ。 アンタの仲間に対する誠意はそんなモン?』

カカシ先輩が言った言葉は正論だ。 言い方は辛辣だけど、いつも間違った事は決して言わない。
先輩の言葉の裏に隠された情の厚さや優しさを知っているボク達なら、それは心強い助言となる。
けれど正規の忍びの彼はどうとるのかな。 言葉通りに受け取ったなら傷付いたかもしれない。

珍しい。 ボクと同じくカカシ先輩も、彼には理解してほしいと思っているみたいだった。
いつものカカシ先輩なら無言で任務を遂行する。 誤解されるかもしれないのに声なんてかけない。
そりゃそうか。 彼は正規の忍びの中でもボク達に近い存在、潜入部隊に所属する潜入員だから。
彼なら分かってくれる、そう思いたいのかもしれない。 ・・・・まあ、勝手な思い込みだけどね。

「カカシ先輩。 ・・・・・先輩は間違ったことは何一つ言ってませんよ。」
「・・・・・ウン。 ・・・・・・やだネー! 珍しく正規の忍びに関わっちゃたからサ。」
「ですよね。 ボクも彼には理解してほしいな、なんて思っちゃいました。」
「誰に何をどう思われていようと平気だったのにネ? ・・・・・ヘンなの。」
「・・・・・・・あー 全く同感です。」



ボク達の任務は“巣”の清掃。 巣というのは潜入員が作る拠点場所で、多くの忍びが立ち寄る。
ウチの里の潜入部隊の潜入員が情報収集活動する為に作る巣は、里の仲間にとって憩いの場だ。
宿屋の時もあれば遊郭や呉服屋、喫茶店、クリーニング店などなど。 市井で唯一仲間が寛げる場所。
けれどその巣の存在を他里に知られてしまえば、そこは立派な戦場になる。 逆に利用されて。

潜入員の作る巣は、木の葉の仲間が安心して立ち寄れる場所なんだけど、そこを利用されるんだ。
巣だからといってすぐに潰さない。 そこに出入りするのは木の葉の忍びだと判断できるから。
待っているだけで餌が自分から口の中に飛び込んでくる、そんな餌場があれば間違いなく利用する。


だからボク達の任務になる。 巣の清掃はつまり、根城にしている敵忍もろとも巣を潰す事。
そこにいる一般人も一掃する。 生かされている仲間は、敵忍の協力者となって手引きをしてる。
少しでも異変を感じたら怪しむから、いつも通り立ち寄らせる為には協力者が必要、という訳だ。

市井に潜る潜入員は、普通の暮らしをする。 自分が忍びだという事を忘れていられるんだ。
平和ボケとまでは言わないが、そこに少しでも迷いがあったら、その迷った瞬間を狙われる。
今の暮らしを続けたいという願望が、ほんの一瞬顔を覗かせれば。 その隙を逃す敵はいない。

三代目はこの町の巣を見回ってこい、と言った。 場合によっては巣を清掃してくるようにと。