愛する事が罪ならば 9
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分かった、その部屋だなんだネ? 深月上忍は自室へ戻ったみたい。 もしかしたら着替えるのかもネ。
潜入員はほとんど忍服を着ないし、額当ても着けない。 だから木の葉の忍びとして死にたいのかも。
敵の操り人形にされているとはいえ、動向や会話でこれだけの情報を流してくれる潜入員・・・・
しかもイルカさんの様に、巣の異変に気付く潜入員をしっかりと育ててもいた。 里にとって痛手だネ。
・・・・オレ達は巣の陥落を知ってるから、深月上忍の訴えようとしているコトが分かったケド。
もし正規の忍びが任務帰り、休憩がてら立ち寄っただけなら、言葉の裏なんて読むコトもなく・・・・
少し上で休ませてくれ、とか。 おススメのお土産はナニ? とかを・・・ 指文字で伝えただろう。
自分ではどうするコトも出来ず、ただ仲間が無残に殺されていくのを見てるだけだなんて、拷問だヨ。
上忍ともなれば多少の拷問ぐらいへでもない。 ケド木の葉の忍びにとって、彼の様な上忍にとっては。
ナニよりの拷問に違いない。 自害できるものならとっくに敵を道連れにして自害してるはずだ。
おそらく。 あの部屋にいる敵忍を全員狩れば、深月上忍にかけられた術も解けるだろうケド。
それと同時にあの人は死ぬか、敵になるか。 そのどっちかだネ、呪印が体中を蝕んでいるから。
・・・・・・木の葉の同胞で遊んだ報いは・・・・ 百倍にして返してやる。 テンゾウ、行くヨ。
やっと悪夢から解放してあげられますヨ、深月上忍。 テンゾウが部屋中に木遁結界を張りめぐらせる。
誰一人、ここから逃さない。 部屋に足を踏み入れると、あり得ない光景がまず目に飛び込んで来た。
消息を絶った忍びが・・・・ 全員揃っていた。 正確には全員の首。 八個の血抜きした首が。
「・・・・・・ご丁寧にまぁ。 鮮度を保つ為なの? ずいぶん悪趣味な雛飾りだネ。」
「どうみても。 この呉服屋 夢やの上品そうなご主人の趣味とは思えませんね?」
「「どこから・・・・・っ! くそっ!!」」
「木の葉の暗部かっ! お遊びはここまでだ、引くぞっ!!」
「「・・・・・?! 隊長! 障子が・・・・・ うわっ!!」」
ああ、その障子? それはオレの幻術だから。 そこにはネ、テンゾウが生やした茨があるのヨー!
ああ、天井も幻術だヨ? てか、この部屋全体にかけてあるから。 どこもかしこも茨の結界なの、残念!
だから早く撤収しようと言ったんだ、ダラダラしてるからだ、二十人を狩ると言ったのはコイツだ。
だってサ、テンゾウ。 見苦しいねぇ、責任のなすり合いだヨ? 心配しなくても連帯責任なのにネ?
・・・・・・・・・お前ら全員、楽に死ねると思うなヨ? 特に。 深月上忍に術をかけたヤツ。
「あ、あの上忍の術を解けるのはコイツだけだ! どうだ、取引しな・・・・・ ひぃっ!!」
「クソ隊長さん。 少し黙っててくれませんか。」
「へー。 アンタがねぇ・・・・?」
「・・・・・・・・・。」
ソイツ一人を差し出す代わりに自分達を助けろ? そう言いたいみたいだケド。 ・・・・・・冗談!
深月上忍ほどの忍びが術にかかった。 掛けたはいいが、ソイツなんかに解けるワケないんだヨ。
少ししか話してない、でもそうとう誇り高い人だと思った。 きっとそういう取引をヨシとしない。
「深月上忍の術を解く? 馬鹿も休み休み言ったらどうです?」
「死なばもろともだヨ。 どこまでも木の葉の忍びをコケにしやがって。」
「ただこの時の為に、あの誇り高い上忍は屈辱に耐え続けていたんですよ?」
「アンタたちが命乞いするだろう、なんてコトは分かってんのヨ、あの人は。」
深月上忍は優秀な潜入員。 敵の術中に堕ちた時から、自分の命を惜しんだ末の決断はさせない。
自分の命を取引材料にされない様に、かかった術を逆に完全に取り込み、解けない様にしてるはずだ。
今頃は自室で木の葉の忍服に着替えて・・・ 今か今かと、ソイツが息絶えるのを待ってるんだヨ。
術者の死の間際、術は一瞬弱まる。 その瞬間を見逃さず自害するつもりだ、術の道ずれではなく己で。
「コラコラ、どこ行くの。 出て行こうとしてもムダだと教えたじゃない。」
「ボク達は三代目に何があったかを報告する義務があります。 あと、もう一人、別の潜入員にもね。」
「さっき、酒屋さんが来てたでショ? あの子もね、木の葉の潜入員なんだーヨ。」
「深月さんの遺志をしっかりと受け継ぐ優秀な潜入員ですよ。 ・・・当事者は真実を知る権利がある。」
「「一体ここで何があったのかをね。」」
そう。 すぐには殺さない。 本当は瞬時に細切れにしてやりたいケド。 なぜ巣の存在がバレたのか。
深月上忍が油断してしまった理由を知っておかなければ、また同じコトがどこかで起きるから。
知らなければ防ぎようがないでショ。 ここで起こった事実を踏まえ、事例として警告しなければ。
オレ達は同胞も一般人も殺した。 ここで殺めた命より多くの命を・・・・ 今後助ける為にネ。